2025530日 

 

3次元CGによる立体の表示

 

3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)で立体を表示する際には,さまざまな方法の中から適切な表現を持つ方法を選択する必要がある.

以下に画像生成の方法についての基本語句をあげる.

CGで基本となる語句の説明として文章を簡単に示し,またその表現方法によって得られた画像,さらに,それぞれの語句の詳細説明を示している.

 

1.  ワイヤフレーム:陰影計算をしないため高速に描画ができ,物体の形状を把握するのに用いられる.

 

ワイヤフレーム・モデル:CG作成でオブジェクトの作成時に使われる針金細工のような物体の形状モデルの総称。ただし、最終的な画像として残すことは意図的な場合を除いてあまりない。もっとも高速に画面表示ができるため、アニメーション作成時には動きのシミュレーションなどにも利用される。ひと昔前までのCGアニメーションでは、ワイヤフレームを使って顔や人体を作成し、CG独特のイメージを出していたものが多かった。

 

2.  フラットシェーディング:曲面では,平面への分割数が少ない場合,マッハバンド効果が発生する.

シェーディング:シェーディングとは「陰づけ」のことで、物体の面が照明されて反射する光のエネルギー、つまり面の輝度を決定する計算処理のことである。ポリゴンで表現されたモデルを単純にシェーディング計算するとポリゴンの境界で輝度の不連続が生じて目障りになる。これを解決するのはスムーズ・シェーディングと呼ばれる技法で、グーロー・シェーディングとフォン・シェーディングがある。これらのシェーディングはほとんどの3Dグラフィックス・ソフトで使われている。

 

3.  フォン・シェーディング:多面体の各面の法線ベクトルを補間してシェーディングを行う手法である.

フォン・シェーディング:フォン・シェーディングにはシェーディングモデルとしてのフォン・シェーディングとスムーズ・シェーディングとしてのフォン・シェーディングがある。シェーディングモデルとしてのフォン・シェーディングは、光源からの光が反射するスペキュラ成分と物体に光があたったときの散乱光であるデフューズ成分を取り入れ、グーロー・シェーディングに比べてより正確に物体の描写ができる技術の名称である。スムーズ・シェーディングとしてのフォン・シェーディングではポリゴンの内部の画素の輝度を計算する場合に、画素に対応するポリゴン上の点の法線を頂点の法線ベクトルから内挿補間して求め、画素ごとにシェーディング計算を行う技術の総称である。つまり、補間するのは輝度ではなく法線であるスムーズ・シェーディングをフォン・シェーディングと呼び、どちらも高品質の画像生成のために必須の方法であり、現在もっとも多用されているシェーディングの1つである。

 

4.  レイ・トレーシング:アルゴリズムは簡単だが,反射・透過・屈折など光の複雑な現象の表現ができる.

レイ・トレーシング法(光線追跡法):物体にあたる光を視点のほうから逆にたどり、そこでぶつかる物体を描いていく手法の総称。物体の反射や屈折、陰影などが再現されるため、きわめてリアルな画像を作り出すシェーディング技法も兼ね備えている。表面の反射、透明度、屈折率なども表現でき、透明なコップを通した背景の画像なども表現でき、きわめて有効なシェーディング技法である。すべての画素について11つ計算するため、レンダリングに膨大な時間がかかるのが欠点である。しかし、華麗で鮮やかなレンダリングであるため、もっとも人気の高いアルゴリズムでもある。オブジェクトの数も多く、縦横1000ピクセルを超える大きな画像をパソコンでレンダリングしようと思えば、レンダリングの精度やパソコン本体のCPUの処理能力、アクセラレータの有無にもよるが、一昼夜を越えることもざらである。

 

レンダリング:3D-CGで完成イメージを生成するための計算方法の総称。オブジェクト空間にある3Dモデルをスクリーン空間に投影して描画する方法は、ベクタ・グラフィックスとラスタ・グラフィックスの2種類に大きく分けることができる。ベクタ・グラフィックスは線画のことで、複雑な形状をもっていてもデータが大きくならないため、リアル・タイムなアニメーションの動きに向いている。ラスタ・グラフィックスはいわゆる面画のことで、見えない面を処理する隠面消去を特徴とする。レンダリングの種類にはZ-バッファ法、スキャン・ライン法、レイ・トレーシングなどがあり、面輝度を特徴とするレンダリングにはラジオシティがある。これらのレンダリングはそれぞれ一長一短があるので状況に応じた使い分けが必要である。3Dグラフィックス・ソフトでは形状のモデリングを行い、光源の設定、表面や材質の設定、カメラ(視点)の設定を終えたら、あとはプログラムが自動的にレンダリングを行うのが一般的である。

 

5.  ラジオシティ:間接光をも含む光の相互反射を考慮した手法で,カラーブリーディングが見える.

 

ラジオシティ:レイ・トレーシングでは光がどのように物体に反射(または透過)しているかを追うことはできるが、物体相互の拡散反射した光や拡散透過した光(拡散相互反射)を追うことはできない。ラジオシティはこれを解決するために開発された面輝度を求める技法の名称で、光の拡散相互反射を、熱力学を応用して計算することにより、柔らかな現実感あふれる環境光のレンダリングを可能にした。屋外や室内のライティング・デザインのシミュレーションには最適な技法である。しかし、すべての物体が拡散相互反射をしているわけではなく、レイ・トレーシングが得意とするような鏡面反射する物体を表現できないという欠点もある。

 

コンピュータモニタは平面であるが,CGでは光の反射や影,立体面の構成,表面の質感などをうまく利用し,立体を表現している.


加藤晋のページへ| ICTメディア編集1 | CGの描画方法