ハワイ州(USA)の「刑法典」
（仮訳）
（2002年1月7日改訂版）
翻訳：夏井高人
これは，アメリカ合衆国ハワイ州の刑法のうち，コンピュータ犯罪に関する部分の仮訳です。誤訳もあるかもしれません。ご注意ください。
なお，この法律のオリジナル・テキストは，
http://www.capitol.hawaii.gov/hrscurrent/Vol14_Ch701-853/hrs701-713_Penal/
で入手できます。
2001年改正
ハワイ州修訂法律集
第5部門 犯罪及び刑事手続
第37款 ハワイ州刑法典
第708章 財産権に対する犯罪
第4部 コンピュータ犯罪
第708章第890条 定義
この部では，文脈上他の意味が求められない限り，
「アクセス」とは，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークへの入口を獲得すること，これらに命令すること，これらと通信すること，これらの中にデータを記憶すること，これらの中からデータを検索すること，または，その他これらの資源を利用できるようにすることを意味する。
「コンピュータ」とは，論理機能，演算機能及び記憶機能を実行する電子装置，磁気装置，光学装置，電子化学装置，または，その他の高速データ処理装置を意味し，かつ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワーク内の当該の装置に接続され，もしくは，これらと関連する全てのコンピュータ機器を含むが，自動タイプライタもしくは自動タイプセッタ，携帯用卓上計算機またはその他の類似の装置を含まない。
「コンピュータ機器」とは，コンピュータのインタフェイスとなるべき全ての入力，出力，処理，記憶，ソフトウェアまたは通信設備を含む何らかの機器もしくは装置を意味する。
「コンピュータ・ネットワーク」とは，マイクロ波通信，電子通信，もしくは，その他何らかの通信を含め，通信線によって相互接続された2以上のコンピュータまたはコンピュータ・システムを意味する。
「コンピュータ・プログラム」または，「ソフトウェア」とは，コンピュータに読み取り可能な命令もしくは文及び関連データのセットであって，かつ，コンピュータ・システムによって実行されると，それに接続されているコンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークに対し，コンピュータ・サービスを実行させるものを意味する。
「コンピュータ・サービス」は，コンピュータ・システム，コンピュータ・ネットワーク，コンピュータ・プログラム，コンピュータでの使用のために準備されたデータ，及び，コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワーク内に含まれるデータの使用を含む。
「コンピュータ・システム」とは，結合システムとして運用されるべき相互接続されたコンピュータ機器のセットを意味する。
「損害」とは，データ，プログラム，システム，ネットワークまたはコンピュータ・サービスの完全性もしくは可用性を損なうことを意味する。
「データ」とは，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークのために準備された情報，概念，ソフトウェアまたは命令を意味する。
「情報を入手する」は，データの単なる観察を含む（これに限定されない。）。
「財産」は，証券，データ，コンピュータ・ソフトウェア，コンピュータ・プログラム，コンピュータ・システムに関連する文書，金銭，コンピュータ・サービス，または，何らかの有価物を含む。
「裁判所の命令」とは，この州の最高裁判所によって採択された規則，連邦民事訴訟規則，または，連邦刑事訴訟規則を意味する。
「法律」とは，この州の法律または連邦政府の法律を意味する。
「無権限で」とは，許可のないこと，または，保有者，賃貸人，権利を有する利用者から，または，保有者，賃貸人もしくは権利を有する利用者によって許可を与えることの許諾を受けた者，もしくは，その権限を有する者から受けた許可を超過することを意味する。
第708章第891条 第１度のコンピュータ詐欺
(1) 認識して，かつ，詐欺の意図で，無権限でコンピュータにアクセスし，かつ，そのような行為という方法によって，他人の財産に対する管理を入手した者，または，それを入手しようとした者は，第1度のコンピュータ詐欺の犯罪行為を実行する者である。
(2) 第1度のコンピュータ詐欺についての公判においては，詐欺の対象及び入手した財産が，コンピュータの使用のみで構成されており，かつ，その使用の価額が1年間に300ドル以下であるということは，抗弁となる。
(3) 第1度のコンピュータ詐欺は，クラスBの重罪である。
第708章第891条5 第2度のコンピュータ詐欺
(1) 認識して，かつ，詐欺の意図で，それによってコンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークにアクセスし得るパスワード，または，それと類似の情報を，他人に対して譲渡その他の処分をした者，または，譲渡その他の処分の意図でその管理を入手した者は，第2度のコンピュータ詐欺の犯罪行為を実行する者である。
(2) 第2度のコンピュータ詐欺は，クラスCの重罪である。
第708章第892条 第1度のコンピュータ毀損
(1) 次の者は，第1度のコンピュータ毀損の犯罪行為を実行する者である。
(a) 認識して，プログラム，情報，コードもしくはコマンドの送信を発生させ，それによって，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークに対し，認識して，無権限で損害を発生させた者，または，
(b) 認識して，無権限で，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークにアクセスし，それによって，認識して，損害を発生させた者
(2) 本条において用いる場合には，「損害」は，次のいずれかのものでなければならない。
(a) 診断，修理，交換もしくは矯正に関連する費用を含め，1年の間に，1人以上の者に対し，総額で少なくとも5,000ドルの損失をもたらしたもの
(b) 1人以上の者の医療業務，矯正，治療もしくは看護について，変更もしくは被害，または，潜在的な変更もしくは被害をもたらしたもの
(c) いずれかの者に対し，身体的被害をもたらしたもの
(d) 公衆の健康もしくは安全を危険に晒したもの，または，
(e) 司法運営を妨害したもの
(3) 第1度のコンピュータ毀損は，クラスBの重罪である。
第708章第892条5 第2度のコンピュータ毀損
(1) 認識して，無権限で，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークにアクセスし，それによって，無謀にも無視して，損害を発生させた者は，第2度の無権限コンピュータ毀損の犯罪行為を実行する者である。
(2) 第2度のコンピュータ毀損は，クラスCの重罪である。
第708章第893条 別の犯罪の実行におけるコンピュータの使用
(1) 次のいずれかの犯罪行為の被害者または被害者となるべき者を，特定し，選択し，勧誘し，説得し，強要し，唆し，誘導し，または，周旋するために，認識して，コンピュータを使用した者は，別の犯罪の実行におけるコンピュータの使用の犯罪行為を実行する者である。
(a) 第1度の保護妨害に関する第707章第726条
(b) 第2度の保護妨害に関する第707章第727条
(c) 第2度の性的暴行に関する第707章第731条
(d) 第3度の性的暴行に関する第707章第732条
(e) 第4度の性的暴行に関する第707章第733条
(f) 第2度の児童虐待助長に関する第707章第751条，及び
(g) 未成年者へのポルノグラフィ助長に関する第712章1215条
(2) 別の犯罪の実行におけるコンピュータの使用は，事案によって，助長された犯罪行為よりも重いクラスもしくは級の犯罪行為となる。他の法律が反対のことを定めていたとしても，本条に基づく有罪判決は，別の犯罪に対する有罪判決と併合することができない。
第708章第894条 コンピュータ犯罪に使用された財産の没収
この部に基づく犯罪の実行，その試み，もしくは，その謀議において使用された財産，もしくは，それらに使用する意図であった財産，または，そのような行為を助長もしくは支援した財産は，第712章Aの要件に従い，没収されなければならない。
第708章第895条 裁判管轄権
この部においては，何らかの方法によって，ある裁判管轄権から他の裁判管轄権にまたがって，コンピュータ，コンピュータ・システムまたはコンピュータ・ネットワークのアクセスを起こした者は，その両方の裁判管轄権にあるコンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークに自分でアクセスしたものとみなす。
第708章第895条5 第1度の無権限コンピュータ・アクセス
(1) 認識して，無権限で，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークにアクセスし，それによって情報を入手した者は，次のいずれかの場合には，第1度の無権限コンピュータ・アクセスの犯罪行為を実行する者である。
(a) 犯罪行為が，商業上の利益または私的な資金を得る目的で実行された場合
(b) 犯罪行為が，他の犯罪行為の遂行中に実行された場合
(c) 入手された情報の価額が5,000ドルを超過する場合，または，
(d) その情報が，法律もしくは裁判所の命令によって，無権限開示に対して保護されるべきことを求められていたものである場合
(2) 第1度の無権限コンピュータ・アクセスは，クラスBの重罪である。
第708章第895条6 第2度の無権限コンピュータ・アクセス
(1) 認識して，無権限で，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークにアクセスし，それによって情報を入手した者は，第2度の無権限コンピュータ・アクセスの犯罪行為を実行する者である。
(2) 第2度の無権限コンピュータ・アクセスは，クラスCの重罪である。
第708章第895条7 第3度の無権限コンピュータ・アクセス
(1) 認識して，無権限で，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークにアクセスした者は，第3度の無権限コンピュータ・アクセスの犯罪行為を実行する者である。
(2) 第3度の無権限コンピュータ・アクセスは，軽罪である。
Hawaii Revised Statutes
Division 5. Crimes and Criminal Proceedings
Title 37. Hawaii Penal Code
Chapter 708 Offenses against Property Rights
Part IX. Computer Crime
§708-890 Definitions.
As used in this part, unless the context otherwise requires:
"Access" means to gain entry to, instruct, communicate with, store data in, retrieve data from, or otherwise make use of any resources of a computer, computer system, or computer network.
"Computer" means any electronic, magnetic, optical, electrochemical, or other high-speed data processing device performing logical, arithmetic, or storage functions, and includes all computer equipment connected or related to such a device in a computer system or computer network, but shall not include an automated typewriter or typesetter, a portable hand-held calculator, or other similar device.
"Computer equipment" means any equipment or devices, including all input, output, processing, storage, software, or communications facilities, intended to interface with the computer.
"Computer network" means two or more computers or computer systems, interconnected by communication lines, including microwave, electronic, or any other form of communication.
"Computer program" or "software" means a set of computer-readable instructions or statements and related data that, when executed by a computer system, causes the computer system or the computer network to which it is connected to perform computer services.
"Computer services" includes but is not limited to the use of a computer system, computer network, computer program, data prepared for computer use, and data contained within a computer system or computer network.
"Computer system" means a set of interconnected computer equipment intended to operate as a cohesive system.
"Damage" means any impairment to the integrity or availability of data, a program, a system, a network, or computer services.
"Data" means information, facts, concepts, software, or instructions prepared for use in a computer, computer system, or computer network.
"Obtain information" includes but is not limited to mere observation of the data.
"Property" includes financial instruments, data, computer software, computer programs, documents associated with computer systems, money, computer services, or anything else of value.
"Rule of court" means any rule adopted by the supreme court of this State, the Federal Rules of Civil Procedure, or the Federal Rules of Criminal Procedure.
"Statute" means any statute of this State or the federal government.
"Without authorization" means without the permission of or in excess of the permission of an owner, lessor, or rightful user or someone licensed or privileged by an owner, lessor, or rightful user to grant the permission.
§708-891 Computer fraud in the first degree.
(1) A person commits the offense of computer fraud in the first degree if the person knowingly, and with intent to defraud, accesses a computer without authorization and, by means of such conduct, obtains or exerts control over the property of another.
(2) In a prosecution for computer fraud in the first degree, it is a defense that the object of the fraud and the property obtained consists only of the use of the computer and the value of such use is not more than $300 in any one-year period.
(3) Computer fraud in the first degree is a class B felony.
§708-891.5 Computer fraud in the second degree.
(1) A person commits the offense of computer fraud in the second degree if the person knowingly, and with the intent to defraud, transfers, or otherwise disposes of, to another, or obtains control of, with the intent to transfer or dispose of, any password or similar information through which a computer, computer system, or computer network may be accessed.
(2) Computer fraud in the second degree is a class C felony.
§708-892 Computer damage in the first degree.
(1) A person commits the offense of computer damage in the first degree if:
(a) The person knowingly causes the transmission of a program, information, code, or command, and thereby knowingly causes unauthorized damage to a computer, computer system, or computer network; or
(b) The person intentionally accesses a computer, computer system, or computer network without authorization and thereby knowingly causes damage.
(2) As used in this section, the "damage" must:
(a) Result in a loss aggregating at least $5,000 in value, including the costs associated with diagnosis, repair, replacement, or remediation, during any one-year period to one or more individuals;
(b) Result in the modification or impairment, or potential modification or impairment, of the medical examination, diagnosis, treatment, or care of one or more individuals;
(c) Result in physical injury to any person;
(d) Threaten public health or safety; or
(e) Impair the administration of justice.
(3) Computer damage in the first degree is a class B felony.
§708-892.5 Computer damage in the second degree.
(1) A person commits the offense of computer damage in the second degree if the person knowingly accesses a computer, computer system, or computer network without authorization and thereby recklessly causes damage.
(2) Computer damage in the second degree is a class C felony.
§708-893 Use of a computer in the commission of a separate crime.
(1) A person commits the offense of use of a computer in the commission of a separate crime if the person knowingly uses a computer to identify, select, solicit, persuade, coerce, entice, induce, or procure the victim or intended victim of the following offenses:
(a) Section 707-726, relating to custodial interference in the first degree;
(b) Section 707-727, relating to custodial interference in the second degree;
(c) Section 707-731, relating to sexual assault in the second degree;
(d) Section 707-732, relating to sexual assault in the third degree;
(e) Section 707-733, relating to sexual assault in the fourth degree;
(f) Section 707-751, relating to promoting child abuse in the second degree; and
(g) Section 712-1215, relating to promoting pornography for minors.
(2) Use of a computer in the commission of a separate crime is an offense one class or grade, as the case may be, greater than the offense facilitated. Notwithstanding any other law to the contrary, a conviction under this section shall not merge with a conviction for the separate crime.
§708-894 Forfeiture of property used in computer crimes.
Any property used or intended for use in the commission of, attempt to commit, or conspiracy to commit an offense under this part, or which facilitated or assisted such activity, shall be forfeited subject to the requirements of chapter 712A.
§708-895 Jurisdiction.
For purposes of prosecution under this part, a person who causes, by any means, the access of a computer, computer system, or computer network in one jurisdiction from another jurisdiction is deemed to have personally accessed the computer, computer system, or computer network in each jurisdiction.
§708-895.5 Unauthorized computer access in the first degree.
(1) A person commits the offense of unauthorized computer access in the first degree if the person knowingly accesses a computer, computer system, or computer network without authorization and thereby obtains information, and:
(a) The offense was committed for the purpose of commercial or private financial gain;
(b) The offense was committed in furtherance of any other crime;
(c) The value of the information obtained exceeds $5,000; or
(d) The information has been determined by statute or rule of court to require protection against unauthorized disclosure.
(2) Unauthorized computer access in the first degree is a class B felony.
§708-895.6 Unauthorized computer access in the second degree
(1) A person commits the offense of unauthorized computer access in the second degree if the person knowingly accesses a computer, computer system, or computer network without authorization and thereby obtains information.
(2) Unauthorized computer access in the second degree is a class C felony.
§708-895.7 Unauthorized computer access in the third degree.
(1) A person commits the offense of unauthorized computer access in the third degree if the person knowingly accesses a computer, computer system, or computer network without authorization.
(2) Unauthorized computer access in the third degree is a misdemeanor.
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Last Modified : Jan/04/2002