ニュー・ハンプシャー州(USA)の「 犯罪法典」
（仮訳）
（2002年1月15日改訂版）
翻訳：夏井高人
これは，アメリカ合衆国ニュー・ハンプシャー州の 犯罪法典のうち，コンピュータ犯罪に関する部分の仮訳です。誤訳もあるかもしれません。ご注意ください。
なお，この法律のオリジナル・テキストは，
http://sudoc.nhsl.lib.nh.us/rsa/638.htm
で入手できます。
1986年1月1日発効
ニュー・ハンプシャー州注釈付修訂法律集
第LXII款 犯罪法典
第638章 詐欺
コンピュータ犯罪
第638章第16条 定義
本区分においては，
I.「アクセス」とは，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークに命令すること，これらと通信すること，これらの中にデータを記憶すること，または，これらの中からデータを検索することを意味する。
II. 「コンピュータ」とは，データを受容し，かつ，処理することができるプログラム可能な電子装置を意味する。
III. 「コンピュータ・ネットワーク」とは，(a)通信設備によってコンピュータに接続された関連装置のセット，または，(b)通信設備によって接続された，関連装置を含む2以上のコンピュータの複合体を意味する。
IV. 「コンピュータ・プログラム」とは，命令，文または関連データのセットであって，かつ，そのままの形式もしくは修正された形式で，コンピュータもしくはコンピュータ・システムに対し，指定された機能を実行させることができるものを意味する。
V. 「コンピュータ・サービス」は，コンピュータ・アクセス，データ処理及びデータ記憶を含む（これらに限定されるわけではない。）。
VI. 「コンピュータ・ソフトウェア」とは，何らかの形式で存在する１以上のコンピュータ・プログラム，関連する運用手順，マニュアルまたはその他の文書を意味する。
VII. 「コンピュータ・システム」とは，コンピュータ，そのソフトウェア，関連機器，通信設備のいずれかを意味し，かつ，コンピュータ・ネットワークを含む。
VIII. 「データ」とは，コンピュータ・ソフトウェアを含め，あらゆる種類・形式の情報を意味する。
LX. 「者」とは，自然人，会社，信託，組合，法人・非法人の団体，または，州の機関もしくは市政機関及び公務員を含むその他の法的団体もしくは政治的団体を意味する。
X. 「財産」とは，データを含め，何らかの有価物を意味する。
第638章第17条 コンピュータ関連犯罪
I. 自分がそのようにする権限を有しないことを認識しながら，認識して，無権限のコンピュータ・システムにアクセスした者，または，アクセスされるようにした者は，コンピュータ・システムに対する無権限アクセスのコンピュータ犯罪により有罪である。コンピュータ・システムに対する無権限アクセスを理由とする刑事訴追に対しては，次のいずれかを有利な抗弁とすることができる。
(a) 当該の者が，コンピュータ・システムの保有者またはそこへのアクセスを許可する権限を有する者から，アクセスする権限を授与されたと合理的に信じていたこと
(b) 当該の者が，コンピュータ・システムの保有者またはそこへのアクセスを許可する権限を有する者から，何らの対価の支払もなくアクセスする権限を授与されたと合理的に信じていたこと，または，
(c) 当該の者が，そのアクセスについて，無権限であるということを合理的に認識することができなかったこと
II. 無権限のコンピュータ・サービスを入手する目的で，認識して，コンピュータ・システムにアクセスした者，もしくは，アクセスされるようにした者，または，その他の利用をした者，もしくは，利用されるようにした者は，コンピュータ・サービス窃盗のコンピュータ犯罪により有罪である。
III. 無権限で，認識して，または，無謀にも無視して，コンピュータ・サービスを崩壊もしくは劣化させ，または，混乱させた者，劣化させた者，もしくは，混乱を発生させた者，劣化を発生させた者，または，コンピュータ・サービスの権限を有する利用者に対するコンピュータ・サービスの提供を拒否した者，もしくは，拒否されるようにする者は，コンピュータ・サービス妨害のコンピュータ犯罪により有罪である。
IV. 次のいずれかの者は，コンピュータ・システム情報不正使用のコンピュータ犯罪により有罪である。
(a) コンピュータ・システムへアクセスした結果，もしくは，アクセスされるようにした結果，認識して，コンピュータ・システム内に存在し，それによって通信され，もしくは，それによって作成されるあらゆる形式のデータを，無権限で，画面表示させた者，使用した者，開示した者，または，複製した者
(b) 認識して，または，無謀にも無視して，かつ，無権限で，
(1) コンピュータ・システムの内部にあるか外部にあるかを問わず，コンピュータ・システムによって使用されるべきデータを改変したもの，削除した者，不正使用した者，毀損した者，破壊した者，もしくは，取得した者
(2) コンピュータ・システム内のデータを傍受した者，もしくは，追加した者，
(c) 認識して，本項(a)もしくは(b)の違反行為によって入手されたデータを受領した者，もしくは，販売した者，または，
(d) 認識して，本項(a)もしくは(b)の違反行為によって入手されたものと認識しているデータ，もしくは，そのように信じているデータを使用した者，もしくは，これを開示した者
V. 無権限で，認識して，または，無謀にも無視して，コンピュータ・システム内で使用される機器を不正使用した者，取得した者，輸送した者，隠蔽した者，改変した者，毀損した者，もしくは，破壊した者，または，認識して，または，無謀にも無視して，そのような結果を発生させる行為をした者は，コンピュータ機器破壊のコンピュータ犯罪により有罪である。
第638章第18条 コンピュータ犯罪，処罰
I. 財産またはコンピュータ・サービスの損害もしくは価額が1,000ドルを超過する場合には，コンピュータ犯罪は，クラスAの重罪を構成する。
II. 次のいずれかの場合には，コンピュータ犯罪は，クラスBの重罪を構成する。
(a) 財産またはコンピュータ・サービスの損害もしくは価額が500ドルを超過する場合，または，
(b) 無謀にも無視して当該行為に従事した者が，他人に対して重大な身体的損傷の危険を発生させた場合
III. 財産またはコンピュータ・サービスの損害もしくは価額が500ドル以下の場合には，コンピュータ犯罪は，軽罪である。
IV. 行為者が，ニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条の違反行為の実行を通じて，金銭，財産，サービスその他のものを利得している場合には，裁判所は，その有罪判決に基づき，同法第651章に規定する拘禁刑その他の刑の宣告に加え，その自由裁量により，罰金刑に代えて，被告人に対し，被告人がその犯罪によって得た利得の額の2倍を超過しない範囲内で裁判所が確定する金額の弁償を命ずることができる。この場合，裁判所は，被告人が違反行為から得た利得の額を確定するために，評決をしなければならず，もし，裁判記録中に当該評決を支持するのに十分な証拠が含まれていない場合には，裁判所は，この問題について審問をすることができる。本条において，「利得」とは，得られた金銭の額，または，得られた財産，コンピュータ・サービスその他のものの価額を意味する。
V. 本条においては，
(a) 財産またはコンピュータ・サービスの価額は，次のいずれかである。
(1) 違反行為の時点における当該財産もしくはコンピュータ・サービスの市場価額，または，
(2) ニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条の違反行為の結果として，財産もしくはコンピュータ・サービスが，修理不能なまでに毀損もしくは破壊された場合には，当該財産もしくはコンピュータ・サービスを再構築し，または，交換するための違反行為時点における費用額
(b) １個の計画または行為の遂行に従って実行されたニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条の違反行為に含まれる価額は，それが同一人によるものか複数人によるものかを問わず，犯罪等級を決定するに際しては，合算することができる。
(c) 財産またはコンピュータ・サービスの価額を十分に確定できない場合には，その価額は，250ドルであるとみなす。
第638章第19条 裁判管轄地
I. ニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条の違反を理由とする刑事公判においては，違反行為は，その行為が起きた町，または，違反行為に含まれるコンピュータ・システムもしくはその一部が所在した町で実行されたものとみなす。
II. １以上の行為によって構成されるニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条の違反行為を理由とする刑事公判においては，犯罪行為は，その中のいずれかの行為が起きた町，または，違反行為に含まれるコンピュータ・システムもしくはその一部が所在した町で実行されたものとみなす。
III. ニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条によって禁止される違反行為の遂行中に実行された何らかの行為が，この州内で起きた場合，または，ニュー・ハンプシャー州修訂法律集第638章第17条に違反してアクセスされたコンピュータ・システムもしくはその一部がこの州内に所在した場合には，違反行為は，この州内で実行されたものとみなす。
New Hampshire Revised Statutes Annotated
Title LXII. Criminal Code
Chapter 638. Fraud
Computer Crime
638:16 Computer Crime; Definitions.
For the purpose of this subdivision:
I. "Access" means to instruct, communicate with, store data in, or retrieve data from a computer, computer system, or computer network.
II. "Computer" means a programmable, electronic device capable of accepting and processing data.
III. "Computer network" means (a) a set of related devices connected to a computer by communications facilities, or (b) a complex of 2 or more computers, including related devices, connected by communications facilities.
IV. "Computer program" means a set of instructions, statements, or related data that, in actual or modified form, is capable of causing a computer or computer system to perform specified functions.
V. "Computer services" includes, but is not limited to, computer access, data processing, and data storage.
VI. "Computer software" means one or more computer programs, existing in any form, or any associated operational procedures, manuals, or other documentation.
VII. "Computer system" means a computer, its software, related equipment, communications facilities, if any, and includes computer networks.
VIII. "Data" means information of any kind in any form, including computer software.
IX. "Person" means a natural person, corporation, trust, partnership, incorporated or unincorporated association, and any other legal or governmental entity, including any state or municipal entity or public official.
X. "Property" means anything of value, including data.
638:17 Computer Related Offenses.
I. A person is guilty of the computer crime of unauthorized access to a computer system when, knowing that he is not authorized to do so, he knowingly accesses or causes to be accessed any computer system without authorization. It shall be an affirmative defense to a prosecution for unauthorized access to a computer system that:
(a) The person reasonably believed that the owner of the computer system, or a person empowered to license access thereto, had authorized him to access; or
(b) The person reasonably believed that the owner of the computer system, or a person empowered to license access thereto, would have authorized him to access without payment of any consideration; or
(c) The person reasonably could not have known that his access was unauthorized.
II. A person is guilty of the computer crime of theft of computer services when he knowingly accesses or causes to be accessed or otherwise uses or causes to be used a computer system with the purpose of obtaining unauthorized computer services.
III. A person is guilty of the computer crime of interruption of computer services when he, without authorization, knowingly or recklessly disrupts or degrades or causes the disruption or degradation of computer services or denies or causes the denial of computer services to an authorized user of a computer system.
IV. A person is guilty of the computer crime of misuse of computer system information when:(a) As a result of his accessing or causing to be accessed a computer system, he knowingly makes or causes to be made an unauthorized display, use, disclosure, or copy, in any form, of data residing in, communicated by, or produced by a computer system; or
(b) He knowingly or recklessly and without authorization:
(1) Alters, deletes, tampers with, damages, destroys, or takes data intended for use by a computer system, whether residing within or external to a computer system; or
(2) Intercepts or adds to data residing within a computer system; or
(c) He knowingly receives or retains data obtained in violation of subparagraph (a) or (b) of this paragraph; or
(d) He knowingly uses or discloses any data he knows or believes was obtained in violation of subparagraph (a) or (b) of this paragraph.
V. A person is guilty of the computer crime of destruction of computer equipment when he, without authorization, knowingly or recklessly tampers with, takes, transfers, conceals, alters, damages, or destroys any equipment used in a computer system or knowingly or recklessly causes any of the foregoing to occur.
638:18 Computer Crime Penalties.
I. Computer crime constitutes a class A felony if the damage to or the value of the property or computer services exceeds $1,000.
II. Computer crime constitutes a class B felony if:
(a) The damage to or the value of the property or computer services exceeds $500; or
(b) The person recklessly engages in conduct which creates a risk of serious physical injury to another person.
III. Computer crime is a misdemeanor if the damage to or the value of the property or computer services, if any, is $500 or less.
IV. If a person has gained money, property, or services or other consideration through the commission of any offense under RSA 638:17, upon conviction thereof, the court, in addition to any sentence of imprisonment or other form of sentence authorized by RSA 651, may, in lieu of imposing a fine, sentence the defendant to pay an amount, fixed by the court, not to exceed double the amount of the defendant's gain from the commission of such offense. In such case, the court shall make a finding as to the amount of the defendant's gain from the offense and, if the record does not contain sufficient evidence to support such finding, the court may conduct a hearing upon the issue. For the purpose of this section, "gain" means the amount of money or the value of property or computer services or other consideration derived.
V. For the purposes of this section:
(a) The value of property or computer services shall be:
(1) The market value of the property or computer services at the time of the violation; or
(2) If the property or computer services are unrecoverable, damaged, or destroyed as a result of a violation of RSA 638:17 the cost of reproducing or replacing the property or computer services at the time of the violation.
(b) Amounts included in violations of RSA 638:17 committed pursuant to one scheme or course of conduct, whether from the same person or several persons, may be aggregated in determining the grade of the offense.
(c) When the value of the property or computer services or damage thereto cannot be satisfactorily ascertained, the value shall be deemed to be $250.
638:19 Venue.
I. In any prosecution for a violation of RSA 638:17 the offense shall be deemed to have been committed in the town in which the act occurred or in which the computer system or part
thereof involved in the violation was located.II. In any prosecution for a violation of RSA 638:17 based upon more than one act in violation thereof, the offense shall be deemed to have been committed in any of the towns in which any of the acts occurred or in which a computer system or part thereof involved in a violation was located.
III. If any act performed in furtherance of the offenses prohibited by RSA 638:17 occurs in this state or if any computer system or part thereof accessed in violation of RSA 638:17 is located in this state, the offense shall be deemed to have occurred in this state.
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Last Modified : Jan/15/2002