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表面電位を測定するときの注意点

大塚電子株式会社製のELSZ-2SMでは、 \(\zeta\)電位を計算する際に、Smoluchowskiの式を用いる。 \begin{align} u=\frac{\zeta\varepsilon}{\eta} \label{eq:Smol} \end{align} ここで、\(u\)は易動度、\(\eta\)は粘度、\(\varepsilon\)は媒質の誘電率である。この式は、電気二重層の厚さが十分薄いか、粒子の半径\(R\)が十分大きいときに適用できる。電気二重層の厚さを、デバイの遮蔽長\(1/\kappa\)で表せば、 \begin{align} \kappa R \gg 1 \label{eq:Cond} \end{align} の極限で、Smoluchowskiの式が成り立つ。しかし、このような極限状態は、ほぼ実現不可能である。 そこで便宜上、与えられた半径\(R\)に対して、\(\kappa R=10\)を満足するのに必要なNaClの濃度\(C_{10}\)を表1に算出した。 また\(\kappa\)には、拡散二重層に対するPoissonの方程式の解であるGouy-Chapmanの式より、 \begin{align} \kappa = \left( \frac{e^{2} \sum_{i}c_{i}z_{i}^{2}}{\varepsilon k_{\text{B}}T} \right)^{1/2} \label{eq:kz} \end{align} を用いた。ここで、\(e\)は素電荷、\(c_{i}\)と\(z_{i}\)は\(i\)番目のイオンの数密度と価数である。NaClのような1:1の塩の場合、その数密度を\(c\)と表すと、式\(\eqref{eq:kz}\)は以下のように書ける。 \begin{align} \kappa_{1:1} = \left( \frac{2 e^{2} c}{\varepsilon k_{\text{B}}T} \right)^{1/2} \label{eq:k1:1} \end{align} \(\zeta\)電位を測定する祭には、1:1の塩において\(C_{10}\)以上の濃度の分散媒を用いることを推奨する

表1:遮蔽長が粒子半径の10分の1になるNaCl濃度\(C_{10}\)(測定時はこれ以上の濃度が必要)
粒子の半径 [nm] 媒質の温度 [℃] \(C_{10}\) [mmol/L]
5 25 370.4
50 25 3.704
500 25 0.03704

表2では、\(\zeta\)電位測定時に使用した分散媒の塩濃度と粒子の半径から、\(\kappa R\)が計算される。Smoluchowskiの式の成立条件(式\(\eqref{eq:Cond}\))に、測定条件がどれだけ見合っているか判断できる。

表2:試料の塩濃度\(c\)と粒子半径\(R\)から\(\kappa R\)の計算
分散媒のNaCl濃度 [mmol/L] 粒子の半径 [nm] 温度 [℃] \(\kappa R\)
理想は\(\kappa R \gg 1\)
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