アメリカ合衆国の「1997年電子窃盗禁止法(NET法)」

(仮訳)

(2001/02/21改訂版)

翻訳:夏井高人


 これは,1997年12月16日成立した「著作権侵害行為処罰条項を改正することによって著作権の保護をより強化すること,その他の目的のために合衆国法典 (United States Code)のタイトル17及びタイトル18を改正する法律」(No Electronic Theft ActNET法 )を大急ぎで仮訳したものです。誤訳もあるかもしれません。この点,ご注意ください。

なお,この法律のオリジナル・テキストは,

http://thomas.loc.gov/cgi-bin/bdquery/z?d105:HR02265:|TOM:/bss/d105query.html|

で入手することができます。


1997年12月16日成立

 

第1節 略 称

 この法律は,「電子窃盗排除法(Net法)(No Electronic Theft (NET) Act)」として引用することができる。

第2節 著作権侵害犯罪

(a) 金融上の利得 Financial Gainの定義

 合衆国法典(United States Code)第17篇第101条は,「ディスプレイ」という用語に関する無指定のパラグラフの後に,

『「金融上の利得」という用語は,他人の著作物の受領を含め,何らかの価値を有するものの受領またはその受領の期待を含む。』

という新しい文を挿入して改正される。

(b) 犯  罪

 合衆国法典第17篇第506条第(a)項は,次のように読み替えて改正される。

「(a) 犯罪となる侵害行為

 意図して,

(1) 商業上の有利な地位(commercial advantage)または私的な金融上の利得(private financial gain)を目的として,または,

(2) 合計1,000ドル以上の販売価額を有する1以上の著作物の1以上の複製物または音楽レコードを,電子的な手段によるものを含め,180日の間に,複製(reproduction)もしくは頒布(distribution)することによって,

著作権を侵害する者は,合衆国法典第18篇第2319条の規定に基づいて処罰される。本項においては,著作物の複製または頒布の事実の証明があっても,それだけでは,意図的な侵害の証明を構成するものとしては十分ではない。」

(c) 刑事手続上の制限

 合衆国法典第17篇第507条は,「3」を削除し「5」を挿入して改正される。

(d) 著作権侵害犯罪

 合衆国法典第18篇第2319条は,次のとおり改正される。

(1) 第(a)項において,「第(b)項」を削除して「第(b)項及び第(c)項」を挿入する。

(2) 第(b)項において,

(A) 前記第(1)号の部分の「本条第(a)項」を削除して「第17篇第506条第(a)項第(1)号」を挿入する。

(B) 第(1)号において,

(i) 「その犯罪が複製または頒布を構成するときは」の後に「電子的な手段よる場合を含め」を挿入し,

(ii) 「2,500ドル以上の販売価額を有する」を削除して「合計2,500ドル以上の販売価額を有する」を挿入する。そして,

(3) 第(c)項を新たな第(e)項とした上,第(b)項の後に次のとおり挿入する。

「(c) 合衆国法典第17篇第506条第(a)項第(2)号に規定により犯罪者となる者は,

(1) その犯罪が,合計2,500ドル以上の販売価額を有する1以上の著作物の10以上の複製物または音楽レコードによって構成される場合には,3年以下の拘禁刑もしくは本篇に定める罰金刑,または,その両方の刑によって処罰される。

(2) その犯罪が,第(1)号の犯罪の再犯もしくは累犯である場合には,6年以下の拘禁刑もしくは本篇に定める罰金刑,または,その両方の刑によって処罰される。

(3) その犯罪が,合計1,000ドル以上の販売価額を有する1以上の著作物の1以上の複製物または音楽レコードによって構成される場合には,1年以下の拘禁刑もしくは本篇に定める罰金刑,または,その両方の刑によって処罰される。

(d)

(1) 連邦刑事訴訟規則 (Federal Rules of Criminal Procedure) の規則第32条第(c)項に定める報告書を準備する間に,その犯罪の被害者は,当該犯罪の被害者,侵害の広がり及び範囲並びに被害者に対する犯罪行為の経済的影響を含め被害者が被った損失を特定するための被害影響陳述(a victim impact statement)を申し立てることを許されなければならず,そして,保護観察官は,この陳述を受領しなければならない。

(2) 被害影響陳述の申立てを許される者は,次の者を含む。

(A) 侵害行為に含まれる行動によって影響を受けた適法な著作物の作者(producers)または販売者(sellers);

(B) 当該著作物中の知的財産権の保有者;並びに,

(C) これら作成者,販売者及び保有者の適法な代理人」

(e) 音楽実演行為の無権限定着及び無権限転送(Unauthorized Fixation and Trafficking of Live Musical Performances

 合衆国法典第18篇第2319条Aは,次のとおり改正される。

(1) 第(d)項及び第(e)項をそれぞれ第(e)項及び第(f)項とする。

(2) 第(c)項の後に,次のとおり挿入する。

「(d)

(1) 連邦刑事訴訟規則の規則32条第(c)項による報告書を準備する間に,その犯罪の被害者は,当該犯罪の被害者,侵害の広がり及び範囲並びに被害者に対する犯罪行為の経済的影響を含め被害者が被った損失を特定するための被害影響陳述を申し立てることを許されなければならず,そして,保護観察官は,この陳述を受領しなければならない。

(2) 被害影響陳述の申立てを許される者は,次の者を含む。

(A) 侵害行為に含まれる行動によって影響を受けた適法な著作物の作者または販売者;

(B) 当該著作物中の知的財産権の保有者;並びに,

(C) これら作成者,販売者及び保有者の適法な代理人」

(f) 模造品及び模造サービスの転送(Trafficking in Counterfeit Goods or Services

合衆国法典第18篇第2320条は,次のとおり改正される。

(1) 第(d)項及び第(e)項をそれぞれ第(e)項及び第(f)項とする。

(2) 第(c)項の後に,次のとおり挿入する。

「(d)

(1) 連邦刑事訴訟規則 の規則32条第(c)項による報告書を準備する間に,その犯罪の被害者は,当該犯罪の被害者,侵害の広がり及び範囲並びに被害者に対する犯罪行為の経済的影響を含め被害者が被った損失を特定するための被害影響陳述を申し立てることを許されなければならず,そして,保護観察官は,この陳述を受領しなければならない。

(2) 被害影響陳述の申立てを許される者は,次の者を含む。

(A) 侵害行為に含まれる行動によって影響を受けた適法な著作物の作者または販売者;

(B) 当該著作物中の知的財産権の保有者;並びに,

(C) これら作成者,販売者及び保有者の適法な代理人」

(g) 判決委員会(Sentencing Commission)に対する指示

(1) 1984年判決改革法(Public Law 98-473, 98 Stat. 1987) 及び1987年判決法(Public Law 100-182, 101 Stat. 1271, 18 U.S.C. 994 note)第21条の権限(判決ガイドライン及び政策声明の修正権限を含む。)に基づき,合衆国判決委員会(United States Sentencing Commission)は,知的財産権侵害の罪(第17篇第506条第(a)項,第18篇第2319条,第2319条A及び第2320条に規定する犯罪を含む。)により有罪判決を宣告された被告人を分類するための適用可能なガイドラインが,当該犯罪を識別し,本項第(2)号に規定する追加的な考慮事項を的確に反映するだけの十分な説得力を持つようにしなければならない。

(2) 第(1)号の実施に際しては,判決委員会は,ガイドラインが,知的財産権を侵害する犯罪に関連する物の販売価額及び品質についての考慮事項を提供するようにしなければならない。

第3節 合衆国による侵害

 合衆国法典第28篇第1498条第(b)項は,「当該著作者の民事救済は,訴訟によらなければならない」を削除し,「そのような侵害を訴訟原因として提起された訴訟は,著作者による訴訟でなければならない」を挿入して改正される。


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Last Modified : Feb/21/2001

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