アメリカ合衆国(連邦)の「1980年プライバシー保護法」

(仮訳)

翻訳:夏井高人


これは,アメリカ合衆国(連邦)の「プライバシー保護 (USC Title 42 Chapter 21A)」を大急ぎで仮訳したものです。意訳したところがあります。誤訳もあるかもしれません。この点,ご注意ください。

なお,この法律のオリジナル・テキストは,

http://www.law.cornell.edu/uscode/42/ch21A.html

で入手できます。


 

§2000aa 犯罪の捜査及び刑事訴追に関連してなされる政府の公務員及び被用者による捜査及び押収

(a)  仕事の成果物 (Work Product Materials)

公衆に対して新聞,本,放送その他これに類似する形態の公共通信を広める目的を有してると合理的に信ずべき者が保有する仕事の成果物,または,州際取引もしくは海外取引に関する(もしくはこれらに影響を与える)仕事の成果物を,他の何らの法律にも基づかずに,犯罪の捜査及び刑事訴追に関連して政府の公務員及び被用者が捜索もしくは押収することは,違法である。しかし,この規定は,次のいずれかの場合には,政府の公務員及び被用者が,そのような物件を捜索もしくは押収するために,何らかの適用可能な法律を執行することを妨げ,または,それに影響を与えてはならない。

(1) その物件を保有する者が,その物に関連する刑事犯罪を犯した,または,犯しつつあると信ずべき蓋然的な根拠がある場合;
しかしながら,その物件に関連する犯罪が,その物もしくはそれに含まれる情報の受領,所持,通信または保持によって構成されている場合には,政府の公務員及び被用者は,本条の規定に基づいて,そのような物件を捜索もしくは押収することができない(ただし,その犯罪が国防に関する情報,タイトル
18793条,794条,797条もしくは798条,このタイトルの2274条,2275条もしくは2277条,または,タイトル50783条に規定する機密情報(classified information)もしくは禁止データの受領,所持または通信で構成されている場合には,本条の規定に基づく捜索もしくは押収をすることができる。)。あるいは,

(2) 人間の死亡または重大な身体損傷を避けるために,そのような物件の即時の押収が必要であると合理的に信ずべき理由がある場合

(b)  その他の書面

公衆に対して新聞,本,放送その他これに類似する形態の公共通信を広める目的を有してると合理的に信ずべき者が保有する(仕事の成果物以外の)書面的な物件(documentary materials),または,州際取引もしくは海外取引に関する(もしくはこれらに影響を与える)(仕事の成果物以外の)書面的な物件を,他の何らの法律にも基づかずに,犯罪の捜査及び刑事訴追に関連して政府の公務員及び被用者が捜索もしくは押収することは,違法である。しかし,この規定は,次のいずれかの場合には,政府の公務員及び被用者が,そのような物件を捜索もしくは押収するために,何らかの適用可能な法律を執行することを妨げ,または,それに影響を与えてはならない。

(1) その物件を所持する者が,その書類に関連する刑事犯罪を犯した,または,犯しつつあると信ずべき蓋然的な根拠がある場合;
しかしながら,その物件に関連する犯罪が,その物件もしくはそれに含まれる情報の受領,所持,通信または保持によって構成されている場合には,政府の公務員及び被用者は,本条の規定に基づいて,そのような物件を捜索もしくは押収することができない(ただし,その犯罪が国防に関する情報,タイトル
18793条,794条,797条もしくは798条,このタイトルの2274条,2275条もしくは2277条,または,タイトル50783条に規定する機密情報(classified information)もしくは禁止データの受領,所持または通信で構成されている場合には,本条の規定に基づく捜索もしくは押収をすることができる。)。

(2) 人間の死亡または重大な身体損傷を避けるために,当該物件の即時の押収が必要であると合理的に信ずべき理由がある場合

(3) 被告人に対して文書持参証人召喚令状(subpena duces tecum)の告知されたことにより,当該物件の破棄,変更または隠蔽がなされるかもしれないと信ずべき合理的な理由がある場合,あるいは,

(4) 文書持参証人召喚令状(subpena duces tecum)の遵守を指示ずる裁判所の命令に対応してそのような物件が作られず,かつ,

(A) 上記の規定全部が尽きた場合;または,

(B) 召還に関連する訴訟手続の続行によって,裁判の利益を害するかもしれないような捜査または公判の遅延が発生すると信ずべき合理的な理由がある場合

(c) 裁判所が命じた召還に対する異議;宣誓供述書(affidavits)

本条の(b)項(4)号(B)によって捜索令状が執行された場合には,その物を所持する者は,要求された物が押収の対象物ではないという主張の根拠を明らかにして,宣誓供述書(affidavits)を提出するための適切な機会を与えられなければならない。

§ 2000aa-5. 国境と税関の捜索

本章は,政府の公務員もしくは被用者が,合衆国の税法を執行するために,合衆国内への入口となっている国境(もしくは国際的なポイント)で捜索及び押収をなし得ることの妨げとなってはならず,また,これに影響を与えてはならない。

§ 2000aa-6.  被害者による民事訴訟

(a) 訴  権

本条に違反する捜索または押収によって被害を被った者は,次のいずれかに対して,当該捜索または押収による損害の賠償を請求する民事訴訟を提起することができる。

(1) 合衆国に対して,本章の違反の結果として生じた損害賠償の訴えに対し,合衆国憲法の下での主権免責を無視した州に対して,または,その他の政府機関に対して。それらすべては,その公務員もしくは被用者による本章違反について,その公務員もしくは被用者のスコープの範囲内またはカラーの下にある限り,責任を持たなければならない。

(2) 州が(1)号に規定する合衆国憲法の下での主権免責を無視していない場合には,そのスコープの範囲内またはカラーの下にある限り本条違反行為をした(州の)公務員もしくは被用者に対して。

(b) 善意の抗弁

公務員もしくは被用者がその行為の合法性について合理的な善意の信念を持っていた場合には,そのことは,本条(a)項(2)号に基づいて提起された民事訴訟における完全な抗弁となる。

(c) 公的機関の免責

本条(a)項(1)号違反により責任のある合衆国,州,その他の政府機関は,公務員もしくは被用者が訴えられていること,または,公務員もしくは被用者がその行為の合法性について合理的な善意の信念を持っていたことをもって,本条に基づく民事訴訟における抗弁として提出することはできない。ただし,訴えられた侵害が司法官による侵害である場合には,この抗弁を提出することができる。

(d) 民事訴訟の排他性

本条(a)項(1)号が規定する合衆国,州,その他の政府機関に対する民事訴訟は,本条違反を構成する行為を理由とし,その違反行為が訴訟提起の原因となっている公務員もしくは被用者,または,当該公務員もしくは被用者の財産に対してなされる他の民事訴訟または訴訟手続を排除する。

(e)  証拠の許容性

訴訟手続において許容される証拠はすべて,本章違反であることを理由に排除されてはならない。

(f)  損 害;訴訟費用及び弁護士報酬

本条に基づいて訴えを提起する権利を有する者は,現実の(ただし,1,000ドルを下回れない)損害額,合理的な範囲内の弁護士報酬額,そして,判決の中で裁判所の自由裁量により負担を命ぜられる訴訟費用額を回復する権利を与えられなければならない。しかしながら,合衆国,州,その他の政府機関は,判決以前に生じた利害については,責任を負うことはない。

(g)  司法長官;クレーム処理,規則

司法長官 (Attorney General) は,本条に基づき合衆国に対してなされた損害賠償の支払要求に対応することができる。また,司法長官は,合衆国の公務員もしくは被用者による本条違反行為の判決に続く行政審査の開始について規定し,そして,もし理由がある場合には当該公務員もしくは被用者に対して行政罰則を課することを規定するための規則を公布しなければならない。

(h) 裁判管轄権

地方裁判所は,本条に基づいて提起されるすべての民事訴訟について,その第一審裁判管轄権を有する。

§2000aa-7.  定  義

(a) 本章において用いられている「書面的な物件」とは,情報が記憶された物件を意味する。そして,これには,書かれ(もしくは印刷され)た物件,写真,動画フィルム,ネガ,ビデオ・テープ,オーディオ・テープ,または,その他の機械的,磁気的もしくは電子的に記録されたカード,テープもしくはディスクが含まれる(ただし,これらに限定されるわけではない。)。ただし,密輸品,犯罪の果実,犯罪的に所持されている何らかの物,または,犯罪を実行するための方法として設計された財産,そのために使用されるはずだった財産,使用されている財産もしくは使用された財産は,これに含まれない。

 

(b) 本章において用いられている「仕事の成果物」とは,密輸品,犯罪の果実,犯罪的に所持されている何らかの物,または,犯罪を実行するための方法として設計された財産,そのために使用されるはずだった財産,使用されている財産もしくは使用された財産以外の物件であって,かつ,次のいずれにも該当するものを意味する。

(1) 公衆に対する当該物件との通信の事前準備において,当該物件の所持者もしくはその他の第三者によって,出版され,準備され,作成され,著述され,または,創作され,

(2) 当該物件を公衆と通信させる目邸で所持されるもので,かつ,

(3) 内心の印象,結論,意見,または,当該物件を準備し,作成し,著述し,もしくは創作した者の思想を含むもの

(c)  本章において用いられている「その他の政府機関」とは,コロンビア特別区 (District of Columbia) ,プエルトリコ共和国 (Commonwealth of Puerto Rico) ,合衆国の領土及び地位,地方自治体,地方行政機関,または,州政府の機関を意味する。

§2000aa-11. 連邦の公務員及び被用者のためのガイドライン

(a) 書証を獲得するための手続;特定のプライバシーの利益の保護

司法長官は,犯罪の捜査及び刑事訴追に関連して,ある者が犯罪を犯したという合理的な嫌疑がない場合,その者が血統もしくは婚姻によってそのような容疑に関連している場合,または,押収すべき物件が密輸品ではなく,犯罪の果実もしくは犯罪の道具でもない場合において,私的に所持されている書面的な物件を獲得するために連邦の公務員もしくは被用者によってなされる手続のためのガイドラインを19801013日から6ヶ月以内に発行しなければならない。司法長官は,ガイドライン中に,次の各事項を盛り込まなければならない。

(1) 当該書面的な物件の所持者の個人的なプライバシーの利益を認識すべきこと

(2) 当該物件を獲得するについては,押収されるべき物件の有用性もしくは利便性を実質的に危険にさらさないような,最も侵害性の少ない手法または手段が用いられるべきことの必要性があること

(3) 牧師と教区民,弁護士と依頼者あるいは医師と患者の間に存在するような,よく知られた秘密関係に立ち入るかもしれないような書面の捜索もしくは押収の場合においては,プライバシーの利益に対して特別の配慮をすべきこと

(4) 本副章で規律される行為の令状の執行は,政府のための弁護士によって承認されなければならないこと,ただし,緊急事態においては,その緊急事態の発生から24時間以内に適切な合衆国弁護士に通知されることを条件に,その令状の執行は,他の適切な最高位の公務員による承認で足りること

(b) 捜査令状の使用;議会への報告

司法長官は,本条(a)項(3)号に記述された書面的な物件を押収するために連邦の公務員及び被用者によってなされた捜索令状の使用に関する情報を収集・集積し,上院(Senate)及び下院(House of Representatives)の司法委員会に対し,年次報告しなければならない。

§2000aa-12.  ガイドラインの拘束的性格;違反に対する懲戒処分,禁止への不服従に対する法的手続

本副章に基づき司法長官によって発行されたガイドラインは,司法省規則としての完全な強制力と効果を持つ。そして,このガイドラインのいかなる違反についても,それに関与した被用者もしくは公務員に対して,適切な行政上の懲戒処分に服させなければならない。しかしながら,この副章によって発行されたガイドラインへの服従または不服従に関連しする訴訟は,適法ではなく,裁判所は,証拠禁止もしくは証拠排除を基礎としてこのような訴訟を審理してはならない。


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最終更新日:1998/01/16

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