中華人民共和国の「1994年コンピュータ情報システム安全保護条例」
(仮訳)
(2002年1月15日改訂版)
翻訳:夏井高人
これは,中華人民共和国の「中華人民共和国コンピュータ情報システム安全保護条例」の仮訳したものです。誤訳もあるかもしれません。ご注意ください。
なお,この法律のオリジナル・テキストは,
http://www.ceilaw.com.cn/dcd001/owa/cei.cdrom_page
で入手できます。
1994年2月18日発布
中華人民共和国コンピュータ情報システム安全保護条例
中華人民共和国国務院令第147号
第1章 総則
第1条
コンピュータ情報システムのセキュリティを確保し,コンピュータの利用と発展を促進し,社会主義近代化建設の円滑な進行を保障するために,本条例を制定する。
第2条
本条例においては,コンピュータ情報システムとは,コンピュータ及び関連する構築用設備と施設(ネットワークを含む。)から構成されるものであって,一定の利用目標と規則に従い,情報の蓄積,加工,保存,伝達及び検索等の処理を実施する機械システムを指す。
第3条
コンピュータ情報システムのセキュリティについては,コンピュータ及び関連する構築用設備と施設(ネットワークを含む。)の安全を保障し,運用環境の安全を保ち,情報の安全を保障し,コンピュータが正常に機能を発揮することを保障し,もって,コンピュータ情報システムの安全な運用を維持しなければならない。
第4条
コンピュータ情報システムのセキュリティ措置に関しては,国家事務,経済建設,国防建設,先端科学技術等の重要領域にあるコンピュータ情報システムの安全維持に重点を置くものとする。
第5条
中華人民共和国領土内のコンピュータ情報システムのセキュリティについては,本条例を適用する。ネットワークに接続されない小型計算機のセキュリティ措置は,別に定める。
第6条
公安部は,国内のコンピュータ情報システムのセキュリティ措置を主管する。国家安全部,国家保密局及び国務院その他の関連部門は,国務院規定に定める権限の範囲内において,コンピュータ情報システムのセキュリティ関連措置を促進する。
第7条
いかなる組織または個人も,国家の利益,社会の利益と公民の合法的な利益になる活動に対して害を及ぼすような行動をするために,コンピュータ情報システムを利用してはならず,また,コンピュータ情報システムの安全を害してはならない。
第2章 セキュリティ制度
第8条
コンピュータ情報システムを構築し利用するためには,法律,行政法規及びその他の国家関連規定を順守しなければならない。
第9条
コンピュータ情報システムは,セキュリティ・レベルの保護を実行しなければならない。セキュリティ・レベルの標準区分及びセキュリティ・レベル保護の具体方法については,公安部が関連部門と共に定める。
第10条
コンピュータ室は,国家標準と国家関連規定に適合するものでなければならない。コンピュータ室付近の施工においては,コンピュータ情報システムの安全を害してはならない。
第11条
コンピュータ情報システムをインターネット接続するためには,コンピュータ情報システムの使用単位が省レベル以上の人民政府公安機関に報告しなければならない。
第12条
コンピュータ情報媒体を領土外に運搬し,携帯し,もしくは,郵送する者は,そのことを税関に申告しなければならない。
第13条
コンピュータ情報システムの使用単位は,健全なセキュリティ制度を確立しなければならず,また,それぞれの単位コンピュータ情報システムのセキュリティ措置について責任を負う。
第14条
コンピュータ情報システム中で発生した事件については,関連する使用単位は,24時間以内に,当該地域内にある県レベル以上の人民政府公安機関に報告しなければならない。
第15条
コンピュータ・ウイルス及び社会の公共安全を害するその他の有害データに対する対策研究措置については,公安部が一元管理する。
第16条
国は,コンピュータ情報システムのセキュリティ製品の販売に対して,許可証制度を実施する。その具体方法は,公安部が関連部門と共に定める。
第3章 安全の監督
第17条
公安機関は,コンピュータ情報システムのセキュリティ措置に関し,以下の監督権限を行使する。
(1) コンピュータ情報システムのセキュリティ措置に対する監督,検査,指導
(2) コンピュータ情報システムの安全を害する違法な犯罪事案の捜査
(3) コンピュータ情報システムのセキュリティ措置に関するその他の監督権限の履行
第18条
公安機関は,コンピュータ情報システムの安全に影響する危険を発見した場合には,使用単位に対し,直ちにセキュリティ措置を講ずるように通知しなければならない。
第19条
公安部は,緊急の情况下においては,特定事項に関し,コンピュータ情報システムの安全のための特別通達を発することができる。
第4章 法律上の責任
第20条
本条例の条項に違反し,以下に列挙する行為のいずれか一つに該当する者に対しては,公安機関が警告を発し,または,当該装置の停止もしくは整備を命ずる。
(1) コンピュータ情報システムのセキュリティ・レベル保護制度に違反し,コンピュータ情報システムの安全に害をもたらす行為
(2) コンピュータ情報システム及びインターネット・セキュリティ制度に違反する行為
(3) コンピュータ情報システム中に発生した事件を所定の時間内に報告しない行為
(4) 公安機関から,安全状况を改善するように求める通知を受けた後,所定の期限内に改善をしない行為
(5) コンピュータ情報システムの安全を危うくするその他の行為
第21条
コンピュータ室が国家標準及びその他の国家関連規定に適合しない場合,または,コンピュータ室付近の施工においてコンピュータ情報システムの安全を害した者については,公安機関が,関連する単位と共に対処する。
第22条
コンピュータ情報媒体を領土外に運搬し,携帯し,または,郵送した者が,税関に対してそのことを申告しなかった場合には,税関は,「中華人民共和国海関法」及び本条例その他関連する法律の条項に照らして対処する。
第23条
故意に,コンピュータ・ウイルス及びその他の有害データを輸入し,コンピュータ情報システムの安全を害した者,または,コンピュータ情報システムのセキュリティ製品を無許可で販売した者については,公安機関が警告を発し,または,個人に対しては5,000元以下の罰金刑に処し,単位に対しては15,000元以下の罰金刑に処す。違法な所得を有する者は,没収されたものを除くほか,違法な所得の倍以上3倍以下の額の罰金刑に処することができる。
第24条
本条例の規定に違反して治安管理違反行為を実行した者は,「中華人民共和国治安管理処罰条例」の関連規定に従って処罰する。それが犯罪となる場合には,法律に従って刑事責任を追及する。
第25条
本条例の規定に違反して国家,社会もしくは他人の財産に損害を発生させた組織もしくは個人は,法律に従って民事責任を負わなければならない。
第26条
公安機関が本条例に照らして行った具体的な行政行為に不服のある当事者は,法律に従って行政回復を申請することができ,または,行政訴訟を提起することができる。
第27条
本条例を執行する国家公務員が,職権を利用して,賄賂を請求もしくは収受し,または,その他の職務違反行為をなし,それが犯罪となる場合には,法律によって刑事責任を追及する。犯罪とならない場合には,行政処分を加える。
第5章 附則
第28条
本条例の以下の用語の意味は,以下のとおりとする。
コンピュータ・ウイルスとは,コンピュータ・プログラム中で生成され,もしくは,そこに挿入されたコンピュータ命令又はプログラム言語であって,コンピュータの機能を破壊し,データを毀損し,または,コンピュータの使用に悪影響を及ぼすものであり,かつ,自己複製できるものを指す。
コンピュータ情報システムのセキュリティ製品とは,コンピュータ情報システムの安全保護に関して用いられるハードウェア及びソフトウェア産品を指す。
第29条
軍隊のコンピュータ情報システムのセキュリティ措置については,軍隊の関連法規に従って執行する。
第30条
公安部は,本条例に基づき実施細則を定めることができる。
第31条
本条例は,発布の日から施行する。
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Last Modified : Jan/15/2002