非線型光学顕微鏡による分子レベルでの細胞膜損傷の検出

従来の細胞膜損傷アッセイは、物質の細胞への出入りの程度で、損傷の程度を評価しています。例えば、細胞質にあるタンパク質の1種である乳酸脱水素酵素(LDH)が、細胞外に漏出する割合で、損傷の程度を評価します。細胞膜の基本構造は脂質二重膜です。正常な状態では、脂質二重膜を通過してLDHが細胞外に漏出することはありませんが、損傷により細胞膜に小さな穴が開くと、その穴を通過してLDHが細胞外に漏出します。つまり、LDHが通過できるような穴が細胞膜に開かないと、損傷していないと判定されてしまいます。しかし、細胞膜に穴が開いていない状況でも、分子レベルで見ると細胞膜の構造に異変が起きていることが分かりました。


96穴マイクロプレート,非線形光学顕微鏡,マイクロプレートリーダー.


SHGアッセイの様子.


脂質二重膜の損傷過程.

当研究室で開発したSHGアッセイは、細胞膜を特殊な色素で染色して、非線形光学顕微鏡で観察することで、細胞膜に穴すら開かない僅かな損傷を検出できます。正常な状態では、脂質二重膜の脂質分子は、綺麗に配列しています。SHGアッセイは、脂質二重膜の脂質分子の配向の乱れを検出することができます。例えば外部物質が細胞膜に吸着すると、脂質分子の配向秩序が乱れていき、吸着量が増えると細胞膜に穿孔が形成されことを発見しました。これまで見過ごされてきた、様々な医薬関連物質が細胞膜へ及ぼす影響や、脂質分子の配向が乱れた細胞膜の修復機構の解明を目指しています。

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