アメリカ合衆国(連邦)の「ワイヤレス電話保護法」
(仮訳)
翻訳:夏井高人
これは,アメリカ合衆国連邦の刑法(18 USC 1029)の一部改正法である「ワイヤレス電話保護法」を大急ぎで仮訳したものです。誤訳もあるかもしれません。ご注意ください。
なお,この法律のオリジナル・テキストは,
http://thomas.loc.gov/home/c105query.html
でキーワード検索(キーワード:S.493)することにより入手することができます。
1998年4月1日成立
1998年4月24日大統領署名
スキャニング・レシーバその他類似の装置に関し,合衆国法典タイトル18(title 18, United States Code)を改正するための法律
Sec. 1 略 称
この法律は,「ワイヤレス電話保護法(Wireless Telephone Protection Act)」として引用することができる。
Sec.2 偽のアクセス装置に関する詐欺及び関連行為 Fraud and Related Activity in Connection with Counterfeit Access Devices
(a) 違法行為 − 合衆国法典タイトル18の1029条(a)は,
(1) (9)号を(10)号と変更し,そして,
(2) (8)号を削除して,次のとおり挿入することによって改正される。
「(8) 故意に,詐欺の目的で,スキャニング・レシーバ(scanning receiver)を使用し,製造し,輸入し,管理権限を取得し,または,所有する者;
(9) それが,無権限で通信サービス(telecommunications service)を入手するために使用されるかもしれない通信装置(telecommunications instrument)に関連もしくはその中に含まれる通信識別情報(telecommunication identifying information)に介入し,または,これを改変するために作成されたものであることを知りながら,故意に,そのようなハードウェアもしくはソフトウェアを使用し,製造し,輸入し,管理権限を取得し,または,所有する者;または,」
(b) 罰 則
(1) 一般規定 − 合衆国法典タイトル18の1029条(c)は,次のとおり改正される。
「(1) 一般規定 − 本法(a)項の違反行為に対する処罰は,次のとおりである。
(A) 本条の他の罪で有罪になった後に発生したものではない場合は,
(i) (a)項(1)号,(2)号,(3)号,(6)号,(7)号もしくは(10)号の犯罪は,本タイトルに定める罰金もしくは10年を超えない拘禁刑,または,その両方の刑;
(ii) (a)項(4)号,(5)号,(8)号もしくは(9)号の犯罪は,本タイトルに定める罰金もしくは15年を超えない拘禁刑,または,その両方の刑;
(B) 本条の他の罪で有罪になった後に発生したものである場合は,本タイトルに定める罰金もしくは20年を超えない拘禁刑,または,その両方の刑;並びに,
(C) いずれの場合においても,犯罪の実行のために使用され,または,使用するつもりであった個人財産(personal property)の,合衆国国庫への没収
(2) 没収手続(forfeiture procedure) − 本条に基づく財産の没収は,財産の差押手続もしくは売却手続及び関連する行政手続もしくは司法手続を含め,管理財産法(Controlled Substances Act)413条の(d)項を除く同条によって執行されなければならない。」
(2) 未遂罪 − 合衆国法典タイトル18の1029条(b)(1)は,「本条(c)項の規定により処罰される」を削除し,「未遂罪につき規定するところと同じ罰則に従う」を挿入する。
(c) 定 義 − 合衆国法典タイトル18の1029条(e)(8)は,ピリオドの後に,「または,電子シリアル番号(electronic serial number),モバイル識別番号(mobile identification number),もしくは,その他の通信サービス,装置,機器の識別(identifier of any telecommunications service, equipment, or instrument)を妨害するため」を挿入して改正される。
(d) 新設の1029条(a)項(9)号の適用
(1) 一般規定 − 合衆国法典タイトル18の1029条は,その末尾に,次のとおり追加して改正される。
「(g)
(1) 設備ベースのキャリア(facilities-based carrier)の業務に従事する者,または,その管理者(officer),従業員(employee)もしくは代理人(agent)が,当該キャリアの財産もしくは適法な権利を守るために,(a)項(9)号で禁止されていない(輸入以外の)行為をすることは,当該行為が他の設備ベースのキャリアによって提供される通信サービスを当該キャリアから権限を得ることなく入手する目的でなされるのではない限り,(a)項(9)号の違反行為ではない。
(2) (a)項(9)号違反の刑事訴訟においては,(製造もしくは輸入を構成する場合を除き)当該訴追された行為は適法な目的をもつ調査もしくは開発のなめになされたことをもって被告人の抗弁(被告人は証明責任を負う。)とすることができる。」
(2) 定 義 − 合衆国法典タイトル18の1029条(e)は,
(A) (6)号の末尾の「及び」を削除し;
(B) (7)号の末尾のピリオドを削除して,セミコロンを挿入し;及び,
(C) (8)号の末尾のピリオドを削除し,並びに,
(D) その末尾に,次のとおり追加して改正される。
「(9) 通信サービス(telecommunication service)という用語は,1934年通信法タイトルIの3条(47 U.S.C. 153)の用語と同じ意味を有する。
(10) 設備ベースのキャリア(facilities-based carrier)という用語は,通信設備(communications transmission facilities)を持ち,その設備の運営・管理について責任を有し,連邦通信委員会(Federal Communications Commission)から1934年通信法タイトルIIIの権限に基づくライセンスの発行を受けているもの(entity)を意味する。
(11) 通信識別情報(telecommunication identifying information)という用語は,電子的なシリアル番号その他の番号もしくは信号であって,特定の通信機器もしくはアカウント,または,通信機器からの特定の通信を識別するものを意味する。」
(e) ワイヤレス電話クローンニング(Wireless Telephone cloning)に関する連邦判決ガイドラインの改正
(1) 一般規定 − 合衆国法典タイトル28の994条に基づく権限に従い,合衆国判決委員会(United States Sentencing Commission)は,もしそれが適切であれば,ワイヤレス電話のクローンニング(cloning of wireless Telephones)を含む侵害行為に対する適切な罰則を設けるために,連邦判決ガイドライン(Federal sentencing Guidelines)及び委員会の政策声明(policy statement)の見直し及び改正をしなければならない。
(2) 考慮すべき要素 − 本条を実行するについては,委員会は,(1)項に示す侵害行為に関連して,次の各事項を考慮しなければならない。
(A) 侵害行為としてカバーされる行為のレンジ;
(B) 侵害行為に対する実際に存在する有罪判決;
(C) (連邦判決ガイドラインに規定する)侵害行為によってもたらされる損失の額の大きさが,連邦判決ガイドラインに基づきなされる処罰として適切かどうか;
(D) 連邦判決ガイドラインの範囲内での判決の拡張の範囲及び適用可能なガイドラインのレンジを超えて判決をすることのできる裁判所の権限の範囲が,侵害行為としてカバーされる行為のうち最も悪質なものに対する最大限の処罰を加えるもの,もしくは,それに近似するものであることを確保するために適切であるかどうか;
(E) 侵害行為についての連邦判決ガイドラインによる判決の範囲が成文法に定められている処罰の上限を遵守するものであるかどうか;
(F) 侵害行為についての連邦判決ガイドラインが,合衆国法典タイトル18の3553条(a)項(2)号に規定する判決の目的を達成するものであるかどうか;
(G) 侵害行為についての連邦判決ガイドラインと同等の悪質さを有する他の犯罪についての連邦判決ガイドラインとの間の関係;
(H) 委員会が適切と認めるその他の要素
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最終更新日:Sep/11/1998