----------------------------------------------------------------------- ====================== 応植研ニュースVol.9 No.3 ==================== -----------------------------------------------------------------------          2004年7月15日発行          〒214-8571 川崎市多摩区東生田1-1-1           明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室           編集 倉本宣・小池佳代・阿南一穂 URL http://www.isc.meiji.ac.jp/〜seitai  ずいぶん昔のことですが、1979年の春、大学院生になった私は調査地を探して いました。多摩川は都市の中にあって、自然性の高い土地が連続しているという 魅力的な調査地でした。この魅力は今も変わっていないようです。 ただし、河原には大勢の人たちがさまざまな目的でやってきます。調査は大勢の 人の目を逃れて自分だけにわかるように、大勢の人たちに踏みつけられないよう に、気を付けて行わなければなりません。和泉多摩川を調査地にしている4年生の 飯塚さんや小池さんにもそのあたりの呼吸がわかってきたようです。 こうなると彼女たちも河原の植物を調べるなかまという感じです。  今回は、「河原の植物」をテーマにします。          倉本 宣 ---------------- 多摩川調査隊隊長 -----------------------                         M2 小林美絵 私はマツヨイグサ属植物に関して研究しています。一般的には「月見草」と言わ れることもありますが、正確には「待宵草」と「月見草」は別種です。マツヨイグ サの中でもオオマツヨイグサは多摩川では減少し、メマツヨイグサ、コマツヨイグ サが増加しています。この増減の原因を解明するために、発芽特性や雑種形成の 可能性、人工照明の影響を調べています。これまでに発芽特性を調べました。 実験の結果より、オオマツヨイグサはギャップを検出する機構を持たず、 また永続的土壌シードバンクを形成しないことから、現在の植生が増加し、裸地が 減少した多摩川では適応できずに減少し、メマツヨイグサ・コマツヨイグサは ギャップを検出し、永続的土壌シードバンクを形成することから、 先駆的に侵入し、定着していることが考えられました。この発芽特性がマツヨイ グサ属植物の増減に関連していると考えられます。実験は昨年末から今年の初めに かけて行い、その後、実験結果を投稿論文にまとめました。  ちょうどこの時期は就職活動と重なり、精神的にも肉体的にも辛く、コーヒーを 飲む回数がきっと増えていたことでしょう。どのような状況であれ、論文を仕上げ たということは私にとって自信になりました。しかし、今読み返してみると、 「こんなことを書いたのか。。。」と思うところが多く、恥ずかしいばかりです。  今後、雑種形成の可能性、人工照明に影響に関して検討し、修士論文として まとめていく予定です。私にとっての学生生活はあと半年余りです。研究の面で やり残したことが多いので、この夏、妥協することなく調査を行っていきたいと 思っています。また、学生として過ごせる時間を有意義に使い、心置きなく卒業 できるよう、精一杯の努力をしていきたいと思います。 ---------------- コセンダングサ少女です! -----------------------                             4年 飯塚文子  私は、多摩川における外来植物コセンダングサを対象として研究しています。 去年、研究対象種を探しに和泉多摩川に行きました。その時、コセンダングサが びっしり生えていて、歩くとコセンダングサの種がたくさんくっついてすごく 痛いんです。靴の中にも入り込んできます。これは、在来種にも、人間にも 悪影響だと思って研究することに決めました。英語で書かれた論文には、 コセンダングサをHairy Beggarticksと書かれていて、訳したら“嫌なやつ” でした。やはり…。  2月、まだ寒いのにコセンダングサは芽生えはじめ、5月には、1m×1mの 方形区の中に多い所では400以上芽生えました。芽生えの生育調査をしているの ですが、さすがに調査が大変で、ほんとに嫌なやつだと思いました。 コセンダングサはコンクリートのわずかな隙間1cmにも生えて、あきれるほど すごい生命力です。しかし、就職活動の荒波にもまれ疲れている時に、 コセンダングサを見ていると自分もがんばらなきゃ、と励まされました。 私もコセンダングサみたいに強いから、何が起こっても負けません。 (自分への暗示) だから、コセンダングサ少女ってことでよろしくお願いします。 ------------------ 植物とイメージ -----------------------                             4年 小池佳代  初めまして、4年の小池佳代です。私は、「アメリカネナシカズラ」略して 「アメネナ」の研究をしています。アメネナはたいへん不思議な植物で、 葉っぱも根っこもありません。 (正確には発芽したばかりのときはあるのですが途中で消えてしまいます。) ほかの植物から養分を吸収することで生きている寄生植物です。 また、見た目も変わっています。ラーメンをぶちまけたような様子をしています。 これは、見てみないと想像がつかないかもしれませんが本当です。  アメネナは謎が多くて他の植物に頼っているけど何か憎めなくて魔性の女みたい だとひそかに思っています。私がアメネナの話を纐纈先生(※)にしたら、 「旅人みたいやな」とおっしゃいました。旅人も素敵! こんな風にいろいろなイメージを人に与えくれる植物て、あまりないのでは ないかな。こんなおもろい植物に出会えてよかったなと思います。  私はアメネナのことが好きですが、寄生した植物を黄化や枯死に招くため、 管理方法を考える必要があります。アメネナは生育地を選ばずどこにでも侵入して いきます。私はフィールドを希少な植物も多い多摩川にしました。 アメネナの発芽特性、種子散布様式、分布等を調査する予定です。 多摩川をお散歩中にアメリカネナシカズラを見かけましたら小池まで (ef10064@isc.meiji.ac.jp)ご連絡ください。 ※新聞係注 纐纈先生…明治大学農学部教授。動物生産学研究室。      苗字は「コウケツ」と読み、名前は雄三(ゆうぞう?)。      期末試験と研究に対する厳しさにはかなり定評があるが、            とろけそうな笑顔から繰り出される関西弁と、 不思議でかわいいキャラクター(失礼)、      面倒見のよい性格で生徒からモテモテの先生である。   動物生産学研究室 http://www.isc.meiji.ac.jp/~animals/ ------------------- 今後の予定 ----------------------- 8/25〜28  日本生態学会全国大会(釧路)        小林さん、樋口くん、湯本くん、斉藤くん、杉山くん、        野村くん、が発表します。 8/29〜9/1 応植ゼミ合宿 in 北海道 11/21    緑地系&応植のOB会 -------------------------------------------------------- 最近、各方面からこの新聞のお褒めの言葉をいただいております。 感想をいただけるのは嬉しいです。最高です。ニヤニヤしてしまいます。 メッセージを下さった皆様、ありがとうございました。これを励みに頑張ります。              これからも応植新聞は,「見やすい・読みやすい・読んで楽しい」をモットーに 頑張っていきます。よりよい応植新聞を作っていきたいので、いろいろと ご意見をいただければ、と思います。よろしくお願いします。      応植新聞係  (先生には内緒の話もOKです) -- kuramoto noboru