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応植研ニュース Vol.12 No.4
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2007年9月4日発行
〒214-8571 川崎市多摩区東三田1-1-1
明治大学農学部農学科応用植物生態学研究室
編集 倉本宣・高橋伸明・圓實裕美・中村光一朗
URL http://www.isc.meiji.ac.jp/~seitai
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まだまだ暑くこれから台風の季節となり、すごしにくい環境ではあ
りますが、頑張っていきましょう。
今号の応植ニュースは、黒川でのチョウの調査、国土交通省国土
技術政策総合研究所へ転任した園田さんの応植での9年間を振り返っ
て、黒田貴綱さんによるセミナー、3年生の三宅島でのゼミ合宿、黒
川の哺乳類自動撮影カメラについて、黒川での環境指標としての土
壌動物種組成調査です。
■ 黒川での行事
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【チョウの観察】
3年 本木 裕之
8月11日、黒川の農場予定地にて、私達3年ゼミ生達が初めて、黒
川で行える調査を計画し、調査方法を考え、実行に移したわけで、
黒川の農場予定地が農場に変わる前の谷戸の林縁のチョウの種組成
を4つの班にわかれ、4つの時間帯に分けて虫網で捕獲し、調査しま
した。
チョウの動きが予想以上に速かったので、捕獲するのに大変苦労
しましたが、みんなの頑張り、倉本先生も真剣に取り組んでいただ
き、データをとることができました。調査の結果としては、場所、
時間帯に関係無くヤマトシジミが多く確認でき、みんな最後にはヤ
マトシジミは図鑑を見なくても、同定がほぼ出来るようになってい
ました。チョウは日が高くなるほどに出現数が増えて、動きが活発
になりまして。ナミアゲハやアオスジアゲハなどの綺麗なチョウも
見ることが出来たようで、みんな童心にかえり楽しみながら取り組
めました。ただ、日が高くなり、気温が上がり、炎天下の中動き回
ったせいでしょうか、ゼミ生達の動きが鈍くなったのは言うまでも
ありません。調査に参加してくださった皆さま本当にお疲れ様でし
た。3年の調査方法を決める会議に参加していただき、助言をしてく
ださった4年の榎本さん、笹目さん、遅くまでありがとうございまし
た。3年生の中心となった川原君お疲れ様でした。
これからも3年が中心となっての黒川での調査があると思いますが、
3年生皆で力を合わして頑張っていきたいと思います。
【哺乳類自動撮影カメラ】
3年 石田 瑞穂
7月28日、園田さんに案内していただいて哺乳類自動撮影カメ
ラの設置場所へ行き、フィルムの交換などを行いました。
設置場所に向かう前にすでに現像された写真を見せていただきま
した。アライグマ、ハクビシン、ネズミ、ネコ、トリなど様々な動
物が写っていました。今の段階では種を同定するのは難しいことが
分かりました。最初のうちは園田さんに聞いて勉強し、なるべく早
く自分で同定できるようになりたいです。
この日行った作業は次のようなことです。まずフィルムや電池の
交換します。フィルムが残っている場合はすべて使い切ってから回
収します。次にスケッチブックにカメラナンバー、日付、その場所
の環境を書き込みます。環境というのは「中茎アズマネ」「竹林」
などです。さらに被度を5段階で評価し書き込みます。その紙を写
真に撮り、どの写真がどこのカメラのものか分かるようにします。
カメラをもとの位置に戻して終了です。またカメラには雨ぬれても
大丈夫なように透明な袋が被せてありました。この作業は一ヶ月に
一回ほどのペースで4月〜12月に行っていくそうです。
この作業を計5箇所で行いました。その中にはかなり険しい場所
もありました。またこの日は蚊が多く、さされて大変でした。次に
行くときにはきちんと対策していこうと思います。
この日は行いませんでしたが、カメラで撮影された動物のデータ
を整理することも必要です。撮影日や時間、種名、個体数状況を
Excelで整理するそうです。
そのうち3年生だけでやらなければならなくなるので、場所やや
り方をきちんと覚えなくてはならないと思いました。
次に回収したときどんな動物が写っているか楽しみです。
【環境指標としての土壌動物種組成調査】
4年 高橋 伸明
7月29日に明治大学農場予定地で黒川谷戸プロジェクトの一環と
して、黒川建設前の生物相からみた自然度調査の予備研究として
「環境指標としての土壌動物種組成調査@黒川」を行ないました。
研究室のOBの方はもしかしたら経験があるかもしれませんが、青
木淳一先生の考案した方法で土壌動物の種組成を点数化して自然
度を評価するものです。
当日はいざ始めよう!というところで夕立ちにあい、迷惑な自
分の雨男ぶりを発揮してしまいました。データも考察の残らない
結果になりましたが、20人ぐらいの人を動かす調査を自分一人で
考え、準備し、説明し、動いてもらったことは今後の自分の大き
な糧となりました。もちろん失敗もあり、特に班長になってもら
った3年生たちには迷惑をかけてしまいました。ただ、「リーダー
シップ」ということについて深く考えるきっかけにもなり、まず
自分が自信を持たなければ人は動いてくれないな、と実感しました。
土壌動物の自然度評価は生物の環境評価の手法として黒川で行
われていくべきだと思いますし、工事には大量の土壌の移動が行
なわれることが予想されます。今後、黒川には失われるべきでは
ない土壌動物がいることを卒論で明らかにしていきたいと考えて
います。
■ セミナー
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【黒田貴綱さんによるセミナー】
M2 芦澤 和也
去る7月13日、日本大学生物資源学部緑地・環境計画学研究室の
ポストドクターの黒田貴綱さんに「都市・農村緑地の保全と管理
におけるネズミ類の生態学的研究」についてお話をしていただき
ました。その後、研究室にて、お酒も交えた懇親会を行い、交流
を深めました。
セミナーでは、まず、ネズミという生きものが今まで日本でど
のように扱われてきたか歴史的資料にも言及して解説していただ
くとともに、アカネズミ、カヤネズミ、ハタネズミの生態の概要
を説明していただきました。その後、黒田さんが今まで行ってき
た研究を基に、アカネズミが樹林地内のどのような環境構造にい
るのか、カヤネズミの生息適地、棚田域における管理形態の違い
から生じる植生と環境、などについてお話していただきました。
私は、植物の生態について研究していることもあり、都市緑地の
保全について、今まで植物の視点で考えることが多かかったため、
今回のネズミ類を軸に据えた緑地管理の提案は非常に勉強になり
ました。今回のセミナーを聴いて、緑地を管理すると一言で言っ
ても、保全しようとする種によって色々な管理方法があるという
ことを改めて認識させられました。今後、生きものとそのハビタ
ットを相手にしている研究室の一員として、管理が生物相に与え
る影響などについて、しっかり勉強していきたいと強く思いまし
た。また、哺乳類の研究を行いたいと考えている研究室の3年生た
ちも、哺乳類の研究をどのように緑地の管理に生かしていくのか
ということを勉強することができて大変有意義だったのではない
かと思います。
黒田さん、どうもありがとうございました。
■ 国土交通省国土技術政策総合研究所へ転任した園田さんから
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【応植の9年間を振り返って】
国土交通省国土技術政策総合研究所
(応用植物生態学研究室OB)
園田 陽一
今年は,非常に暑く人間はバテ気味ですが,野生動物達は元気に
活動しています。
私は,学部は農学部農学科応用動物学専修に所属していました。
大学に入学するときに野生動物(とくに,哺乳類)に関わる研究
がしたいと思い,明治大学の応用動物学専修に入学しましたが,実
際のところ畜産学と野生動物学の間には大きな隔たりがあり,ゼミ
の入室を決定するときに,非常に悩んだことを覚えています。その
ときに,サークルの先輩でもあり,現在ゼミの先輩でもある篠木さ
ん(現日本野鳥の会のレンジャー)の「うちの研究室に来ればいい
じゃない」の一言で倉本先生に恐る恐る会いに行ったことを覚えて
います。それからというもの,必死に!?なって保全生態学・保全生
物学なるものを勉強し,気づくと応用植物生態学研究室で博士課程
を卒業し,9年も居座り続ける事になったのです。
応用植物生態学研究室での研究はというと・・・,先にも登場さ
れた先輩の篠木さんが伊豆大島で絶滅危惧種かつ天然記念物でもあ
るカラスバトを研究しており,カラスバトの食料となる木の実をタ
イワンリスが食べてしまっているのではないかということで,「伊
豆大島におけるタイワンリスの食性と剥皮被害」というテーマで研
究を始めることになりました。タイワンリスの胃内容物(タイワン
リスは小型なので,スライドガラス上に胃内容物を載せて顕微鏡で
分析します)を一人で,100個以上もやることになり,研究室でひ
とり夜な夜なカウント作業をしたり,伊豆大島を明け方から日暮れ
まで徒歩で徘徊したりと哺乳類の研究の経験もなく,何とか卒業論
文を書き上げたことが今では懐かしく思います。
大学院に進学した春〜夏にかけて,研究テーマを決定しなければ
なりませんが,私は最初のうちはタイワンリスの研究を続けていく
つもりでした。しかし,先生の「タイワンリスの第一人者である林
さんよりも優れた研究をするのは無理じゃないの」の一言で私の研
究テーマは一気に崩れ去ってしまいました。それからというもの,
テーマ探しに翻弄され,たどり着いたのが,「野生哺乳類を指標と
した生態的ネットワーク」というテーマでした。生態的ネットワー
クとは,緑の拠点を保全・再生・創出し,緑の拠点と拠点を結び付
けることにより,生きものの生育・生息や移動・分散を促進するだ
けでなく,人間の緑とのふれあい空間を提供するというものです。
この生態的ネットワークは,国土計画と結びつくため,生態学的な
知識だけでなく,造園学,緑地学などの勉強をすることが必要でし
た。そこで,タヌキと人間の関わりを解明し,タヌキと人間の共存
型社会基盤をどのように作っていったらよいのかが修士課程から博
士課程へのテーマになりました。私は縁あって,8月1日から国土交
通省国土技術政策研究緑化生態研究室の任期付研究員の職を得られ
ました。現在,栃木県の湯西川や茨城の水戸周辺のタヌキやテンを
追いかける業務に奔走しています。
人間と野生動物がともに歩んでいくための社会基盤を形成するこ
とはとても難しいテーマです。解決の糸口は簡単には見つかりそう
も有りませんが,少しでも多く成果を社会に還元しつつ,これから
も研究活動を続けていけたらと考えています。
■ ゼミ合宿について
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【ゼミ合宿in三宅島】
3年 志賀 正啓
8月5日の夜から8日までの約3日間、三宅島へゼミ合宿に行っ
てきました。参加メンバーは、倉本先生、3年生全員、4年生の榎
本さん、M2の芦澤さん、M1の菊地さんです。また、三宅島では
応植第一期生で現在あかこっこ館で働いていらっしゃる、篠木さん
夫妻に案内していただきました。
1日目、まず島に降りたとき、卵の腐ったような火山ガスの臭い
がしました。未だに、地域によっては火山ガスが多く流れてくるよ
うです。日中はバードウォッチングで島の代表的な種であるアカコ
ッコなどを見てきました。次に、噴火で変わり果ててしまった学校
の跡地などに行き、2000年の噴火のすさまじさを実感することがで
きました。また、夕方にシュノーケリングをしました。なかなかで
きない貴重な体験をすることができました。
二日目は、緑化事業をしている成田さんに緑化を行っている現場
を案内していただきました。噴火によって島の60%の緑が失われた
と聞いていましたが、確かにハゲ山が多く見受けられました。しか
し、場所によっては遷移も進んでいて、自然の力強さを感じること
ができました。夜は、バーベキューをして、芝生に寝転がり満天の
星空をみんなで眺めました。ちょうど流星群にも重なり、流れ星も
たくさん見ることができました。
三日目は、生徒のリクエストで早朝6時からシュノーケリングを
して、その後ウミガメを絶壁から見下ろして観察しました。本当に
カメは海にいました!水族館でしか見たことなかったので感動して
しまいました。
今回の合宿で、3年生は卒業論文のテーマを決めたり、島という
自然豊かな環境を肌で感じることができ、とても有意義な3日間に
することができました。
ぜひ、また三宅島の豊かな自然に会いにいきたいです。
■ 先生から
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【谷戸からの発信】
このところ、農学科の先生とよくお話しするのは、「もっと外部
に発信していきましょう」ということです。現実は,内部の仕事が
忙しくてなかなか困難なところがあるのですが、現在の農学科の教
員は有能なので、そんなことには負けないで発信できるはずです。
私は谷戸、里山、河原、公園などで発信するように努めています。
いくつか例を報告します。
多摩川親子自然教室を川崎市多摩区と明治大学を含む3大学の連
携事業として8月26日に開催しました。テーマは身近に生息してい
るけれども気づかない生きものに気づいて,共存をはかるというこ
とです。研究室の学生とO-o!Meijiのポータルページをみて集まっ
てくれた学生の合計24名で運営しました。
多摩川の右岸多摩高校前にはプラナリアが見つかりました。解散
前には緊急車両がコウモリの観察を予定していた場所にやってきて
しまい、予定と場所を変えましたが,なんとか事故もなく終えるこ
とができました。協力してくださった学生および職員の皆様、区役
所,二ケ領せせらぎ館に心からお礼申し上げます。
黒川谷戸プロジェクトを町内会の新聞に掲載していただきました。
そろそろ次の記事を考えなくっちゃと思っているところです。
9月7日、8日の緑化工学会(京都大学)では、4年生の榎本君が
学生セッションで発表し,私は水辺のシンポジウムと学会活性化の
シンポジウムで話す予定です。
このような個別の発信を体系化して明治大学の農学科の特性をつ
くっていこうと思っているこの頃です。
倉本 宣
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いつも応植研ニュースをご覧いただき、ありがとうございます。
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きます。
これからも応用植物生態学研究室をどうぞよろしくお願いいたし
ます。また、新聞係へのご意見やご質問などございましたら、下記
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す。
応用植物生態学研究室 新聞係
ohshokunews-request@mail.goo.ne.jp
また過去の応植ニュースや研究室の情報などを応用植物生態学研
究室のHPに更新していますので、下記のURLからご覧ください
。
L.A.P.E. 応用植物生態学研究室
http://www.isc.meiji.ac.jp/~seitai/
--
kuramoto noboru