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  ============  応植研ニュースVol.10  No.4  ==============
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                   2005年8月4日発行

         明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室

             編集 倉本宣・阿南一穂・菊地哲理
          URL http://www.isc.meiji.ac.jp/~seitai

【高山市に行ってきてもらいました】
                          倉本 宣

 私はなるべく学生に指示しないようにしています。それは、学生
の持っている力を引き出すのが教員の仕事だからです。学生の思い
に共感したり、学生の成果に感動したりしながら、学生がやりたい
ことを実現する手助けをすることこそが私の仕事なのです。

 生田緑地でゲンジボタルに対する照明の影響を調べている4年生
の今井さんから、調べたいことが十分に調べられないうちにゲンジ
ボタルの発生が終わってしまったという話を聞きました。今井さん
はとってもがんばって調査をしていました。川崎市から委嘱を受け
て、ホタルを守るためのパトロールもしました。そこで、日本中ど
こでもいいからまだゲンジボタルを観察できるところがあったら、
調査に行ってもいいよ!と、言うことにしました。

 今井さんは高山市役所と連絡を取って、岐阜県高山市一ノ宮に調
査に行くことにしました。3人の4年生が同行しました。今回はこ
の4人の報告を掲載します。


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【岐阜ゲンジボタル調査】
                    4年  今井 茉耶子

 7月15日?20日にかけて、岐阜県高山市まで念願のゲンジボタル
調査に行ってきました。

 本当に調査に行こうと決めてから3日後に出発という強行スケジ
ュールの中、調査に行くことを承諾して頂いた先生、調査に参加し
てくれ、岐阜にいる間いろいろと相談にのってくれた4年芦澤君、
4年横山君、4年持田さんには本当に感謝しています。

 今回の調査を行うことを決めた理由は、6月中旬から7月初旬にか
けて生田緑地で行っていた調査の最中にゲンジボタル観賞に来てい
た方々が利用していた懐中電灯がゲンジボタルの雄が行う同時明滅
(探雌行動に必要なコミュニケーション)に影響を与えているので
はないかと思ったことです。調査の1日目は雨、2日目は気温が低い
ことが原因でホタルがほとんど出ず、岐阜まで来て何も出来なかっ
たらどうしようと正直焦りました。そんな時、市役所の方や民宿の
方、地元の新聞記者の方など本当に多くの方に協力していただき、
とてもよい調査地を見つけることが出来、3日目からはうまくデー
タもとることが出来、本当に幸運でした。3日目以降の調査では、
ゲンジボタルが同時明滅をしている際中に懐中電灯を当てると同時
明滅が乱れる、光から逃げる、同時明滅をやめるなどの行動を観察
することができました。懐中電灯の光がゲンジボタルの光コミュニ
ケーションに何らかの影響を与えている可能性があることを実際調
査を通して観察でき、有意義な調査になったと思います。

 今回のデータや生田緑地でのデータを生かし、ゲンジボタルの保
全に少しでも役立つ卒業研究になるよう、そして岐阜調査を含め、
調査を通してお世話になった方に自信を持って卒業研究を紹介でき
るよう、これからも頑張っていきたいと思います。


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【ホタル調査の感想】
                     4年  横山 泰宏

 岐阜県にホタル調査の手伝いに行ってきました。

 岐阜での調査地は、みんな普通にライトを持ち歩いていて、歩く
道だけでなく、ホタルを照らしている人もいました。あきらかに悪
影響なのはわかっていても、いくら研究といえども、自分もライト
をホタルに向けているために、人のことを注意できない今井さんに
はかなり苦痛な調査だったと思います。絶対に懐中電灯をやめさせ
るようなデータを4人で頑張って集めました。

 岐阜のこの調査地は生田緑地にそっくりな環境でした。近くに民
宿もあり、生田緑地ほどではないけれども人の出入りが多少ありま
した。しかし、生田緑地よりライトを持っている人の割合は多く、
鑑賞マナーは良いとはいえませんでした。しまいには、手持ちのラ
イトで激しく自動点滅させている人もいました。みんなで「ハザー
ドおじさん」と名付けました。

 ホタルには見るからに悪影響!!

 しかし、このおじさんのおかげで研究のヒントも生まれたので、
一概に悪い人ではないかもしれない・・・。根本的な個体数の差も
あるのだろうけど、マナーに関しては、東京と岐阜では少しだけ風
土の差もあるのではないかと感じました。改めてゲンジホタルが、
みんなが捕まえても大丈夫なくらい増えてくれるといいなと思いま
した。日程は1日伸びましたが、調査を3日間行い、データを取る
のをお手伝いしました。調査に関しては問題もありましたが、それ
らを乗り越えて無事に調査を終えることができたのも、温かい岐阜
の人たちに支えられたからだと思います。右も左もわからない状態
から、無事にホタルの調査ができたのも、お世話になった人たちの
おかげです。ホタル調査だけでなく、原生林を歩いたり、アジメド
ジョウの放流を体験したり、山菜・キノコの写真と話を聞かせてい
ただいたり、川と山と人が作り出す岐阜の素晴らしい自然や文化に
触れることができ、すごく勉強になりました。機会を見つけて再び
足を運び、自然について勉強したいと思いました。


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【ホタル調査の感想】
                     4年  持田 美和

 7月にホタルの調査のお手伝いに行かせて頂きました。この5泊
6日の調査は私にとって貴重な体験となりました。ホタルも地域に
より特性があり、理解していたものの感動の連続でした。今は率直
に、行って良かったというのが実感です。

 地域の方々との交流で、生きた生態の勉強ができました。同時に
自分自身の知識と経験の無さを痛感しました。現場で生きた勉強が
できた喜びは地域の方々の親切と同行者の向学心からいただきまし
た。

 今回の調査でお世話になった町にはアジメドジョウという美しい
どじょうが生息しており、昔からそこの土地の守り神として大切に
してきたそうです。ホタル調査の合間に川へ探しに行き、やっとこ
のどじょうを見つけたときはその可愛らしさに感激しました。残念
ながら最近では農薬などの影響で減少の傾向にあり、養殖したもの
を放流するなどの取り組みをしているそうです。その現場を見せて
いただく機会もあり、良い経験となりました。

 人とのつながりや生きものの命の大切さを実感できたことが、自
分の研究にもプラスになったことは確かです。私も調査を通して、
地域やまわりの方々を大切にしながら、研究に取り組んでいきたい
と思います。


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【岐阜の食物と植物】
                     4年  芦澤 和也

 岐阜県における調査は色々と勉強になることが多く、非常に充実
したものでした。また、微力ながら、今井さんがやろうと思ってい
た調査のお手伝いが出来てよかったです。

 私は、主に現地での食事と植物について書きたいと思います。食
事については、なんといっても朴葉みそです。飛騨地方の郷土料理
である朴葉みそは今回岐阜調査に参加した4人全員が驚嘆した美味
しさでした。温かいごはんに、朴葉みそをかけて食べる、、、それ
だけで大満足でした。次に、現地の植物についてです。ホタル調査
に行かない昼間、私の研究対象であるユキヤナギの分布を調べまし
た。宿舎近くの渓流河川である宮川や奥飛騨の蒲田川の一部で本種
が生育しているかを調べたのですが、残念ながら発見することがで
きませんでした。現地の植物に詳しい方に尋ねてみたところ、もと
もとこの土地(宮川周辺)には自生していなかったようです。岐阜調
査を通じて、ユキヤナギが生育していない河川の岩場を多く観察す
ることができたおかげで、岩場と本種の分布の関連性についての研
究に向けて多くのヒントが得られました。ちなみに、宮川の上流域
は、水際の砂地にネコヤナギ(ヤナギ科の低木)が優占する渓畔林
でした。

 最後に、高山市一之宮地区(旧宮村)は、太陽のような温かさを
もった人たち、素晴らしい自然、美味しいごはんの3拍子が揃った
すばらしい土地です。

 みなさま、国内旅行にはぜひ高山一之宮地区へ!


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【つくばでの新たなる一歩】
                         細木 大輔

 昨年5月から今年5月までポストドクトラル研究員として明治大
学で働いておりましたが、7月からは茨城県つくば市にある国土交
通省、国土技術政策総合研究所(国総研)の緑化生態研究室で研究
官として働くことになりました。この研究室では現在、公園などの
緑地の計画、環境アセスメントとミティゲーションなど開発におけ
る生態系の保全アプローチや、生態ネットワーク計画に関する研究
業務を行っており、それと共に国土交通省の地方整備局等に技術支
援を行っています。要するに、公共事業における自然環境への配慮
について考えたり、快適性、美しさ、自然とのふれあいなど、公共
緑地に対する国民のさまざまな要求に答えるために設けられている
のがこの研究室です。皆さんが知っているかもしれない業務で代表
的なものには、愛知万博の会場中央にある壁面緑化「バイオラング」
があります。
(ホームページは http://www.nilim.go.jp/lab/ddg/index.htm

 国総研はつくばに2つと横須賀に1つの計3つの庁舎があるので
すが、私が勤務している旭庁舎の敷地は土木研究所と共用しており、
広大です。敷地内には1周が6キロメートル以上ある試験走行用のサ
ーキットトラックが設けられています。そのおかげで、通勤は敷地
沿いの国道を行くのですが、自転車で通うと敷地の中央にある研究
棟にはなかなか着きません。かなり健康的です。つくば市は、研究
所のそばに限らず造りが大きくて、比較的新しい道は一般よりも広
く作られており、街路樹が多く植えられていています。緑豊かな公
園や、広い緑地を持つ大学や研究所のような施設がたくさんあり、
また、市街をすこし離れると広大な田畑が広がっており、とても緑
が多い印象を受けます。面積300平方キロメートル(川崎市の2倍)
に20万人強(川崎市の6分の1弱)が暮らす街です。

 一方、研究室の雰囲気はと言いますと、応植研ほどではありませ
んが和やかな感じです。部屋自体が日当たりのよくて明るいことも
手伝ってかもしれません。当研究室には研究業務を行う常勤職員が
私を含めて8人と、庶務を担当する非常勤職員が2人、招聘研究員
(非常勤)4人が勤務しております。今はそれほど忙しい雰囲気で
はないのですが、年度末が近づいてくると今より遙かに忙しくなる
そうです。私自身は不慣れな仕事に日々振り回されておりますが・
・・。この研究室で私が主に担当するのは、植物の外来種問題、特
に緑化で使われる外来種に関する研究です。対象とする外来種には、
多摩川のカワラノギクプロジェクトで汗を流しながら抜いた草も含
まれています。緑化で用いられる外来種の地域への広がり方の解明
や、管理方法の考案、外来種を用いない代替緑化工法の開発を行い
ます。代替工法の一例には、私がこれまでに研究して森林表土を使
った緑化方法があり、こちらでも引き続き研究することになりまし
た。

 入省して早くも1ヶ月が経ちましたが、こちらの職場では発注業
務や、回覧資料の閲覧、省庁で開かれる会合や委員会の情報を通し
て世の中の仕組みの断片を見ることができています。実学である農
学を専攻してきた身としては、積極的に社会の要求に応えるために
研究を行うこの職場は、自分自信の視野を広げ、能力を高める場と
して最良の環境であると感じています。ここでの任期は3年と限ら
れておりますので、社会の要求に最良の研究で応えつつ、研究者と
しての自分を磨いて、次に大きな飛躍ができるようにしたいと思っ
ています。


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【1ヶ月が過ぎて】
                         古賀 陽子

 みなさん、はじめまして。今年の7月からポストドクトラル研究
員として応用植物生態学研究室に在籍することになりました古賀陽
子と申します。私は千葉大学で博士課程を修了し、現在は静岡市に
あるコンサルタント会社に勤務しています。月に6日間、「都市近
郊の大学農場とその周辺の里山を活用した保全教育の展開」という
研究テーマで調査を進める予定です。“1ヶ月経って?”というこ
とですが、今月は事務手続きに奔走していて、まだあまり実感がわ
かないというのが正直なところです。これから色々な方にお会いし
ながら研究を進めていくことを今からとても楽しみにしています。
よろしくお願いいたします。


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【夏休みの予定】

 夏休みには黒川農場予定地の下層植生図を作成するための調査を
行ないます。黒川駅9:30集合で、調査は正味3時間ほどです。学生
1名に手伝ってもらい、帰りにその学生の話を聞く予定です。

 カワラノギクプロジェクトは福生市報や新聞にお知らせを掲載し
て参加者を拡大して行ないます。<9/4,10(11,25) 福生駅9:15集合>

8/1 黒川(園田・石井)
 4 町田市の雑木林(粕谷)
 5 多摩川(岡田)
 6 民権の森・薬師池公園(町田市)(和田歩)
 7 黒川(坂田)
 8 ,9 黒川(庄下)
 10,11 伊豆大島(菊地)
 12 多摩川
 13 自然教育園(橋本)
 15 黒川(羽鳥)
 16 黒川(粕谷)
 17 黒川
 18 黒川(杉山)
 19 多摩川(岡田)
 20 国立市WS
 21 荒川(横山)
 22 黒川(芦澤)
 23,24,25 黒川
 26 黒川(橋本)
 28,29,30 黒川
 31 黒川(小林)

9/3 黒川(植松)
 4 カワラノギクプロジェクト
 5 黒川(横山)
 6 黒川
 7 トンボ(目次)
 8 ,9 黒川
 10(11) カワラノギクプロジェクト
 17,18 緑化工学会大会(農大)
     学生セッション、若手の展望、ポスター発表
 19 横浜自然観察の森(園田)


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応用植物生態学研究室 新聞係