ワシントン州(USA)の「1998年電子メール法」

(仮訳)

翻訳:夏井高人


これは,アメリカ合衆国ワシントン州の法典の一部であり,いわゆるスパミングに対抗するための法律として新規に立法された「電子メール法」を大急ぎで仮訳したものです。誤訳もあるかもしれません。この点,ご注意ください。

なお,この法律のオリジナル・テキストは,

http://www.jmls.edu/cyber/statutes/email/wah2752b.html

で入手できます。


1998年2月16日当初法案下院可決

1998年4月4日上院当初法案可決(一部修正)

1998年5月7日下院一部修正法案可決

1998年5月25日知事署名

1998年6月11日発効

 

電子メールに関して,ワシントン州法典タイトル19に新しい章を加え,新しい条文を創り,罰則を定め,そして,期限を定めるための法律

 


Sec. 1.

議会は,商業電子メール・メッセージの分量が増大しつつあり,そして,州務長官事務所の消費者保護局が,商業電子メールに関する消費者からの苦情が次第に増加していることを報告していることを見いだした。双方向コンピュータ・サービス・プロバイダは,送られてくる膨大な商業電子メールを彼らのシステムが処理できなくなることがあるということ,そして,送信者が第三者の承諾を得ないままに第三者のインターネット・ドメイン・ネームを利用している場合や,その他メッセージの発信地に関して虚偽の表示がなされているような場合には,フィルタリング・システムが頼みもしない商業電子メール・メッセージ(unsolicited commercial electronic mail messages)をはじき飛ばすのに失敗してしまうことを指摘している。議会は,第三者の承諾を得ないままに第三者のインターネット・ドメイン・ネームを利用し,その他メッセージの発信地に関して虚偽の表示がなされ,あるいは,サブジェクト欄に虚偽もしくは誤読させる情報が含まれている商業電子メール・メッセージの送信を禁止することによって,合双方向コンピュータ・サービス・プロバイダに対し,いくつかの直接の救済の提供を検討する。また,議会は,商業目的での電子メール・メッセージ利用の利点について更に研究することを決議する。商業目的による電子メール・メッセージの利用をとりまく技術的問題,法的問題及びコスト的問題を研究し,議会に対して商業電子メール・メッセージの規制のために必要な潜在的立法を勧告するために,特別調査委員会(A select task force)が設立されなければならない。

Sec. 2.

文脈が明らかに他の意味を要求するのでない限り,本条の定義は,本章全部に適用される。

(1) 「商業電子メール・メッセージ」 Commercial electronic mail messageとは,不動産,動産もしくはサービスの販売・賃貸の広告宣伝目的で送信される電子メール・メッセージを意味する。

(2) 「電子メール・アドレス」 Electronic mail addressとは, 電子メールを送信または配信するための,通常は文字列で表現される仕向先(destination)を意味する。

(3) 「発信」 Initiate the transmissionとは,電子メール・メッセージの最初の送信者によってなされる行為であって,かつ,メッセージの処理及び転送をすることができる双方向コンピュータ・サービスを介在させた行為ではないもののことである。

(4) 「双方向コンピュータ・サービス」 Interactive computer serviceとは,複数のユーザによるコンピュータ・アクセスを提供もしくが可能にする情報サービス,システム,または,アクセス・ソフトウェア・プロバイダを意味し,とりわけ,インターネットへのアクセスを提供するサービスもしくはシステム,図書館もしくは教育機関によって運営されるシステム,図書館もしくは教育機関から提供されるサービスを含む。

(5) 「インターネット・ドメイン・ネーム」 Internet domain nameとは,集中的なインターネット・ネーミング機関で承認され,ピリオドで区切られた文字列で構成され,最右端の文字列が階層のトップを示すような,インターネットのホストまたはサービスへの全世界的にユニークで階層的なリファレンスのことである。

Sec. 3.

(1) いかなる個人,会社,団体,組織といえども,ワシントン州内にあるコンピュータから,または,ワシントン州に居住する者が保持するものであることを送信者が知り,もしくは,合理的に知ることができた電子メール・アドレス宛に,次のいずれかの商業電子メール・メッセージを発信してはならない。

(a) 当該第三者の承諾なしになされた第三者のインターネット・ドメイン・ネームの使用,その他,商業電子メール・メッセージの発信地点(point of
origin
)ないし送信パス( transmission path)を特定する情報につき虚偽の表示(misrepresents)をするもの,または,

(b) サブジェクト欄(subject line)に虚偽もしくは誤読させる情報(false or misleading information)を含むもの

(2) 本条においては,個人,会社,団体,組織は,受信者の電子メール・アドレスに含まれるインターネット・ドメイン・ネームの登録機関から,情報の提供を請求して利用することができるのであれば,当該商業電子メール・メッセージの意図する受信者がワシントン州に居住する者であることを知っているものとみなす。

Sec. 4.

(1) 次のいすれかの商業電子メール・メッセージを発信することは,消費者保護法(chapter 19.86 RCW)の違反となる。

(a) 当該第三者の承諾なしになされた第三者のインターネット・ドメイン・ネームの使用,その他,商業電子メール・メッセージの発信地点(point of
origin
)ないし送信パス( transmission path)を特定する情報につき虚偽の表示(misrepresents)をするもの,または,

(b) サブジェクト欄(subject line)に虚偽もしくは誤読させる情報(false or misleading information)を含むもの

(2) 議会は,本章によってカバーされる行為は,消費者保護法(hapter 19.86 RCW)の適用目的についての公共の利害に大いに関係する事柄であると考える。本章の違反は,消費者保護法(chapter 19.86 RCW)の適用との関連においては,ビジネスの発展と保護に関する合理的な行為ではなく,貿易と取引における不公正もしくは欺瞞的な行為であり,そして,不公正な競争手段である。

Sec. 5.

(1) 本章に違反して送信された商業電子メール・メッセージの受信者(recipient)の損害額は,500ドルまたは現実の損害額のうち,金額の大きいほうである。

(2) 本章違反の結果として双方向コンピュータ・サービスに生ずる損害額は,1000ドルまたは現実の損害額のうち,金額の大きいほうである。

Sec. 6.

(1) 双方向コンピュータ・サービスは,固有の権限として,本章に違反して送信される,または,送信されるであろうと合理的に信ずることのできる商業電子メール・メッセージについて,当該サービスを介しての受信または送信をブロックすることができる。

(2) 双方向コンピュータ・サービスは,本章に違反して送信される,または,送信されるであろうと合理的に信ずることのできる商業電子メール・メッセージについて,当該サービスを介しての受信または送信を,信義誠実に則ってブロックしたことについて,いかなる訴訟においても責任を負うことがない。

Sec. 7.

本法の1条から6条は,新たな章であるワシントン州法典タイトル19Title 19 RCW)を構成する。

Sec. 8.

(1) 電子メール・メッセージに関する特別調査委員会(The select task force on commercial electronic mail messages)をここに設置する。特別調査委員会(A select task force)は,

(a) インターネット上の商業電子メール・メッセージの送信・受信に関する技術的問題,法的問題及びコスト的問題を検討し,

(b) 商業電子メール・メッセージの増加によってもたらされる技術的問題,法的問題もしくは財政的問題を解決するために,既存の法が有効かどうかを評価し,

(c) 商業電子メール・メッセージの送信の規制のために連邦政府及び他の州によってなされた成果を報告し,かつ,

(d) 商業電子メールメッセージの規制するために必要とされる潜在的な立法のための政策オプション及び勧告を示す報告書を発行しなければならない。この報告書は,19981215日までに下院エネルギー公共事業委員会(the house of representatives energy and utilities committee)に配布されなければならない。

(2) 特別調査委員会は,次の5名の委員で構成される。

(a) 下院議員2名

   2名のうち1名は多数政党の者であり,いずれも上院エネルギー公共事業委員会(the house of representatives energy and utilities committee)委員中から,下院議長が指名する。

(b) 上院議員2名

   2名のうち1名は多数政党の者であり,いずれも上院エネルギー公共事業委員会(the senate energy and utilities committee)委員中から,議長が指名する。

(c) 知事の指名による1名

(3) 特別調査委員会は,次の代表者を含め(これに限定されるわけではない。),利害関係者からの入力があるように請求しなければならない。

(a) 州務長官の消費者保護局(Attorney general's consumer protection division

(b) インターネット・サービス・プロバイダ(Internet service providers

(c) 直接市場(Direct marketers

(d) 電子メール・メッセージのソフトウェア製作者(Manufacturers of electronic mail messaging software

(e) 言論の自由その他の市民の自由に利害のある非営利団体(Nonprofit organizations interested in free speech and other civil liberty matters

(f) インターネットのユーザ(Internet users

(4) 特別調査委員会をサポートするスタッフは,プログラム調査委員会の下院事務所(the house of representatives office of program research)及び上院委員会サービス(senate committee services)から供給される。

(5) 本条は,19981231日に失効する。

 


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最終更新日:Jul/30/1998

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