ポリフェノールと金属イオンによるドラッグキャリアの作製

薬物を患部へ必要な時に望ましい濃度で送達することで、薬理効果を最大限に活かして、副作用を最小限にするドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発が望まれています。理想的なDDSを実現するためのナノサイズのカプセル(ドラッグキャリア)の開発を行っています。ドラッグキャリアの素材は安全である必要があります。そこで、抗酸化作用があって健康食品としても知られているポリフェノールに注目しています。ポリフェノールと金属イオンは、互いに複数個結合し合い、Metal Phenolic Network(MPN)を形成します。MPNのナノ粒子化に成功したので、MPNナノ粒子をドラッグキャリアへ応用しようとしています。


ポリフェノールの一種(タンニン酸)とMPN.


MPNナノ粒子の合成の様子.


正常組織とガン組織の違い.

ガン組織の血管の内皮細胞の隙間は、正常組織より大きく、ガン組織には老廃物を排出するリンパ管が発達していないので、100nm程度のナノ粒子は血管からガン組織へ浸透していき、留まります。また、ガン組織は正常組織と比べて、pHが低くグルタチオン濃度が高いです。ポリフェノールと金属イオンの結合安定性は、金属イオンの種類に依存します。そこで、金属イオンの種類と組成を調節して、ガン組織のpHとグルタチオン濃度では抗ガン剤を放出し、正常組織のpHとグルタチオン濃度では抗がん剤を放出しない、100nmサイズのドラッグキャリアの開発を行っています。

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