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  =============  応植研ニュースVol.10  No.6  =============
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                     2005年11月10日発行

           〒214-8571 川崎市多摩区東三田1-1-1
         明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室

             編集 倉本宣・阿南一穂・菊地哲理
          URL http://www.isc.meiji.ac.jp/~seitai



【10年めを迎えた応用植物生態学研究室】

 1996年に応用植物生態学研究室が設立され、今年度で10期めの学
生までそろいました。明治大学の教員の定年は70歳で、私は1955年
6月生まれですから、今の制度が続けば2026年3月まで勤務できる
計算になります。最後の年は学生を取れないので、29代の卒業生が
生まれることになりますね。 今年は1/3が過ぎたところですから、
このあたりで OB/OG会をゆるやかな形で作ってもらえないかと思っ
ています。

 研究室の名前は主要学科目の名前を取ることになっていますが、
応用植物生態学という科目はもうありません。私の主要学科目は植
物保全生態学です。研究室の名前は、いつか「応植」から「植保」
になっているかもしれませんね。


 研究室における研究の歴史も10年分そろっているわけですが、絶
滅危惧種ないしははびこっている種の種生態が中心になってきまし
た。もちろんそれだけではなく、小薗井さん、稲見(竹林)さん、
永井さん、大塚さん、横山さんのように、自然にかかわる人間のこ
とを調べた学生もいました。種生態の研究を柱にしているのは、み
なさんと私がもっている生きもの調査の力量による制約が大きいか
らです。また、ひとりひとりの学生が自分の責任の下で、研究の企
画から発表までの一連のプロセスを体験することの意義を感じてい
るからでもあります。そして、わが国のような人手の入った自然が
広がっている国では、種生態の研究と自然にかかわる人間の研究の
両方ができてこそ、野生の生きものの保全ができるのではないかと
考えて研究を進めてきました。

 ただし、近年のように大規模な研究が一般的に行われるようにな
ると、個人研究では限界があることも事実です。現在、明治大学で
は農場用地を川崎市麻生区黒川に取得し、農場の建設を準備してい
ます。黒川は農場予定地、その周囲の農業振興地域、その北側の都
市再生機構の区画整理による新興住宅地、その北西の多摩ニュータ
ウンという対照的な地域のなかに位置しています。しかも、黒川は
川崎市の緑の3大拠点に位置づけられてもいます。そこで、2005年
度から黒川をフィールドにした総合研究を実施しています。2005年
度から3年間は「都市近郊の農場とその周辺の里山をフィールドに
した保全教育の展開」という科学研究費の研究を行っています。黒
川で研究の一部または全部を行っている(予定を含む)のは、倉本、
園田くん、古賀さん、戸金くん、持田さん、粕谷さん、坂田くん、
目次くん、鈴木くん、羽鳥さん、小林さんです。これまでも学内の
総合研究を行ったことはありますが、それは研究成果を束ねただけ
でお互いの関係をつけたりはしませんでした。これからは学生の負
担にならない程度に、少しだけ関連付けてやっていこうと思ってい
ます。

 2005年度は2年目の生田地区担当副学生部長、1年目の緑化工学会
編集委員長です。2006年度は研究に専念したいものです(明治大学
で緑化工学会の大会がありますが)。そして、これまでよりももっ
とおもしろいパラダイムを拓いてみたいと思っています。

                                                    倉本 宣


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【三宅島3年ゼミ合宿】

 10月14日(金)から16日(日)にかけて、倉本先生と研究室の3年生
8名で三宅島へゼミ合宿に行きました。火山ガスの影響で飛行機が
運航していないため、14日22時半東京港発15日5時三宅島着の船で
出発、同日は旅館に1泊し、翌16日14時半三宅島発20時東京港着の
船で帰ってくるというプランしか立てられませんでした。

 船を予約する時点で2等船室が満席だったため、やむなく1等船
室(片道1万3千円)を予約しましたが、乗船直前の竹芝客船ターミ
ナルで2等船室に空席があることが分かり、多数決で学生は2等船
室のチケットを購入することになりました。そのため乗船手続にて
こずり、あわや乗船できなくなりそうになるというハプニングが発
生しましたが、乗船後はみんなでビールを飲んで眠りにつきました。
そして船に揺られること7時間、まだ暗い三宅島に到着しました。

 研究室初代卒業生の篠木さんと旅館の方が港まで迎えに来てくだ
さっていたので、篠木さんの車と旅館のワゴンに分乗し、仮眠を取
るために旅館に向かいました。仮眠と朝食を済ませたあと、篠木さ
んの勤める日本野鳥の会アカコッコ館に移動し、合宿の予定や三宅
島について説明を受けました。そして午前中はアカコッコ館周辺と
大路池(たいろいけ)を散策し、野鳥を観察しました。ここではシチ
トウメジロやオーストンヤマガラ、ミヤケコゲラなど、本州のもの
とは形態的に若干異なる野鳥が見られました。アカコッコ館の名前
にもなっているアカコッコにも出会うことができたのは嬉しかった
です。

 昼食を済ませた後、御祭神社周辺の原生林にカラスバトを見に行
きました。ここでは小林さんが篠木さんより上手にハトと交信して
いましたが、結局姿を現すことはありませんでした。その後、神着
(かみつき)地区でくさやを生産しているところや、2000年噴火の泥
流で鳥居の上の方まで埋まってしまった椎取(しいとり)神社を見て
回りました。旅館で食べきれないほどたくさんの夕食を食べた後、
アカコッコ館へ再び移動し、3年生の卒論研究について3時間ほど
ゼミをやりました。いつもと違った発表で、みんなが何をやりたい
のか分かったことに加え、普段のゼミとは視点の違う意見があった
ので、とても参考になりました。ゼミ後は旅館に戻って1時ぐらい
までみんなで話し、お酒とともに先生の面白い話が聞けたので楽し
かったです。この日はみんなの距離が近くなったように感じました。

 最終日は火山ガスによる息苦しさで目覚めましたが、どうやら苦
しかったのは喘息持ちの私だけで、ほかの人たちは元気でした。こ
の日は新鼻(にっぱな)新山、長太郎池などの景勝地や、1983年噴火
の溶岩流で半分埋まった旧阿古(あこ)小学校とその周辺の集落跡を
見て回りました。この日も、火山が作る独特の景色を堪能し、自然
のちからの偉大さを感じました。

 そして三宅島に別れを告げるときがやってきました。が、この日
は台風20号の影響で海が荒れていたため、船が接岸できない場合は
乗客を乗せずに東京へ向かう条件付出港となり、ここにきて乗船で
きない可能性が出てきました。この船に乗れなければあと3日は東
京に帰れません。もしもという不安が頭をよぎりましたが、多くの
人たちが見守る中、大型客船は無事接岸し、何とか東京へ帰ってく
ることができました。

 ハプニング続出でひやひやしつつ、最初から最後まで自然の影響
を受け、その偉大さを実感させられたゼミ合宿でした。滞在時間こ
そ短かったものの、中身の充実したいい合宿だったと思います。最
後に、今回のゼミ合宿を支えてくださった篠木さん、日本野鳥の会
アカコッコ館の皆様、新鼻荘の皆様、本当にありがとうございまし
た。

                                          3年  菊地 哲理


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【11月の本棚】

・上田信(2002)「トラが語る中国史」山川出版社 ヒストリア005

   昨年度からいっしょに副学生部長をしている文学部の高田先
  生に中国の里山のことを勉強したいといったら、教えてくださ
  った本です。
   動植物と人との関係を扱う歴史であるエコロジカル・ヒスト
  リーの研究例として、絶滅危機にあるアモイトラを扱って、中
  国の環境の変化を論じています。風水思想のおかげで尾根の林
  が残されてそこにトラが生息したことや、雑木林がもうほとん
  どないことがよくわかりました。
   おもしろかったので3年生の授業で紹介してしまいました。


・大住克博・杉田久志・池田重人編(2005)
 「森の生態史―北上山地の景観とその成り立ち―」古今書院

   この本は4部に分かれています。
  第I部  先史時代のできごとが景観の基盤をつくる
  第II部 人の撹乱により森林と草地が複合した景観ができる
  第III部 人が森林を利用し管理する
  第IV部 人の社会の変化が森林を変える

   私がいちばんおもしろいと思ったのは、第IV部の、近代にお
  ける森林利用の変容です。主食として木の実を食べることが書
  かれていました。
   黒川でもこのような研究の体系化を目指しています。できれ
  ば、もう少し人間よりの研究にしたいのですが。


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【今後の予定】

11月19日   OB会

11月18?20日 生明祭(倉本は全期間会場にいます)
       (A-310で研究室の展示があります)

11月26日   生田緑地雑木林勉強会 茅ヶ崎公園生態園
       ゼミに来てくださっている亀田さやかさんの
       管理している生態園を見学します。

12月?    修士論文の読み合わせ

12月5日   卒論中間発表会

12月10日   学芸大主催のシンポジウム 倉本講演 
       ?雑木林と市民のかかわり?

12月13日   永野正弘さんに修士論文を見ていただく日


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応用植物生態学研究室 新聞係