コネチカット州（ＵＳＡ）の「刑法典」
（仮訳）
(2002年1月10日改訂版)
翻訳：夏井高人
これは，アメリカ合衆国コネチカット州の刑法典のうち，コンピュータ関連犯罪に関連する部分の仮訳です。誤訳もあるかもしれません。ご注意ください。
なお，この法律のオリジナル・テキストは，
http://www.cga.state.ct.us/2001/pub/Chap952.htm#sec53a-250.htm
で入手できます。
コネチカット州一般法律集
第13巻
第53款a 刑法典
第952章 犯罪行為
第53章a第250条 定義
本条及び第52章第570条bにおいては，
(1) 「アクセス」とは，コンピュータ，コンピュータ・システムもしくはコンピュータ・ネットワークに命令すること，これらと通信すること，これらの中にデータを記憶すること，または，これらの中からデータを検索することを意味する。
(2) 「コンピュータ」とは，データを受容する能力及びデータを処理する能力を有し，プログラム可能な電子装置を意味する。
(3) 「コンピュータ・ネットワーク」とは，(A)通信設備によって１台のコンピュータと結合された関連装置のセット，または，(B)通信設備によって結合された2台以上のコンピュータ（関連装置を含む）の複合体を意味する。
(4) 「コンピュータ・プログラム」とは，命令，文もしくはデータのセットであって，かつ，そのままの形式もしくは修正された形式で，コンピュータもしくはコンピュータ・システムにおいて，指定された機能を実行することのできるものを意味する。
(5) 「コンピュータ・サービス」は，コンピュータ・アクセス，データ処理及びデータ記憶機能を含む（これらに限定されるわけではない。 ）。
(6) 「コンピュータ・ソフトウェア」とは，何らかの形式で存在し，または，何らかの運用手順，マニュアルその他の文書と連携する1以上のコンピュータ・プログラムを意味する。
(7) 「コンピュータ・システム」とは，コンピュータ，（もしあれば）そのコンピュータ・ソフトウェア，その関連機器，もしくは，その通信設備を意味し，かつ，コンピュータ・ネットワークを含む。
(8) 「データ」とは，コンピュータ・ソフトウェアを含め，何らかの種類で何らかの形式の情報を意味する。
(9) 「者」とは，自然人，会社，信託，組合，法人もしくは非法人の団体，または，州，市政機関もしくは公務員を含め，その他の法律による組織もしくは政府の組織を意味する。
(10) 「秘密の個人データ」とは，自然人に関するデータであって，かつ，合理的な者が秘密のものに保つことを求め，かつ，法の下で保護され得るものを意味する。
(11) 「財産」とは，データを含め，何らかの有価物を意味する。
第53章a第251条 コンピュータ犯罪
(a) 定義
本条のいずれかの条項に違反する者は，コンピュータ犯罪を実行する者である。
(b) コンピュータ・システムに対する無権限アクセス
(1) そのようにする権限を有しないことを認識しながら，無権限で，コンピュータもしくはコンピュータ・システムにアクセスした者，または，アクセスされるようにした者は，コンピュータ・システムへの無権限アクセスにかかるコンピュータ犯罪により有罪である。
(2) コンピュータ・システムへの無権限アクセスによって刑事訴追を受けた被告人は，次のい ずれかを抗弁とすることができる。
(A) 被告人自身が，コンピュータ・システムの保有者であると合理的に信じたこと，そこへのアクセスを許可する権限を有すると合理的に信じたこと，もしくは，そこへのアクセスの権限が授与されていると合理的に信じたこと，
(B) コンピュータ・システムの保有者，もしくは，そこへのアクセスを許可する権限のある者が，被告人に対し，無償でアクセスする権限を授与したものと合理的に信じたこと，または，
(C) 被告人のアクセスが無権限であることを合理的に認識することができなかったこと，
(c) コンピュータ・サービスの窃盗
無権限でコンピュータ・サービスを入手することを意図して，コンピュータ・システムにアクセスした者，もしくはアクセスされるようにした者，または，これを使用した者，もしくは使用されるようにした者は，コンピュータ・サービスの窃盗にかかるコンピュータ犯罪により有罪である。
(d) コンピュータ・サービスの妨害
無権限で，かつ，意図して，または，無謀にも無視して，コンピュータ・サービスを劣化させた者，もしくは，混乱させた者，または，劣化もしくは混乱を発生させた者，または，コンピュータ・サービスの権限を有する利用者のコンピュータ・サービスへのアクセスを拒否した者，もしくは，拒否されるようにした者は，コンピュータ・サービスの妨害にかかるコンピュータ犯罪により有罪である。
(e) コンピュータ・システム情報の濫用
以下の者は，コンピュータ・システム情報の濫用にかかるコンピュータ犯罪により有罪である。
(1) コンピュータ・システムへアクセスしたこと，もしくは，アクセスされるようにしたことの結果として，意図して，当該コンピュータ・システム内にあり，それによって通信され，もしくは，それによって作成された何らかの形式のデータを，無権限で，画面表示させた者，開示した者，または，複製した者
(2) 意図して，または，無謀にも無視して，かつ，無権限で，
(A) それがコンピュータ・システムの外部にあるか内部にあるかを問わず，コンピュータ・システムで使用されるべきデータを改変した者，削除した者，改竄した者，毀損した者，破壊した者，取得した者，または，
(Ｂ) コンピュータ・システム内にあるデータを傍受した者，もしくは，そのデータにデータを付加した者
(3) 認識して，本項(1)もしくは(2)の行為によって入手されたデータを受信した者，または，保持した者
(4) 本項(1)もしくは(2)の行為によって入手されたデータであると認識し，もしくは，そうであると信じておりながら，これを使用した者，または ，開示した者
(f) コンピュータ装置の破壊
意図して，または，無権限で，かつ，無謀にも無視して，コンピュータ・システムで使用されている装置を改造した者，取得した者，移転した者，隠蔽した者，改変した者，毀損した者，もしくは，破壊した者，または，意図して，または，無謀にも無視して，そのような事態を発生させた者は，コンピュータ装置の破壊にかかるコンピュータ犯罪により有罪である。
第53章a第252条 第1度のコンピュータ犯罪−クラスBの重罪
(a) 第53章a第251条に規定するコンピュータ犯罪を実行した者について，それによるコンピュータ・サービスもしくは財産の損害額が10,000ドルを超過しているときは，第1度のコンピュータ犯罪である。
(b) 第1度のコンピュータ犯罪は，クラスBの重罪とする。
第53章a第253条 第2度のコンピュータ犯罪−クラスCの重罪
(a) 第53章a第251条に規定するコンピュータ犯罪を実行した者について，それによるコンピュータ・サービスもしくは財産の損害額が5,000ドルを超過しているときは，第2度のコンピュータ犯罪である。
(b) 第2度のコンピュータ犯罪は，クラスCの重罪とする。
第53章a第254条 第3度のコンピュータ犯罪−クラスDの重罪
(a) 第53章a第251条に規定するコンピュータ犯罪を実行した者について，(1)それによるコンピュータ・サービスもしくは財産の損害額が1,000ドルを超過しているとき，または，(2)不注意で，他人に対する重大な身体的損傷の危険をもたらした者は，第3度のコンピュータ犯罪である。
(b) 第3度のコンピュータ犯罪は，クラスDの重罪とする。
第53章a第255条 第4度のコンピュータ犯罪−クラスAの軽罪
(a) 第53章a第251条に規定するコンピュータ犯罪を実行した者について，それによるコンピュータ・サービスもしくは財産の損害額が500ドルを超過しているときは，第4度のコンピュータ犯罪である。
(b) 第4度のコンピュータ犯罪は，クラスＡの軽罪とする。
第53章a第256条 第5度のコンピュータ犯罪−クラスBの軽罪
(a) 第53章a第251条に規定するコンピュータ犯罪を実行した者について，それによるコンピュータ・サービスもしくは財産の損害額が500ドル以下のときは，第5度のコンピュータ犯罪である。
(b) 第5度のコンピュータ犯罪は，クラスBの軽罪とする。
第53章a第257条 被告人の利得額に対応した選択的罰金刑
第53章a第251条に規定するコンピュータ犯罪によって被告人が金銭，財産，サービスその他の対価を獲得しているときは，その有罪判決に基づき，裁判所は，被告人に対し，罰金刑を科す代わりに，当該犯罪行為の実行によって被告人が獲得した金額の2倍を超過しない範囲内で，金銭の弁償を命ずることができる。
この場合，裁判所は，犯罪行為によって被告人が獲得した利得の額を決定するための評決をすることができ，かつ，もし裁判記録中にその評決を支持するのに十分なだけの証拠が含まれていないときは，それを開始する前に聴聞を開くことができる。
本条においては，「利得」とは，財産，コンピュータ・サービス，または，その他の得られた利益の金銭的な総額もしくは価額を意味する。
第53章a第258条 犯罪等級の判断
１個の行為の計画もしくは遂行に従ってなされた第53章a第251条の違反行為に含まれる損害額は，それが同一人によってなされたのか複数人によってなされたのかを問わず， 犯罪等級の判断においては，合算することができる。
第53章a第259条 財産またはコンピュータ・サービスの価額
(a) 本条及び第52章第570条bにおいては，財産またはコンピュータ・サービスの価額は，次のとおりとする。
(1) 違反行為の時点における財産もしくはコンピュータ・サービスの市場価額，または，
(2) 財産またはコンピュータ・サービスが，第53章a第251条の違反行為の結果として，回復不可能な状態で毀損もしくは破壊された場合には，違反行為の時点における財産もしくはコンピュータ・システムの再構築費用額または交換費用額
(b) 財産もしくはコンピュータ・サービスの価額もしくはそれらに対する損害の価額を十分に確定できないときは，その価額は，250ドルと推定する。
(c) 本条の条項にかかわらず，秘密の個人データの価額は，1,500ドルと推定する。
第53章a第260条 犯罪行為の場所
(a) 第53章a第251条の違反を理由とする刑事訴追においては，当該行為が起きた町，または，違反行為に含まれるコンピュータ・システムもしくはその一部が所在した町において実行されたものと推定する。
(b) １以上の行為による第53章a第251条の違反を理由とする刑事訴追においては，当該行為中のいずれかがなされた町，または，違反行為に含まれるコンピュータ・システムもしくはその一部が存在した町において実行されたものと推定する。
第53章a第261条 裁判管轄権
第53章a第251条に規定する犯罪行為の遂行中に実行された行為がこの州内で起きた場合，または，第53章a第251条に違反してアクセスされたコンピュータ・システムもしくはその一部がこの州内に所在した場合には，当該犯罪行為は，この州内で起きたものと推定する。
General Statutes of Connecticut
Volume 13
Title 53a Penal Code
Chapter 952 Offense
Sec. 53a-250. DEFINITIONS
For the purposes of this part and section 52-570b:
(1) "Access" means to instruct, communicate with, store data in or retrieve data from a computer, computer system or computer network.
(2) "Computer" means a programmable, electronic device capable of accepting and processing data.
(3) "Computer network" means (A) a set of related devices connected to a computer by communications facilities, or (B) a complex of two or more computers, including related devices, connected by communications facilities.
(4) "Computer program" means a set of instructions, statements or related data that, in actual or modified form, is capable of causing a computer or computer system to perform specified functions.
(5) "Computer services" includes, but is not limited to, computer access, data processing and data storage.
(6) "Computer software" means one or more computer programs, existing in any form, or any associated operational procedures, manuals or other documentation.
(7) "Computer system" means a computer, its software, related equipment, communications facilities, if any, and includes computer networks.
(8) "Data" means information of any kind in any form, including computer software.
(9) "Person" means a natural person, corporation, trust, partnership, incorporated or unincorporated association and any other legal or governmental entity, including any state or municipal entity or public official.
(10) "Private personal data" means data concerning a natural person which a reasonable person would want to keep private and which is protectable under law.
(11) "Property" means anything of value, including data.
Sec. 53a-251. Computer crime
(a) Defined.
A person commits computer crime when he violates any of the provisions of this section.
(b) UNAUTHORIZED ACCESS TO A COMPUTER SYSTEM
(1) A person is guilty of the computer crime of unauthorized access to a computer system when, knowing that he is not authorized to do so, he accesses or causes to be accessed any computer system without authorization.
(2) It shall be an affirmative defense to a prosecution for unauthorized access to a computer system that: (A) The person reasonably believed that the owner of the computer system, or a person empowered to license access thereto, had authorized him to access; (B) the person reasonably believed that the owner of the computer system, or a person empowered to license access thereto, would have authorized him to access without payment of any consideration; or (C) the person reasonably could not have known that his access was unauthorized.
(c) THEFT OF COMPUTER SERVICES
A person is guilty of the computer crime of theft of computer services when he accesses or causes to be accessed or otherwise uses or causes to be used a computer system with the intent to obtain unauthorized computer services.
(d) INTERRUPTION OF COMPUTER SERVICES
A person is guilty of the computer crime of interruption of computer services when he, without authorization, intentionally or recklessly disrupts or degrades or causes the disruption or degradation of computer services or denies or causes the denial of computer services to an authorized user of a computer system.
(e) MISUSE OF COMPUTER SYSTEM INFORMATION
A person is guilty of the computer crime of misuse of computer system information when:
(1) As a result of his accessing or causing to be accessed a computer system, he intentionally makes or causes to be made an unauthorized display, use, disclosure or copy, in any form, of data residing in, communicated by or produced by a computer system; or
(2) he intentionally or recklessly and without authorization (A) alters, deletes, tampers with, damages, destroys or takes data intended for use by a computer system, whether residing within or external to a computer system, or (B) intercepts or adds data to data residing within a computer system; or
(3) he knowingly receives or retains data obtained in violation of subdivision (1) or (2) of this subsection; or
(4) he uses or discloses any data he knows or believes was obtained in violation of subdivision (1) or (2) of this subsection.
(f) DESTRUCTION OF COMPUTER EQUIPMENT
A person is guilty of the computer crime of destruction of computer equipment when he, without authorization, intentionally or recklessly tampers with, takes, transfers, conceals, alters, damages or destroys any equipment used in a computer system or intentionally or recklessly causes any of the foregoing to occur.
Sec. 53a-252. COMPUTER CRIME IN THE FIRST DEGREE: CLASS B FELONY
(a) A person is guilty of computer crime in the first degree when he commits computer crime as defined in §53a-251 and the damage to or the value of the property or computer services exceeds ten thousand dollars.
(b) Computer crime in the first degree is a class B felony.
Sec. 53a-253. COMPUTER CRIME IN THE SECOND DEGREE: CLASS C FELONY
(a) A person is guilty of computer crime in the second
degree when he commits computer crime as defined in §53a-251 and the damage to or the value of the property or computer services exceeds five thousand dollars.
(b) Computer crime in the second degree is a class C felony.
Sec. 53a-254. COMPUTER CRIME IN THE THIRD DEGREE: CLASS D FELONY
(a) A person is guilty of computer crime in the third degree when he commits computer crime as defined in §53a-251 and (1) the damage to or the value of the property or computer services exceeds one thousand dollars or (2) he recklessly engages in conduct which creates a risk of serious physical injury to another person.
(b) Computer crime in the third degree is a Class D felony.
Sec. 53a-255. COMPUTER CRIME IN THE FOURTH DEGREE: CLASS A MISDEMEANOR
(a) A person is guilty of computer crime in the fourth degree when he commits computer crime as defined in §53a-251 and the damage to or the value of the property or computer services exceeds five hundred dollars.
b) Computer crime in the fourth degree is a Class A misdemeanor.
Sec. 53a-256. COMPUTER CRIME IN THE FIFTH DEGREE: CLASS B MISDEMEANOR
(a) A person is guilty of computer crime in the fifth degree when he commits computer crime as defined in §53a-251 and the damage to or the value of the property or computer services, if any, is five hundred dollars or less.
(b) Computer crime in the fifth degree is a Class B misdemeanor.
Sec. 53a-257. ALTERNATIVE FINE BASED ON DEFENDANT'S GAIN
If a person has gained money, property or services or other consideration through the commission of any offense under §53a-251, upon conviction thereof the court, in lieu of imposing a fine, may sentence the defendant to pay an amount, fixed by the court, not to exceed double the amount of the defendant's gain from the commission of such offense.
In such case the court shall make a finding as to the amount of the defendant's gain from the offense and, if the record does not contain sufficient evidence to support such a finding, the court may conduct a hearing upon the issue.
For the purpose of this section, "gain" means the amount of money or the value of property or computer services or other consideration derived.
Sec. 53a-258. DETERMINATION OF DEGREE OF CRIME
Amounts included in violations of section 53a-251 committed pursuant to one scheme or course of conduct, whether from the same person or several persons, may be aggregated in determining the degree of the crime.
Sec. 53a-259. VALUE OF PROPERTY OR COMPUTER SERVICES
(a) For the purposes of this part and section 52-570b, the value of property or computer services shall be:
(1) The market value of the property or computer services at the time of the violation; or
(2) if the property or computer services are unrecoverable, damaged or destroyed as a result of a violation of section 53a-251, the cost of reproducing or replacing the property or computer services at the time of the violation.
(b) When the value of the property or computer services or damage thereto cannot be satisfactorily ascertained, the value shall be deemed to be two hundred fifty dollars.
(c) Notwithstanding the provisions of this section, the value of private personal data shall be deemed to be one thousand five hundred dollars.
Sec. 53a-260. Location of offense
(a) In any prosecution for a violation of section 53a-251 the offense shall be deemed to have been committed in the town in which the act occurred or in which the computer system or part thereof involved in the violation was located.
(b) In any prosecution for a violation of section 53a-251 based upon more than one act in violation thereof, the offense shall be deemed to have been committed in any of the towns in which any of the acts occurred or in which a computer system or part thereof involved in a violation was located.
Sec. 53a-261. JURISDICTION
If any act performed in furtherance of the offenses set out in section 53a-251 occurs in this state or if any computer system or part thereof accessed in violation of section 53a-251 is located in this state, the offense shall be deemed to have occurred in state.
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Last Modified : Jan/10/2002