アメリカ合衆国の「1998年オンライン著作権侵害責任制限法案」
(仮訳)
翻訳:夏井高人
これは,アメリカ合衆国の著作権法の一部改正法案である「オンライン著作権侵害責任制限法案」[H.R.3209]を大急ぎで仮訳したものです。誤訳もあるかもしれません。この点,ご注意ください。
この仮訳は,1998年2月に議会提出当初の法案の仮訳です。
なお,この法案のオリジナル・テキストは,
http://thomas.loc.gov/home/c105query.html
でキーワード検索(キーワード:provider liability)することにより入手することができます。
第105議会第2セッション
H.R.3209
オンライン・マテリアルに対する著作権侵害の責任を制限するための合衆国法典タイトル17の改正に関する法律案
Section 1. 略 称
この法律は,「オンライン著作権侵害責任制限法」(On-Line Copyright Infringement Liability Limitation Act)として引用することができる。
Section 2. 著作権侵害に対する責任の制限
(a) 合衆国法典(United States Code)タイトル17の第5章総則は,511条の後に次の新しい条項を挿入して改正される。
「512条 オンライン・マテリアルに関する責任の制限
(a) 責任制限 106条の規定にかかわらず,プロバイダは,次の責任を負わない。
(1) 次のいずれかに該当する場合の,プロバイダのシステムもしくはネットワーク上のマテリアルの一時記憶(intermediate storage)及び転送(transmission)のみに基づく直接侵害責任
(A) 転送が他の者によってなされる場合
(B) プロバイダによってマテリアルの選択がなされる場合を除き,記憶及び転送が自動的な技術的処理(automatic technological process)によってなされる場合
(C) マテリアルのコピーが当該転送がなされるために必要を超えては保持されない場合
(2) (1)号に規定する行為にのみ基づく504条または505条に基づく結果責任または代償責任としての金銭賠償;または,
(3) プロバイダが以下に該当する場合の,(1)号に規定する行為以外のプロバイダのシステムもしくはネットワーク上のマテリアルに対する転送または提供アクセスにのみ基づく504条または505条に基づく結果責任または代償責任としての金銭賠償
(A) 当該マテリアルが著作権侵害であることを示す情報を認識せず,かつ,これに気付かず,かつ,
(B) 侵害行為の直接的な結果としての金銭的利益を得ていない場合
(b) プライバシーの保護
(a)項の規定は,プロバイダに対し,プロバイダが法律によって禁止されているマテリアルにアクセスする権限を与えまたはそれを義務付けるものではなく,また,著作権侵害であることを示す情報のモニターその他の探索をすべき積極的な義務を課するものでもない。
(c) 著作権侵害マテリアルの削除またはアクセス禁止に基づく制限
プロバイダは,当該マテリアルが著作権を侵害するものであると否とを問わず,当該マテリアルが著作権侵害であることを示す情報を認識し,もしくは,そのことに気付いたことの結果として,当該マテリアルを削除し,または,そのオンライン・アクセスを禁止したことに基づく請求に対しては,何の責任も負わない。
(d) 影響を受けないその他の抗弁
プロバイダがオンライン転送するマテリアル,もしくは,プロバイダが提供するオンライン・アクセスの削除またはアクセス禁止,あるいは,それらの行為の失敗については,裁判所は,107条の規定その他の法律に基づいて認められている侵害の対する抗弁として判断することを妨げられてはならない。
(e) 虚偽の表示
故意に,実質的に,オンライン・マテリアルが著作権侵害であるとの虚偽の表示をした者は,訴訟費用及び弁護士報酬を含め,当該虚偽の表示によって訴追された侵害者またはそれによって被害を受けた著作権者もしくは著作権者からライセンスを受けた者,あるいは,当該虚偽の表示を信用して,著作権侵害であるとされたマテリアルの削除もしくはアクセス禁止をしたプロバイダが被ったすべての損害に対する責任を負わなければならない。
(f) 定 義
本条で用いるときは,「プロバイダ」とは,オンライン・サービスまたはネットワーク・アクセスの提供者を意味する。」
(b) 合衆国法典タイトル17の第5章の目次は,その末尾に以下を挿入して改正される。
「512条 オンライン・マテリアルに関する責任の制限」
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最終更新日:May/25/1998