第5回 熱抵抗・境界条件・断熱

熱抵抗

Fig43

前回の課題 図4-3に示したように,厚さ,熱伝導率とも異なる平板が2枚重なっていて, 定常状態で両端の温度が T1, T2 のとき,課題の結果から熱流量は,次の様になります。

Eqn1
(1)

熱の流れを電気の流れ(オームの法則)と相似と考えると, 伝熱量は電流,温度差は電位差に対応しているので,電気抵抗にあたる概念として 熱抵抗(Thermal resistance) R K/W を考えよう。

Eqn2
(2)
Eqn3
(3)

次の図の様に,熱の流れを電気の等価回路で考えると, 重なり合う平板を横切る伝熱の場合は,熱流が枝分かれしないでどの部分も同じ流れなので, 電気抵抗が直列の場合と同じと考えることができます。 オームの法則において直列の抵抗値は,足し合わせれば良いので, 熱抵抗も同様に考え,足し合わせたものが式(1) の分母になっています。

Fig51

熱抵抗は,直交座標だけでなく,円筒座標や球座標でも定義でき,次の様になります。

円筒座標系の熱抵抗

Eqn4
(4)

球座標系の熱抵抗

Eqn5
(5)

熱伝導の境界条件

これまで,熱伝導を考える面の条件(境界条件)として,温度を規定して進めてきました。 実際の境界面では,温度が定まる場合,熱流束(熱量)が定まる場合,そして,対流にさらされる場合の三種の境界条件があります。 それぞれの場合に,熱抵抗・熱回路を考えるか,見てみましょう。

対流にさらされる場合

家の壁面や窓ガラス,機器の筐体(ケース)のように,面が流体(風や流水)にさらされている平板を考えよう。

Fig52

熱流量は,枝分かれしないでどの部分も同じ流れと考えると,次の様になります。

Eqn6
(6)

この式を,T1T2 の差について前回課題のように求めると, 次の式のように表せます。

Eqn7
(7)

これより,対流にさらされる側の熱抵抗は,対流熱伝達率から次の様に表せる事がわかります。

Eqn8
(8)

熱流束(熱量)一定の場合

もう一つの境界条件,熱流束一定の場合について見てみましょう。 境界面を通過する熱流束(熱量)が一定の場合としては,電子機器やエンジンなどの冷却が例として考えられます。 壁面の温度ではなく,外部へ伝えなくてはならない熱量(冷やさなくてはならない熱量)がわかっている場合で,熱流束または熱量で与えられます。 この場合,フーリエの法則から,境界面における温度勾配が一定値であることがわかります。

熱流束一定の特殊な場合として,熱流束がゼロ,つまり,熱の移動がない状態が考えられます。 熱流束がゼロの場合を特に断熱と呼び,フーリエの法則から断熱の時は壁面の温度勾配が垂直である事がわかります。

Fig53

今週の課題

室内側(温度 25℃,熱伝達率 10 W/m2K),外気(温度 0℃,熱伝達率 25 W/m2K)の両面を対流にさらされた厚さ 5.0 mm のガラスの窓(k = 1.0 W/(mK) )を考える。

  1. 室内から外気への損失熱流束を求めよ。
  2. ガラスの厚さを2倍の 10 mm にした場合の損失熱流束を求めよ。
  3. ガラス窓を「厚さ 2.5 mm のガラスの窓」−「厚さ 2.5 mm の空気層(k = 0.025 W/(mK))」−「厚さ 2.5 mmのガラスの窓」 と,間に空気層を含む二重ガラスにした場合の損失熱流束を求めよ。

2021.03.08 更新