∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵          応植研ニュース Vol.13 No.2 ∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵ 2008年10月21日発行 〒214-8571 川崎市多摩区東三田1-1-1 明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室     編集 倉本宣・芦澤和也・中村光一朗・北嶋裕一 URL http://www.isc.meiji.ac.jp/~seitai _/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄_/ ̄ 今回のコンテンツ ・3年生プレ卒論について ・ひらめき☆ときめきサイエンスの報告 ・Baskinご夫妻による種子発芽についてのセミナーの報告 ・セミナーのお知らせ 3年生プレ卒論について 3年生の指導方法を改善しました 3年生が研究室に入ってきたとき、彼らは期待に満ちていると思 われます。これまで、その期待に対して十分に応えていたかを反省 してみたところ、頭の中の活動が多すぎたという結論に至りました 。そこで、プレ卒論という企画を立てました。プレ卒論は指導教員 と相談しながら比較的簡単にやることを決めて、考えることより身 体を動かしてデータを取ることに重点を置いています。  3年生は前期の間、プレ卒論の研究を行いました。今回は、プレ 卒論をやってみてどうだったかを特集します。(倉本 宣) 3年生プレ卒論の概要 伊藤邦泰 「復元された環境における初期の構想と現状」 ヒアリング調査をした全5カ所の公園はどこも初期の環境は維持で きておらず、4カ所は水辺環境の保全を考え、復元活動をしていた。 内容としては、再放流や、外来種駆除であり、再放流に関しては同 系列の水系や公園付近の水辺から採集してきた生物を導入する例が 見受けられた。しかし再放流に関して、生物を導入するにあたり地 域集団の遺伝的攪乱を防ぐため、より厳密な基準を設ける必要があ ると考えられる。 北嶋裕一 私は「管理手法の異なる水田における土壌シードバンクの種組成の 違い」というテーマで、耕作水田と水張り水田において埋土種子の 発芽実験を行いました。耕作水田では24種、水張り水田では19種が 確認されました。イネ科・カヤツリグサ科個体の種の同定は難しく 、行うことができませんでした。今後はこれらの個体の同定が課題 となります。また、埋土種子は種により空間的な分布の仕方が異な ることがわかりました。 小泉恵佑 私はプレ研究として今年の6月~7月の間、黒川の水張り水田で野外 発芽実験を行いました。実験区ごとに光環境を変えたところ、遮光 率が高い実験区(62.4%、84.8%)で環境省レッドデータブックの絶滅 危惧U類(VU)に指定されているシャジクモを数個体確認することが できました。計画→調査→結果集計→考察の一連の流れを組んで、 実際に研究を行う事は初めてだったのでとても苦労しましたが、ま さか自分の実験区の中に絶滅危惧種が出現するとは思ってもみなか ったのでとても驚いています。 佐々木太毅 実験のテーマはコアジサシの営巣地への誘致におけるデコイの効果 の検証です。今回の実験では営巣地に飛来するコアジサシの数が少 なかったため、十分なデータが得られず効果の検証は出来ませんで した。今回の実験ではコアジサシが飛来しないだけでなく、実験方 法などにも様々な問題がありました。本卒論ではそういった問題が ないように、内容をしっかりと検討して行いたいと思います。 清水冬音 私は、雑木林の歴史をテーマに、多摩丘陵の黒川農場予定地におい て、ホオノキを一本切り出し、年輪からその木の樹齢を読み、雑木 林の年齢を推定、また、ホオノキの分布特性についても調べました 。しかし、一本だけでは詳しい情報は得られなかったので、卒業論 文ではサンプルを増やし、昔の地図を見たり、その土地を知る人の お話も聞くなどして、その土地と人々の関わり方なども交えながら さらに詳しく調べたいと思います。 杉山智美 葛西臨海公園鳥類園内の上の池(淡水池)と下の池(汽水池)にお いて、2か月間鳥類相と環境の選択性について調査を行った。上の 池では6種、下の池では14種の鳥類が確認された。カルガモはど ちらの池でも数多く観察され、優占度は5割を占めた。カワウ、カ イツブリは水深のある上の池で主に見られ、潮の干満によって水面 、湿地、干潟と多様な環境が出現する下の池ではシギ・チドリ類が 見られた。サギ類は水上でよく観察され、シギ・チドリは干潟をお もな活動場所にしており、体のサイズによる採食方法の違いで、種 ごとに観察される環境に差が見られた。今回の調査の問題点として は、潮の干満にあわせて調査を行ったほうが正確な結果が得られた 可能性があることと、調査期間中に池の一部でヨシ刈りが行われ繁 茂状態が変わったことで、出現種に影響があった可能性も挙げられ る。さらに、行動を細かく記録していれば、採食行動の違いなどの 詳細な結果が得られたと思われる。 寺村彬 僕のプレ卒論のテーマは「丸石河原と砂地におけるカワラノギクの 種子発芽率及び実生出現率の比較」です。カワラノギクは大型草本 の少ない丸石河原に生えるので、丸石がある場所の方が実生が多い と予想していたが、結果は砂地の方が多く、その砂地の周りに大型 草本があまりなかったことから、光条件が良好なら丸石河原でなく ても発芽出来るという事がわかりました。しかし、光量や土壌の水 分含有量などの細かいところを調べられなかったので、卒論ではそ ういう事もやってみたいです。 横山悠人 私は、プレ卒論で踏圧による畑地雑草の植生の変化について約2ヶ 月にわたって調査しました。結果、踏圧の強度にかかわらず優占す る種、踏圧の強度が大きいほど優先する種、踏圧の強度が小さいほ ど優先する種など種ごとに踏圧のかかる環境で様々な成長戦略を取 っていました。このように空間的な植生の変化はわかりました。し かし、調査期間が短かったので季節的な植生の変化はわかりません でした。 渡辺幸太 テーマは『都立光が丘公園における鳥類の植生の相観および階層の 選好性』です。都立光が丘公園に生息するシジュウカラ、メジロ、 ヒヨドリ、キジバトが好む林内の環境を調査しました。今回の調査 で、シジュウカラは落葉、常緑樹林の低木層〜高木層、メジロは常 緑樹林の高木層、ヒヨドリは落葉樹林の高木層を主に利用し、3種 とも低木層の植被率が比較的高い樹林を好む傾向が明らかになりま したが、キジバトに関しては得られたデータの不確かさ等により、 キジバトが選好する環境の傾向を明らかにすることはできませんで した。 ひらめき☆ときめきサイエンスの報告  夏休みも残りわずかとなった8月22日に科研費の研究成果の社会還 元を目的とした「ひらめき☆ときめきサイエンス」を実施しました。 「石ころの自然と生きもの」をテーマとし、周囲の生態系と大きく 異なっている礫河原の生態系を生きものや小石に実際に触れて理解 してもらうことを目的としました。小学生5,6年生10名とその保護者 が参加し、午前中は日野市石田の多摩川で小石やカワラバッタを探 し、カワラノギクの解説や河原の植生の調査を行いました。午後は 河川敷にてみんなでお弁当を食べ、バスで明治大学生田キャンパス に移動し、客員研究員の岡田さんがニュージーランドの河原につい て講演をしました。最後に小学生全員に「未来博士号」を授与しま した。小学生は最後まで興味を持って参加してくれました。私たち 学生はお兄さん、お姉さん感覚で一緒に楽しく勉強することができ ました。(長尾圭祐) Baskin博士ご夫妻による種子発芽セミナーの報告 8月25日の午後,発芽生態学の第一人者であるJerry M. Baskin、Carol C.Baskinのご夫妻による種子発芽の生態に関するセミナーを駿河台校 舎リバティタワーにて実施しました。両先生には「Relationships between seed dormancy and the seed bank」というテーマでお話して いただき、およそ30名の方にご参加いただきました。個体内における 発芽特性の変異の問題や発芽における菌類の影響などについて活発な 議論が繰り広げられました。 発芽について勉強になっただけでなく、研究関連の英会話能力の向上 のためにもよい経験になりました。また、私がユキヤナギの種子発芽 特性について研究を行っているという話をJerryさんにしたところ、 興味をもって聞いていただき、有益なアドバイスをいただきました。 Jerryさん、Carolさんどうもありがとうございました。(芦澤和也) セミナーのお知らせ 10月28日(火)18時〜19時 講演者 竹内智子 先生(東京都庁) 場所 生田校舎農学部2号館3階 2-300教室 テーマ 東京の緑地計画 -これまでの歴史と最新の動向- 10月31日(金)14:40〜  講演者 中川重年 先生(京都学園大学バイオ環境学部) 場所 生田校舎 中央校舎4階0406教室 里山管理のスペシャリストの視点から,麻生区黒川の農場予定地の里 山について解説していただく予定です。 皆様の参加をお待ちしております。 参加希望の方は、kura@isc.meiji.ac.jpまでご連絡ください。