下図の腱駆動機構は、すべての腱にモータが取り付けられていますが、実際にはこれらのモータをバネに置き換えて使うことがあります。こうすると、いくつかの関節が自由に動けなくなる可能性がでてきますが、うまく設計すると物体に馴染む動作や関節が連動する動きを簡単に実現することができます。例えば、人間の人さし指を見てみると、先端の関節は一つ手前の関節と連動して動き、先端だけ自由に動かすことができません。このような動きをうまく設計するには、腱駆動機構を解析や設計法が必要となります。下記の図は、腱駆動機構の分類を表したものです。腱駆動機構は、同じ姿勢を保っていられるか(平衡点の存在)と幾つの関節が独立に駆動できるか(駆動自由度)ということで6つのクラスに分類することができます。この分類に基づき、腱駆動機構の設計法を設計しました(Ozawa et al., IEEE TRO 2014)。
下左の写真はこの設計法に基づき、腱駆動機構により開発した指ロボットです。このロボットは、人の指のように、指先が環境に接触していない状況では連動して動き、外から力が加わるとなじむように動きます(Ozawa et al., Autonomous Robots, 2014)。また、下右の写真は、同じ手法を用いて設計された腱駆動型ロボットハンドです。このハンドはほぼ成人男性と同じ大きさであり(指先から掌の下の部分まで約200mm, 重さ約440g)、少ない数のモータで複数の把持が可能です。
R. Ozawa, K. Hashirii, H. Kobayashi, "Design and Control of underactuated tendon-driven mechanisms", Proc. of the 2009 IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, Kobe, JAPAN, pp.1522-1527, May, 2009
腱駆動機構により、様々な特性を持つ伝達機構が作れることがわかりました。一方、腱駆動機構はその伝達系設計が複雑であり、常に腱をたるまないようにするためのバイアス張力をかけるあり、メンテンナンスが必要となります。そこで、伝達構造はそのままで、メンテナンス性を向上させるために、歯車列を用いた伝達系の設計法を開発しました(Ozawa et al. TRO2016)。この方法により、多くの劣駆動ハンド(関節の数よりモータが少ないハンド)を開発しました。その一部は、STLファイル等をオープンソース化し、3Dプリンタがあれば、ねじや接着剤等を用いなくても組み立てられる機構なども開発しました(Hirano IROS2017)。
S. Arimoto, P. Nguyen, H. Y. Han, and Z. Doulgeri,
"Dynamics and control of a set of dual fingers with soft tips "
Robotica, vol. 18, no. 1,pp. 71?80, 2000
Selected publications:
Y. Yoshimura, R. Ozawa, "
A supervisory control system for a multi-fingered robotic hand using datagloves and a haptic device",
Proc. of the 2012 IEEE Int. Conf. on Robots and Systems (IROS), Vilamoura, Portugal, Dec. 11, pp. 5414-5419, 2012
R. Ozawa, N. Ueda,"
Supervisory control of a multi-fingered robotic hand with data glove",
Proc. of the 2007 IEEE Int. Conf. On Intelligent Robots and Systems (IROS), Oct 29-Nov.2,
San Diego, USA, pp.1606-1611, 2007
R. Ozawa, T. Yoshinari, H. Hashiguchi, S. Arimoto,
"Supervisory Control Strategies in a Multi-Fingered Robotic Hand System",
Proc. of the 2006 IEEE Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems (IROS), Oct 9-15,
Beijing, China, pp.965-970, 2006
これまで、国内を中心とした多くの研究施設で二足歩行ロボットの研究がされてきおり、すでに多くのすばらしい研究成果が示されています。これまで成功した方法のほとんどすべてはモデルに基づく制御方法(MBC: Model Based Control)と呼ばれています。この方法は、ロボット自身と床などの環境の詳細なモデルと零モーメント点(ZMP: Zero Moment Point)と呼ばれる転倒を引き起こす回転力が零となる点を力センサより計測できることを前提としています。この場合、ロボットや床などの情報が少ない場合や力センサがうまく働かない状況ではうまく動作することができません。また、ロボットの全身のモデル化は非常に難しいため、単純な集中質量モデルに置き換え制御を行い、その上で、その質量集中モデルの運動を邪魔しないような全身運動を計画するという2段階の方法で安定化を図る方法が一般的です。
そこで、本研究室では、MBCとは異なる受動性に基づく制御系(PBC: Passivity Based Control)により、2足歩行ロボットを安定化する研究を行っています。一般的に、PBCは、MBCに比べ、圧倒的に少ないロボットに関する情報で制御することができます。また、PBCは、MBCよりモデル誤差に対して頑丈であることが知られています。しかしながら、このPBCの制御系設計は難しいため、歩行ロボットにはほとんど用いられることがありませんでした。
R. Ozawa, J. Ishizaki, "
Passivity-Based Balance Control for a Biped Robot",
Proc. of the Conf. on Robotics and Automation, Shanghai, China, May 5-13, pp550-556, 2011
1)は力センサを用いて接触力を測り、それに基づき制御を行う方法で古くから多くの研究が行われています。
2)はRemote Center Compliance(RCC)と呼ばれる機構に代表される方法で、力センサを必要としない方法です。
産業界では最も成功した力制御法の一つですが、基本的に軸挿し作業にしか用いられず、応用範囲が狭いのが欠点です。1990年代に入ってこの応用範囲の狭さを補うことを目指して様々な機構が開発されていますが、どれも実用レベルにはいたっていません。
R. Ozawa, H. Kobayashi: " Stability of PD Control Systems of Tendon-Driven Mechanisms with Nonlinear Tendon Elasticity", Proc. of 2000 Japan-USA Flexible Automation, Ann Aber, Michigan, July, 2000
R. Ozawa, H. Kobayashi: "Control of Coupled Tendon-Driven Mechanisms with Nolinear Tendon Elasticity", Proc. Pioneering Int. Symp. on Motion and Vibration
Control in Mechatronics, Tokyo, Japan, April, pp.151-156, 1999
R. Ozawa, Y. Oobayashi, "Adaptive task space PD control via implicit use of visual information", Proc. of the Inter. Symp. on Robot Control," Gifu, Japan, pp.209-215, Sep. 2009