5日目(2000年7月28日)

 

Perkins Coie LLP が入っているビル(中央)

Perkins Coie LLP は,サイバー法やコンピュータ法の領域では非常によく知られたファームの一つだ。シアトルだけではなく,ワシントンDCなど合衆国内の数カ所に事務所を持っている。
この建物は,シアトル市の中心部にあり,シアトル市内でも最もすばらしい高層建築物の一つだ。
同事務所のURLは,http://www.perkinscoie.com/だ。

Perkins Coie LLP が入っているビルの1階ロビー

重厚なイメージのロビーだ。アメリカの大規模ファームの多くは立派なビルの中にオフィスを持っていることが多いが,ここでは,特にそのような印象を受ける。しかし,エレベーターで昇って入ったオフィス内は明るく健康的なイメージの造りだった。

事務所のテラスから見たシアトル球場

事務所のテラスからは市内と港が一望でき,シアトル球場もよく見えた。
そのテラスに出ることができる会議室でAmazon.comの知的財産権担当重役であるJacobs氏及び同社の顧問弁護士と会談することができた。
Jacobs氏らとの質疑応答は,質疑応答というよりもフリートーキングに近い会談のようなものであり,内容も多岐にわたる結果となった。オフレコの部分はレポートできないが,それ以外の話題の中から記憶に残っているものをいくつか紹介する。
まず,ワン・クリック訴訟を提起したことについての背景事情や訴訟の維持が与えた影響についての話題には,日本のメディアなどではあまり紹介されていない事柄も多く含まれており,ビジネス方法特許とその権利保全のための訴訟というものを考える上で大きな参考となった。顧問弁護士は,Amazon.comがワン・クリック訴訟を提起したとたんに,マスコミからは「Star Warsにでてくるダースベイダーのようだ」と非難されてしまったと言って苦笑いしていたが,それと同時に,「『振り向いてみれば簡単』という諺があるように,ワン・クリック特許は,クレームを後に読んでみれば誰にでも思いつきそうなものかもしれないが,誰も特許申請していない時点で先行技術等を調査し,クレームにまとめることは簡単なことではない。この点を理解してほしい。」「もしAmazon.comが特許を取得していなければ,Amazon.comのような後発の小規模書籍販売業は,ネットを利用しているとは言っても確立された販路を持っているわけでもないし資本も大きいわけではなかったので,大手の書籍販売店につぶされてしまい,ビジネスとして成立しなかっただろう。この点も理解してほしい。」と強調していた。ちなみに,顧問弁護士の私的な見解によれば,Amazon.comが保有するアソシエイト特許は,プライスライン社の逆オークション特許と同じような意味で「ビジネスの方法」それ自体を特許化したものだからビジネス方法特許だということができるが,これに対し,ワン・クリック特許は,ネット上での書籍販売ビジネスを実行を支援するためのシステム技術特許ではあるがビジネス方法特許ではないという。ビジネス方法特許の概念を考える上で示唆するところの多い発言だった。
Amazon.comは,現在,11件のネット関連特許を保有している。現在のマイクロソフト社のように1日1件特許出願というわけにはいかないが,今後,できるだけ多くの特許申請をする予定のようだ。これは,かつて,IBMとマイクロソフト社との間のクロスライセンス契約において,当時マイクロソフト社が保有していた特許件数がIBMよりも大幅に少なかったため,結局,差額部分に関し多額の補償金を支払うこととなってしまったということを教訓にしているのだという。Amazon.comの特許戦略は,パテント・ポートフォリオの重視ということに尽きるが,あくまでも企業防衛のためのものであり,将来のクロスライセンスに備えるためのものだという。
また,Amazon.comのようなビジネスが既存の小規模書籍小売店の営業に与える影響に関するJacobs氏の見解も非常に興味深いものだった。話しを聞いていて,何とはなしに,映画「ユー・ガット・メール」を思い出してしまった。
なお,Amazon.comは,イギリス,フランス,ドイツなど海外にも拠点を拡張しつつあるが,今後は,更にインターナショナルなビジネスを推進する予定だとのことだ。
いずれにしても,ここでの会談は,今回のツアーの中でも最も楽しく,かつ,収穫多き時でもあった。

Small Business 関連のオフィス

同じビルの1階には,Small Business 関連のオフィスがある。「Introducing big deals for Small Business」と書いた旗がぶらさがっている。どんな業務をしているのか興味があったが,時間がなくてインタビューできなかった。今回のツアーとは関係がないとはいうものの,非常に残念。

港のレストラン

移動中に港のレストランでランチをとった。
ホワイト・ソースのクラムチャウダー,オイスターのチップ,ドリンクのセットで約6ドルだった。特にクラムチャウダーは非常においしかった。海に面したテラスのような場所で食事をしたのだが,そこでは,客が食べているチップのおこぼれを欲しがってウミネコが集まってくる。子供がチップを手で与えると,慣れているらしく,その手からチップをつついて食べている(写真上)。また,そこからは,港に出入りする観光船などもよく見えるし,すぐそばには消防艇が係留されていた(写真下)。

マイクロソフト社のエグゼクティブ・ブリーフィング・センター

マイクロソフト本社の敷地内には大きな建物がたくさんあり,広々とした芝生や運動場などもある。
本社のある地域全体が「キャンパス」と呼ばれている。たしかに,企業というよりは大学のキャンパスに近い雰囲気を持っている。敷地面積は,かなり広く,日本の相当大規模な大学でも保有していないだろうと思われるくらいの敷地面積がある。
写真の建物は,ブリーフィング専用の比較的新しい建物であり,その内部にはアートギャラリーもあり,研修等のための最新の施設・設備が完備している。建物内を写真撮影しようと思ったが,壁にかかっているリトグラフなどを含む芸術作品が写真に写ってしまうと「著作権上の問題がある」とのことで撮影禁止だった。
ブリーフィングの内容等に関しては,ツアー参加者とマイクロソフト社との間で事前に締結された秘密保持義務契約の効力により,公開できない。

マイクロソフト社の国旗掲揚台
(写真下:新坂氏提供)

データ・センターからのびる道路の入口左右には,対をなして2つの国旗掲揚台があり,それぞれ3本のポールが立っている。
道路に向かって左側の国旗掲揚台中央の星条旗の右側にはワシントン州の緑色の州旗,左側にはMicrosoft Windowsの旗がたなびいていた。(写真上)
我々は,道路に向かって右側の国旗掲揚台のところで記念撮影をした。ここには芝生が敷き詰められているが,ふかふかしている。ゴルフには向いていないようだ。(写真下)

マイクロソフト社のデータ・センター

データ・センターは,観光ルートの一つにもなっているらしい(ただし,内部に入るには,特別の許可が必要。)。
この建物内の見学を終えて記念撮影をした。左から1人目は執行役員である三ケ野原氏,2人目はマーケティング・マネージャーである森本氏。このお2人にマイクロソフト本社の施設等を案内していただいた。

 


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Last Modified : Aug/07/2000 (Rel.3)