株主優待制度について 2
株主優待制度は株主平等の原則に反するか否かについて争いがあるが、電鉄業界・航空業界
においては、株主優待制度が利用されてきた。
株主優待制度を考えるには、企業の支店からと投資家の視点からのそれぞれの立場から考える
必要があると考えられる。
◇ Index
│株主優待制度│株主平等原則│原則の内容│特色と効果│
株主優待制度
劇場の入場券、無料乗車券、無料航空券を、それらに関連する事業を行っている会社が株主に交付する
ことは、株主平等原則に反しないか否かが問題となる。これらの優待を受けることは、株主権の内容になって
おらず、会社の営業上のサービスあるいは宣伝の一環にすぎないことから、本来は平等原則とは関係ない。
しかし、株主であることに注目して優待する以上、株主平等原則のゆるやかな適応はあろう。すなわち、垂直
的平等としては、厳密な比例は要しないが、逆転は生じさせるべきでないし、また優待制度によって与えられる
利益が大きく、かつそれを受けうる株主が少数の時は問題がある。水平的平等すなわち同じ持株数の株主間で
の平等取扱いは強く要求される(そして場合によっては、294条ノ2にふれることもあろう)(演習T207[落合])。
とりわけ、金券ショップで優待券を換金できることが多いことにも留意すべきである。(リーガルマインド会社法 P45)
株主平等原則
株主平等の原則とは、株主としての資格に基づく法律関係において、株主は持株数に応じて平等に取り扱わなけ
ればならないとする原則である。
この原則を直接宣言する条文はないが、最も重要な株主の権利である利益配当請求権(293)や議決権(241・T)
につき平等的取扱いの規定があり、また、これらに対する例外や個別に規定されていることから(222など)、平等的
取扱いが原則と解しうる。この原則は一般的な正義公平の理念が団体法においても発展したものであるといわれて
いる。株式は均等な割合的単位であるという定義から、権利も均等であるべきであるといえるし、より実質的には、
典型的な物質社会である株式会社にあっては、社員である株主の個性は全く問題とされず、かつ社員の交代が自由
であるため社員の人的な個性に基づく平等はかえって不公平である。株主はその取得する株式数に応じてそれぞれ
会社資本へ寄与しており、その有する株式を基準とする平等が適切にあることになろう。合名会社では、社員は無限
責任を負うのであり、その点において、各社員は全財産を危険にさらしているという点では変わりがないのに対し、
株式会社は社員の責任は出資額に限られていることに注目すると、リスクに応じた発言権の確保、利益配当を求める
のが株式平等の原則であると説明できる。(リーガルマインド会社法 P42)
原則の内容
@ 各株式の内容が原則として同一であること。
ただし、例外として数種の株式(222)、転換株式(222ノ2)、議決権なき株式(242)が認めれれる。
また単位未満株式(昭56年改正附則18・T)も例外といえよう。
A 各株式の内容が同一である限り、同一の取扱いが行われること。
ただし、例外として、個々の処分行為について不利益を受ける株主が任意にそれを承認する場合があるが、
数種の株式がある場合には株式の種類にしたがって定款に定めのない格別の取扱いをなすとき(222・V)、
または、定款変更や合併が、ある種類の株主に損失を及ぼすときには、種類株主総会(特殊株主総会)の決議
があれば、各株主の個別的同意はいらない(これは「全員に同意」を緩和したものである)(345・346)。また、
相対取引による自己株式の取得は法律が定める例外である。
さらに、株式分割などの特殊な新株発行や株式の併合によって生じた端株の処理(217・220)、少数株主権の要件
(237・293ノ6など)、株主の権利行使に際しての株式保有期間の要件(267・272など)も例外といえよう。
(リーガルマインド会社法 P43)
特色と効果
株主平等原則は、多数決の濫用、会社理事者の恣意的権限行使から、少数株主を保護する機能を有する。
株式会社においては、いわゆる「所有と経営の分離」がみられ、株主相互間の人的信頼関係がないうえ、
資本多数制度(1株1議決権の原則)を媒介として、多数派を代表とする経営者に支配権が集中することから、
株主平等原則の有する少数株主保護機能はきわめて重要な意義を持つ。すなわち、株主平等行為等に対し、
株主の平等的扱いの面から、限界を設けるのである。
株主平等の原則に反する会社の行為(総会議決、取締役会の業務執行の決定、代表取締役会等)は無効である。
(リーガルマインド会社法 P44)
第二九三条 【利益または利益配当の標準】
利益又ハ利益ノ配当ハ各株主ノ有スル株式ノ数ニ応ジテ之ヲ為ス但シ第二百二十二条第一項ノ規定ノ
適応ヲ妨ゲズ且会社ノ有スル自己ノ株式ニ付テハ利益又ハ利息ノ配当ハ之ヲ為サズ
第二四一条 【議決権の数、自己株式・相互保有株式の議決権】
@ 各株主ハ一株ニ付一個ノ議決権ヲ有ス
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