-------------------------------------------------------------------- ====================== 応植研ニュースVol.9 No.2 ================= --------------------------------------------------------------------          2004年6月18日発行          〒214-8571 川崎市多摩区東生田1-1-1           明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室           編集 倉本宣・小池佳代・阿南一穂 URL http://www.isc.meiji.ac.jp/〜seitai  研究室ニュースを作るに当たって、編集を担当している小池さんと阿南くんと 相談しました。そこで、2004年度はその号ごとにテーマを決めて、研究室でおこ なっている研究を関連付けて紹介しようと考えました。この研究室では学生の主 体性を大切にしてテーマを決めていますので、見かけはばらばらな研究をしてい るように見えます。でも、その底には共通のものの見方が流れています。  今回は、カワラノギクをテーマにします。 ---------------------- 倉本 宣 --------------------------                                  私がカワラノギクに出会ったのは4半世紀も前の大学生の時でした。日本ナチュ ラリスト協会という子どもの自然観察会の研修で、故曽根伸典さんに府中市の多 摩川で教えてもらいました。曽根さんは鉄工所を経営していて、多摩川の植生を 研究するようになった在野の研究者です。  カワラノギクを深く研究するようになったのは1988年に井上健・鷲谷いづみ・ 竹中明夫さんたちとRPCB(希少植物保全生物学研究会)というグループをつくっ てレッドデータブックに掲載されている植物の研究を始めてからです。鷲谷さん のお弟子さんの研究も含めると、カワラノギクについてはこれまでに約25編の 論文が書かれています。  実は、私は研究室の学生にはカワラノギクをテーマにしないようにしてもらっ ています。それは私との関係が近くなりすぎてお互いに自分の才覚で研究を発展 させていけなくなってしまうことを危惧しているからです。以前は、研究を手伝 ってもらうことも控えていましたが、最近ではM1の野村くんにカワラノギクプロ ジェクトの事務局を、3年生の粕谷さんにカワラノギクプロジェクトの記録を担当 してもらい、カワラノギクプロジェクトの除草作業を大半の学生に手伝ってもら っています。カワラノギクと同じ河原というハビタットに生息・生育する動植物 については、オオマツヨイグサ(小林美絵さん)、コアジサシ(柴田英美さん) カワラバッタ(野村康弘くん)、アメリカネナシカズラ(小池佳代さん)、コセ ンダングサ(飯塚文子さん)の研究を行っています。  これらの動植物に共通しているのは、自然裸地という植物に覆われていない ハビタットに適応しているということです。ただし、ハビタットのネットワーク 状況、別の言い方をすればハビタット間の移動能力には大きな差があります。 移動能力は大きい方から順に、コアジサシ、カワラバッタ、コセンダングサ、 カワラノギク、オオマツヨイグサ、アメリカネナシカズラではないかと思ってい ます。移動能力を実際に測ることはなかなかむずかしいので、新しく成立した 個体群とその親となる個体群との距離を測る方が簡単です。  もうひとつの方法は、アロザイム分析によって、個体群の対立遺伝子の構成を 比較することで、これは斉藤くんがカワラノギクについてMaki et al.(1994)の 論文を追試しています。 自然裸地は今では短期間で植物に覆われていきます。そこで、河原の植物を残し て選択的除草を行う必要があります。この春のカワラノギクプロジェクトでは 0.6haの自然裸地を維持するために200人・時のパワーが必要なことがわかり ました。  よく学生に話すのですが、ひとつわかることがあると、わからないことがたく さん見つかるという状況なので、これからもカワラノギクと付き合っていこうと 思っています。 ---------------- 僕のウラギクちゃん -----------------------                             4年 赤石正樹  わたしはウラギクという植物について研究しています。ウラギクは,カワラノ ギクと同じく絶滅が危惧されている植物ですが、生息地はカワラノギクよりはる かに下流の河口です。カワラノギクは丸石河原固有種ですが,ウラギクも別名 ハマシオンというように、海辺や河口に代表的な種です。高度成長期以前には 河口のいたるところに見られたそうですが、現在では埋め立てや開発の影響で 数えるほどになってしまいました。まだ研究を始めたばかりで分かっている ことは少ないですが,パッチに生息が見られるので、カワラノギクと同様に撹乱 依存種であると考えられます。 今後,ウラギクの発芽特性を調べるとともに,適した生育地はどのような条件で あるか、つきとめたいです。 ---------- カワラノギクプロジェクトに参加しました ---------------                              3年 阿南一穂 ブチチチッ、ドサッ。いててっ。 大きめのイネ科植物を引き抜いた瞬間に激しく尻もちをついた。 これをきっかけに、私は燃えた。 パワフル根っこな彼らをめがけ、ブルドーザーのごとく突き進む。 「おりゃっ、とりゃっ。おおおおっ。」 勢いに任せて抜きまくる。そして集積場所に運びまくる。 気が付くと、タテ3m×横1.5m×高さ1.5mの植物の山が築かれていた。 オニウシノケグサ、イタドリ、メマツヨイグサ、タケニグサ・・・etc どいつもこいつも見るからにハングリー精神が旺盛なやつらだ。 「カワラノギクも大変だなぁ。」・・・なんだかいいことをした気持ちになった。 6月5日(土)早朝。 眠たい目をこすりながらカワラノギクプロジェクトの集合場所に到着。 当日の参加者は約15人。応植研の学生もけっこう来ていました。 作業の内容は、30cm以上の高さの植物の除草です。 (ただし、カワラノギク、カワラヨモギ、メドハギ、マルバヤハズソウなどはその まま。) 非常に日差しが強かったのと、腰に負担がかかる動きのために午前2時間、 午後1時間だけの活動でしたが、へばってしまいました。へろへろです。 卒業研究を始めたら野外での活動調査の機会が増えると思うので、 体力はつけておかなきゃ…と心に誓った一日でした。 ---------------- 今後の予定 ----------------------- 7/3  成田社会人大学 「谷津のフィールドワーク」    (M1 の戸金くんにカエルの話をしてもらいます) 7/4  リトルターン・プロジェクト 観察会 7/18 生田緑地雑木林勉強会 駒場野公園(10〜12時) 7/24(予備日25) カワラノギクプロジェクト クズの除草          9:30永田橋 7/31-8/1 環境教育学会(立教大学にて) ---------------------------------------------------  今年度の応植新聞は,「見やすい・読みやすい・読んで楽しい」をモットーに頑張って いき ます。よりよい応植新聞を作っていきたいので,いろいろとご意見をいただければ、 と思 います。よろしくお願いします。      応植新聞係  (先生には内緒の話もOKです)