運動と免疫

 ■HIV感染者における運動

ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染者ではヘルパーT細胞の減少によって免疫系全体の機能が抑制されています。
このような患者の免疫系に対して運動はどう影響するのか。以下のような研究報告があります。

 研究内容 HIV感染者が75%VO2maxで1時間の自転車運動を行う。
 結果

●ヘルパーT細胞,好中球,NK細胞の濃度の変化は健常者のパターンと同様。しかし変化の程度はいずれも健常者よりも小さい傾向にある。

●NK細胞活性の増加も健常者よりも小さい傾向にある。

HIV感染者のストレスに反応する非特異的免疫能力が低下していることを示唆している。

 研究内容 HIV感染者がトレーニングを行う。 
 結果

●筋力や心肺系機能は改善されるが,ヘルパーT細胞やそのたのリンパ球の変化に関しては一致した見解は得られない。

●ヘルパーT細胞濃度は,感染初期における安静時の濃度が正常に保たれている間のトレーニングでは有意に増加するが,安静時濃度が低下するにつれトレーニングの効果がなくなるとの報告がある。

エイズの進行度が関係していると考えられる。

運動継続者ではHIVに関連した症状の出現は遅くなる傾向にある。

◆HIV感染者のトレーニングにおける効果と問題点

 効果
エイズが進行すると多くの場合体重が著しく減少します。
筋肉量の低下は免疫細胞のエネルギー源であるグルタミン供給の低下を意味します
自律した生活が困難になり,精神的ストレスが高くなります。

トレーニングを行うと筋量が維持でき,心理的にポジティブに保つことはHIV感染者にとって重要と考えられています。
HIV感染者ではAIDS発症告知時を契機にヘルパーT細胞が急激に減少する者がいますが,トレーニング継続者はこの減少が抑制されることが報告されています。


 問題点
トレーニングの難継続性,高い脱落例が挙げられます。
一部の感染者でトレーニングが免疫機能の増悪を引き起こすのならば運動を行うことは有害であると考えなくてはいけません。
トレーニングの有効性については,今後の研究を待たなければ明らかなことはいえません。

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