中小企業論

 「中小企業とは何か?」  この問いに答えることは難しい。この問いこそが,中小企業論の出発点であり,到達点であるともいわれている。さらに,この問いは,なぜ中小企業を定義しなければならないのかということへもつながっている。  これまで中小企業といえば,経済的に弱い存在であり,何事につけても大企業のほうが有利であるという見方をする人が多かったと思う。たしかに,下請中小企業の多くは,大企業の厳しい要求に耐え続け,常に厳しい経営を余儀なくされてきていたように思われる。そして,特にバブル崩壊後の長期的景気低迷のなかで,中小企業経営は厳しさを増してきている。  ところが,その厳しい現実とは裏腹に,中小企業への期待は高まる一方である。そうした期待を実現しようと様々な動きが見られるが,その一つとして,新規創業の活性化支援や,ベンチャービジネス支援など,中小企業の新しい側面が,注目されてきているようである。  しかし,中小企業の経営を考えるとき,大企業のそれとは大きな違いを感じる人が多いと思われる。なにが大企業と異なるのか,その理由は何なのか。単に企業規模の差が,経営の差として現れるのかといった疑問も出てくるであろうし,中小企業を研究対象とすることによって様々な疑問が生じるはずである。  それらの疑問と向き合うことによって,日常的な経営経済の動向について,その根底にある問題点などが明らかになってくることもあろう。そして一つのことが明らかになると,また次の疑問へと興味が移っていくはずである。そしてこのことは,経営経済への興味関心をいっそう高めるものであると思われる。  当授業では,中小企業という研究対象を通じて,広く経営経済への興味関心を高めることを目的としている。

     ベンチャービジネス論

 中小企業経営が,厳しい現実にさらされている一方,経済活性化に向けて中小企業への期待は高まるっている。そうした期待を実現しようと様々な動きが見られるが,その一つとして,新規創業の活性化支援や,ベンチャービジネス支援など,中小企業の新しい側面が,注目されてきているようである。  とりわけベンチャービジネスという言葉がよく使われるようになり,あたかもベンチャービジネスが,日本経済の景気回復における救世主であるかのように見られることもあるようだが,果たしてそうであろうか。  これまでの中小企業研究の立場から,ベンチャービジネスというブームをあらためて見直していくとともに,中小企業が日本経済に果たしてきた,あるいは,果たしている役割について検証していこうと思う。  「ベンチャービジネスとは何か」という問いかけを常に意識しながら講義を進めていく。