カナダの「1993年刑法典163.1条」

(仮訳)

翻訳:夏井高人


これは,カナダの刑法典のうち,チャイルド・ポルノグラフィの規制に関する規定である第163条の部分を大急ぎで仮訳したものです。意訳したところがあります。誤訳もあるかもしれません。この点,ご注意ください。

なお,この法律のオリジナルテキストは,

http://insight.mcmaster.ca/org/efc/pages/law/cc/cc.163.1.html

で入手できます。


§163.1 チャイルド・ポルノグラフィの所持等の罪

(1) 本条では,「チャイルド・ポルノグラフィ」とは,次のいずれかのものを意味する。

(a) 電子的に作られたものであるか機械装置で作られたものであるかを問わず,ポルノ写真,フィルム,ビデオその他の視覚描写(Visual Representaion)であって,

(i) 18歳未満の者(もしくは18歳未満の者として描写されている者)であり,かつ,露骨な性的行為を演じていることを示すもの;もしくは,

(ii) その主たる特徴が,18歳未満の者の性的目的,生殖器,または,肛門領域を撮影したものであるもの;あるいは,

(b) 本法によって犯罪となるような18歳未満の者との性行為を擁護・助言する書物または視覚描写

(2) 公刊の目的で,チャイルド・ポルノグラフィを製造し,印刷し,出版し,または,所持した者は,次のとおりに有罪である。

(a) 公判請求できる犯罪であり,10年以下の拘禁刑で処罰できる。または,

(b) 即決裁判によって処罰することができる。

(3) 配布もしくは販売の目的で,チャイルド・ポルノグラフィを輸入し,配布し,販売し,または,所持した者は,次のとおりに有罪である。

(a) 公判請求できる犯罪であり,10年以下の拘禁刑で処罰できる。または,

(b) 即決裁判によって処罰することができる。

(4) チャイルド・ポルノグラフィを所持した者は,次のとおりに有罪である。

(a) 公判請求できる犯罪であり,5年以下の拘禁刑で処罰できる。または,

(b) 即決裁判によって処罰することができる。

(5) 視覚描写に関しては,チャイルド・ポルノグラフィを構成すると主張されている視覚描写に示されている者が18歳以上であった(もしくは18歳以上の者として描写されていた)と被告人が信じていたとしても,すべての合理的なステップを踏んでその者の年齢を確認し,すべての合理的なステップを踏んでその者が18歳未満かどうかを確かめ,その視覚描写が18歳未満の者の描写でないことを被告人が確かめたのでない限り,そのように信じたとの事実をもって,(2)号の公判における抗弁とすることはできない。

(7) 本条(2)号,(3)号または(4)号に基づく犯罪に関しては,それぞれの状況が求める修正をした上で,163条(3)号ないし(5)号の規定を適用する。


§163. 道徳を堕落させる罪

(1) 次のいずれかの者は,犯罪者である。

(a) わいせつな著作,絵画,模型,写真記録その他の物を製作,印刷,出版,配布,回覧した者,または,出版,配布もしくは回覧の目的でその所持を取得した者

(b) 犯罪コミックを製作,印刷,配布,販売した者,または,出版,配布もしくは回覧の目的でその所持を取得した者

(2) 故意に,法的正当性及び法的根拠なしに,次のいずれかの行為をした者は,犯罪者である。

(a) わいせつな著作,絵画,模型,写真記録その他の物を販売すること,公衆の観覧に供すること,または,これらの目的でその所持を取得すること

(b) 汚らわしいものまたはわいせつなショーを公衆に公開すること

(c) 堕胎もしくは流産を起こす方法を目的とする(もしくはそれを表現する)道具,指導,薬品,薬物,または書物の販売の提供,宣伝の提供もしくは広告出版の提供をすること,または,これらの販売もしくは処分を目的としてこれらを所持すること;あるいは,

(d) 男性の生殖能力の回復,性病もしくは生殖器官の病気の治療を目的とする(もしくは,それを表現する)道具,指導,薬品,薬物もしくは書物の宣伝をすること,または,その広告出版をすること

(3) 犯罪を構成するとして起訴されている行為が公序良俗に反しない場合,または,起訴された行為が公序良俗の範囲を超過していない場合には,何人も,本条によって有罪とされてはならない。

(4) 本条においては,行為が公序良俗の範囲内にあるかどうか,起訴された行為が公序良俗の範囲を超過していることを証明する証拠があるかどうかは,法律上の問題であるが,起訴された行為が公序良俗の範囲を超過していたかどうかは,事実上の問題である。

(5) 本条においては,被告人の犯行の動機は,問題とならない。

(6)  [1993年法律第46号第1条により廃止]

(7) 本条においては,「犯罪コミック」とは,主として(もしくは,実質的に),次のいずれかを内容とする絵画化された視覚的なものである雑誌,定期刊行物,または,図書を意味する。

(a) 事実にせよフィクションにせよ,犯罪の実行を扱うもの

(b) 犯罪の実行の前後を問わず,事実にせよフィクションにせよ,犯罪の実行に関連するイベントを扱うもの

(8) 本法においては,その中心的な特徴が過度の性的搾取であるものの出版,または,その中心的な特徴がセックスと次の項目すなわち犯罪,ホラー,虐待及び暴力の中の1以上であるものの出版は,わいせつであると推定する。

 


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最終更新日:1998/01/12

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