すべての立場において、@よりAの嗜好度が低くなったことからキャンパス内にネコ(以下、ネコはすべてキャンパス内のネコを示す)に対して、すべての立場の人が何らかの理由で嫌いになっていると考えられる。また、将来のネコのあり方については、F、Gの全体と立場別によるポイントに大きな差が見られないことより、キャンパス全体でほぼ意見が一致していると考えられる。それは現状で多くの人がネコの数が少し多いと感じていて、今後何らかの理由で少し減って欲しいと思っているということである。
その何らかの理由のひとつにIの回答が考えられる。Iでの回答が少し減ってほしいと考える理由の一つであるのは間違いなさそうである。Hは良いと思ったことがあると答えた人62.5%のうち大半の人が癒し・和みという心理的な影響を受けているのに対して、Iの悪いと思ったことがあると答えた人60%は、糞・尿などの衛生的な問題や校舎・農場に侵入するという空間利用的な問題などのさまざまな実質的な被害を受けていることが示された。
そして、その心理的な影響より実質的な被害に重きをおいているために、Gの少し減って欲しいという結果が得られたと考えられる。また、良いことで癒し・和みというほぼ単一の回答が得られたことに対して、悪いことでさまざまな回答が得られたことは、悪いことは一部の人にしか認識されず、そのさまざまな回答のひとつひとつがキャンパス共通の認識として理解されにくい危険性をはらんでいる。例えば、ネコが農場に侵入し、荒らされ、そこで行っていた実験が台無しになることは理工学部の学生には認識しにくいことなどである。
Bについて、農学部学生、職員及びその他の方が高いポイントを示したこと、およびCにおいて、農学部学生、職員及びその他の方が比較的多く餌を与えていることから、主に農学部学生、職員及びその他の方は話題作りの為に餌を与えているか、餌を与えていることが話題につながっている可能性がある。
また、理工学部校舎より農学部校舎の方にネコの認知度が高かったこともそれに関係していると考えられる。そして、D、Eで農学部学生と職員及びその他の方で傾向の違いがみられた。
農学部学生と比較して、職員及びその他の方の方が一人あたりの与えた餌の回数が多いこと、そしてキャットフードが多いことから、農学部学生は、比較的突発的に手元にある残飯やお菓子を与え、職員及びその他の方は比較的計画的に用意してあるキャットフードを与えていることが考えられる。
しかしながら、教職員及びその他の方より農学部学生の人数の方が圧倒的に多く、ネコに餌を与える量は全体としてはどちらが多いということを示すわけではないという点に注意しておきたい。
農学部学生および職員とその他の方が深く関係していると考えられる場所に分布調査よりネコが多く生息していたことから、人がネコに餌を与えることがネコの安定的な生息、ひいてはネコの増加に大きく寄与している可能性があると考えられる。ネコ(動物すべてに言えることであるが)に餌を与えることが癒し・和みにつながることは理解できる。しかしそれは、ネコの増加そして、実質的な被害の拡大につながり、大学の学問を学ぶ、研究を行うという目的に大きな障害が発生し、結果としてネコの処分につながってしまうと思われる。
キャンパス内のネコのあり方について著者らの意見を述べさせていただきます。あくまで、著者らの意見であり研究室としての意見ではないことと、この意見が正解というものではなくひとつの意見として述べさせていただくという2点に注意していただきたい。 ネコのためや自己満足(ここでは癒し・和みを指す)のために餌を与えることは、結果としてネコおよびキャンパス利用者を不幸にすると考えられる。また、動物愛護法・第五章・第二十七条・第二項に「愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行ったものは三十万円以下の罰金に処する」と記されていることを考慮すると、餌を定期的あるいは多い回数で与えている人はこれまでと同量のえさを与えつづけ、一方で餌を与えたことのない人はむやみに餌を与えないことが、今後、ネコの増加を防ぐためにキャンパス利用者が餌を与えることに関しての落としどころと考える。