ゼミナールBおよび卒業研究 (明治大学理工学部 2017年度秋学期-2018年度)

枡田雄太

テーマ「EFKP型重複対数の法則のマルチンゲールによる証明」

私はゼミナールBと卒業研究を通して確率論・確率過程論について学んだ.その中でもマルチンゲールという確率過程のクラスの1つに特に興味を持った.マルチンゲールとは過去の情報の下での未来の期待値が現在の期待値と一致するという性質で,公平な賭けのモデルとされる.非負のマルチンゲールは確率1で有界であるという性質がある.このことからある命題が確率1で成り立つことをその命題の否定が成り立つならば非有界となる非負のマルチンゲールを構成することにより示すことができる.卒業研究ではEFKP型重複対数の法則についてこの考え方を応用してマルチンゲールによる証明を試みた.EFKP型重複対数の法則とはBrown運動やランダムウォークの収束・発散を積分の収束・発散によって判定する定理である.

卒業論文としては,まず,K.Ito and H.McKean, ''Diffusion Process and their Sample Paths,'' Springer (1965) のMotooによるBrown運動に対するEFKP型重複対数の法則の証明をまとめ,その証明の各部分をそれぞれマルチンゲールを用いて書き換えるということを行なった.

教科書

感想

ゼミの時間では確率論から始まり,確率積分まで学ぶことができ充実したゼミ生活を送ることができた.卒業研究でも興味をもったマルチンゲールに関するテーマを宮部先生に教えていただいた.途中で分からなくなることができても宮部先生と二人で議論しながら進められ,まとめることができて嬉しかった.

明治大学を卒業後は他大学の大学院に移って勉強・研究を進めるが,大学院を受験する際にも多くの助言をいただき,希望していた進路を進むことができ,その点でもとても感謝している.ゼミや卒業研究を通して数学に没頭することができたのは非常に良い経験になった.

小柳貴光

テーマ「バレーボールのルール変更に伴う数値解析」

1999年に改正されたバレーボールのルール変更についての研究を行った.現在取り入れられているラリーポイント制では各ラリー毎に1点入るが,改正前のサイドアウト制では,サーブ権を持っているチームがラリーに勝つことでのみ得点となる仕様だった.ルール変更に伴って,ゲーム終了までにかかるラリーの回数の期待値,分散を調べることで,ルール改正にどのような意味があったのかを知ることを目標とした.

感想

卒業研究前

3年次のゼミナールBから4年次の前期では、確率論に関するテキストを少人数,または宮部先生と1対1で読み進めた.人前で分かりやすく発表することは難しいものではあったが,まず自分の言葉で説明できるようにまで理解することの大切さを学んだ.また,理解するためにどこまで立ち返るべきか,ということを強く考えさせられた.これは数学に限らず,相手の知らない事を伝えようとする場面で重要なことでもあると思う.

卒業研究

4年次の卒業研究は、基本的には宮部先生と1対1でたくさんのご指導をいただいた.プログラムを書く作業は3年生の永井君にも協力してもらった.私がプログラムを書くのが不得手なこともあって,なかなか先に進まないこともあったが,最後知りたいところまで満足のいく考察を書くことができたと感じている.自分で手を動かして新しい事が分かったり結果を推測したりしてそれを確かめる作業は,とても充実したものとなった.