電子機器のエネルギー保存の法則を考えると,伝熱第1回で説明したように,電子機器は電気ストーブと同じと考えることができます。 入力された電気エネルギーの多くは,電子部品内部で発熱し,熱として空気中に放出されています。 このため,電子機器の発する熱を放出するために,コンピュータなど電子機器の内部を覗くと, チップの上には生け花に使う剣山のようなフィン(冷却用のひれ)が取り付けられ,ファンが回っています。
発熱する部品に取り付けられているフィンは,どのような伝熱の効果を狙っているのでしょう。
発熱部品を,広い平板と考えましょう。
ニュートンの冷却法則
Q = A・h ( Tw - Tf )
から,大きな伝熱量 Q を得るには,熱伝達率 h または 伝熱面の面積 A を大きくすれば良いことがわかります。 熱伝達率は,伝熱面まわりの流速を速くすることで,大きくすることができます。 一方,伝熱面の面積を大きくするためには,拡大伝熱面(extended surface)を用います。
伝熱面を拡大する手法としては,伝熱面にフィン(fin)(日本語;ひれ)を取り付ける手法が一般的です。 伝熱面に根元から太さの変化しないフィンを取り付けると,フィンの側面の面積分伝熱面積が増加し,この結果伝熱量は,
Q = h・( A0 + Af )・( Tw - Tf )
となります。実際には,フィンの先端まで同じ温度にはならないため,フィンの面積分まるまる伝熱量が増加するわけではありません。
フィンからの実際の伝熱量と,フィン全体が根元の温度としたときの伝熱量の比をフィン効率(fin efficiency)η と定義します。
すると,実際の伝熱量はフィン効率を用いて,次のように表されます。
Q = h・( A0 + η Af )・( Tw - Tf )
発熱部品の表面に放熱フィンを設置する際,接触する面を完全に接触させることは難しい。 これは,部品やフィンの表面には微細な凹凸があるためで,微視的には完全に接触せず空気層が間にできてしまいます。 空気は熱伝導率が小さいので,隙間に空気層ができると発熱部品からフィンへの伝熱の抵抗になってしまいます。 このような接触面における伝熱抵抗を接触熱抵抗(thermal contact resistance)と呼びます。
接触熱抵抗を低減するためには,面同士の隙間に熱伝導グリスなどを用い空気より熱伝導率の良い物質を充填して接触熱抵抗を低減します。
2021.07.25 更新