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応植研ニュース Vol.14 No.1
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2009年7月17日発行
〒214-8571 川崎市多摩区東三田1-1-1
明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室
編集 倉本宣・北嶋裕一
URL http://www.isc.meiji.ac.jp
/~seitai

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■3年生、研究でやりたいこと
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【安東 聡一郎】 
現在、全国各地の河原などで、多くの外来植物が侵入してきてお
り、河原固有の在来種の衰退を引き起こしています。また、生態系
等に係る被害を及ぼすあるいは及ぼす可能性がある外来生物を特定
外来生物としています。その中でも対策緊急度の最も高いAラン
クに指定されているオオブタクサについて私は調べたいと思ってい
ます。オオブタクサは輸入大豆種子に混入して非意図的に持ち込ま
れたとされています。オオブタクサは永続的シードバンクを形成す
るため、個体群を抑制・根絶するのは難しいことです。それをふ
まえて、オオブタクサ除去にかかわることとして、ブタクサとブタ
クサハムシとの関係を調べ、多摩川におけるオオブタクサ等の外来
植物の植生調査など、具体的にこれから卒論テーマを決めていきた
いです。

【岩本 奈々子】
私が卒業研究でやりたいと現在考えているのは、人の植生管理と
カヤネズミの生息地の関係です。カヤネズミは、なるべく刈り取り
が行われずススキやオギの優占する休耕田や、ヨシの優占する河川
敷を選択的に営巣に利用するとされています。しかし、カヤネズミ
の住む背丈120cm以上のススキ草原は、すっきりした景観を保
ちたいと思う地域住民にとっては、刈り取りの対象になります。ま
た、ススキやオギの草原を放置すると、セイタカアワダチソウやア
レチウリなどの植物が侵入し、あっという間にススキやオギの草原
がなくなってしまうことがあります。更に、里山の手入れ不足によ
る里山の樹林化もカヤネズミにとっては営巣場所の減少につながり
ます。そこで、カヤネズミが生息でき、里山に生活する人や、他の
動植物が共存していける2次草原の管理方法を研究していきたいと
思っています。


【落合 はるな】
3年の落合です。小さな頃から生き物が好きで、中学生になって
からは特に鳥の観察が趣味になり、色々な場所に鳥を見に行くよう
になりました。特に伊豆諸島や小笠原列島、琉球列島などに出かけ
て、島固有の生き物を始め、日常とかけ離れた環境にとても大きな
印象を受けました。応植に入り、卒論研究では伊豆諸島をフィール
ドとして、島嶼の植物について、本州の植物との形態的な違いや
、保全の基礎資料になるような研究を行いたいと思っています。今
月はその第一歩として、伊豆大島で植物の葉を採集し、葉の厚さや
面積を計測したいと思っています。島の植物は本州と比較して一
般的に葉が大きく厚いと言われていますが、島の全ての植物がそう
なのか、もしかして本州よりも葉が小さい植物があったら面白いと
思っています。調査で解かった事を活かして、研究テーマをより具
体的に詰めていく予定です。まだまだ勉強不足ですが、これからよ
ろしくお願い致します。


【小谷 光】
私は以下の研究をしようかと考えています。
1.黒川の明治大学新農場予定地において自動撮影カメラをしか
けて、写真をとり、そのデータをもとに野生哺乳類の動物相を把握
する。
2.自動撮影装置(赤外線センサーにより動いたものに反応し自
動的にシャッターがおりるカメラ)による調査から、生息が確認さ
れた野生哺乳類の種に対する意識、嗜好性などについて、周辺地域
の農家や市民にアンケートによる聞き取り調査を行う。
また、余裕があればかつての農家の野生哺乳類に対する態度につい
て聞き取り調査をし、昔の黒川における農家と野生哺乳類との関わ
りを調べ、2の現在の周辺地域住民に対しての調査結果との比較を
したいと考えています。


【小林 大悟】
私は、水辺という環境が作り出す生態系に関心を持っていて、特
に水田の生態系に強い関心を持っています。水田という環境は、た
だ単に自然が多いから生物種も多様というわけではなく、人間活動
も多様な環境を作り出すことにひと役かっていて、生息できる生物
種を増やしているという点がとても興味深いです。それはつまり人
間と自然が共存できている場だからです。しかし近年になって、稲
作の方法の変化や里山の放棄などが進みこれまでは当たり前に見ら
れた生物が姿を消しています。この状況を私は何とかしたいです。
これまで人間と生物がうまく共存してきた水田地帯の環境からはも
っと学ぶべき事があるような気がします。卒業論文のテーマに関し
ては、日本で急速に数を増やしつつある外来種の水草をテーマにし
ようと思っています。具体的な種まではまだ絞れていませんが、色
々な文献を読み、考えをまとめて、近いうちに決めるつもりです。


【田村 成実】      
私は生まれてから今まで大学のある多摩丘陵の北側にある狭山丘
陵に住んできました。とくに狭山丘陵の中でもトトロの住む森のモ
デルとなった「八国山」に近い場所です。八国山も含め、私の住む
土地は緑豊かです。ですが、これまで研究室に入るまで身近な緑や
里山とはほとんど関わってきませんでした。そこで、もともとカメ
が好きだったこともあり、私は、狭山丘陵に棲むカメの種組成、性
比、齢構成などについて研究したいと思っています。まだまだ勉強
不足で、カメを捕まえたことすらないので早くカメを捕まえたいと
思っています。自分の研究で、少しでも生まれ育った土地のことや
大好きなカメのことがわかれば素晴らしい経験になるように思いま
す。


【徳永 元】
初めまして,徳永元です。生態学を勉強したくこの研究室を希望
しました。研究は,今年3月にありました卒論発表でチョウと植生
に関しての研究に最も興味を惹かれ、昆虫をテーマに何かやりたい
とそのときに思いました。それからまずはチョウとトンボについて
の本や論文を読んでいきました。最近はセミについて主に調べてい
ます。また先日カワラバッタなどはどうかというアドバイスを頂き
ましたのでそれについても調べていきたいと思っています。このよ
うに具体的な方向性はまだ持っておらず手探り状態ですので、いろ
いろなものを読んで決めていくつもりです。


【林 恒至】
今の現在の自分の卒論のビジョンは、生態系は、人に影響を受け
たらどのような反応が起きるのかを調べたいので、地元に流れてい
鶴見川の河原を調査地にし、優占している植物群落に分けて、刈り
取りをし、どのような埋土種子があるかを調べようと考えておりま
す。しかし、鶴見川は、小さい川でちょっとした雨などで攪乱を起
こしていますが、上流が三面のコンクリート張りになっていますの
で調査する河原では希少な種がある確率は低くなると考えられるの
で、もしかしたら、多摩川で調査するかもしれません。他には、鶴
見川と多摩川で、同じヨシ群落を刈り取りし、埋土種子の違いを調
査するのもいいかなと考えております。まだ、おぼろげながらのビ
ジョンしかできていないので、先生と話し合ってしっかりとしたビ
ジョンを作りたいです。

■ 先生から
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リトルターン・プロジェクトの顧問の会議があり、森ケ崎水再生
センターに行ってきました。増田直也さんの案内で、樋口広芳先生
と加藤幸子さんと一緒でした。
リトルターン=コアジサシは、砂礫地に営巣します。今年度の緑地
学概論の授業(1年生対象)では、植物に覆われていない自然の価
値を話して、1年生が感動してくれました。でも、実は、背の低い
草原にはヒバリが営巣し、チガヤの草原にはセッカが、背の高いヨ
シ原にはオオヨシキリが営巣するのです。東京湾にコアジサシの営
巣地のネットワークを作りたい、そして砂礫地だけではなく草原も
あるようなまとまった自然地としてつくっていきたいと、4人で話
していて強く感じました。
今日の緑地学概論では、草原の大事さについて話しました。砂礫
地だけが大事だと1年生が思い込まないでほしいと思って話したの
ですが、うまく伝わったかはしばらくしたら確かめてみたいと思っ
ています。
【倉本 宣】


■ お知らせ
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10月24日午後に大学院特別講義で兵庫県立大学の服部保先生
に講演していただきます。植栽のあり方について論じていただきま
すが、里山、照葉樹林など幅広くユニークな研究をされている先生
ですので、興味のある方は聴講してください。問い合わせは倉本ま
で。
【倉本 宣】

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kuramoto noboru