第12回 相変化を伴う伝熱(沸騰)

相変化と潜熱・顕熱

固体・液体・気体の間で状態変化することを,相変化(phase change)と呼びます。相変化をするとき熱が吸収・放出される(潜熱(latent heat))ため,通常の温度変化時に出入りする熱(顕熱(sensible heat))に比べ小さな温度差で非常に大きな熱量を運ぶことができます。
液体から気体への相変化を蒸発(evaporation),特に液体中から気泡の発生を伴う相変化のことを沸騰(boiling)と呼びます。 一方,気体から液体への相変化を凝縮(condensation)と呼びます。

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沸騰伝熱

沸騰現象は,液体の流動形態,液温,沸騰様式などの組み合わせにより分類されます。
流動形態による分類では,鍋ややかんの中のように伝熱面の周囲の流体が静止しているプール沸騰と,強制的に流動している流動沸騰に分類されます。
液体の温度による分類では,液体の温度が飽和温度に達している場合を飽和沸騰,飽和温度より低い場合をサブクール沸騰と呼びます。
沸騰様式による分類では,周期的に気泡が発生するような沸騰を核沸騰,伝熱面全体が蒸気膜で覆われるような沸騰を膜沸騰と呼び,核沸騰と膜沸騰の間には,遷移沸騰と呼ばれる領域があります。

伝熱面上に沸騰が生じると,気泡の発生・成長・離脱にともない,潜熱および流れのかく乱によって熱伝達率は沸騰を伴わないときに比べて飛躍的に増大します。 ここで,飽和温度 Tsat と伝熱面壁面温度 Tw の差を過熱度 ΔTsat,飽和温度 Tsat と液体温度 Tl との差を過冷度(サブクール度) ΔTsubとそれぞれ次式のように定義します。

過熱度: ΔTsat = Tw - Tsat

サブクール度: ΔTsub = Tsat - Tl

この過熱度 ΔTsat を横軸に,縦軸に熱流束 q とした沸騰現象の概略を示す曲線を沸騰曲線と呼び,東北大学の抜山先生により明らかにされ,日本人による大きな業績です。

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今回の課題

相変化を利用した熱輸送デバイスである ヒートパイプ(heat pipe)について,動作原理を調べてまとめなさい。


2021.03.08 更新