ナノ粒子のエンドサイトーシスによる細胞内取り込みの促進

エンドサイトーシスは、細胞膜によって形成される小胞で、細胞外物質を包むことで、細胞内に取り込むプロセスです。その内の一つであるマクロピノサイトーシスでは、伸長したアクチンフィラメントによって内側から押し出された細胞膜が小胞状に閉じることで、細胞外液ごと細胞外物質を取り込むプロセスです。内皮細胞では、成長因子受容体などが刺激されると、いくつかの段階を経て、低分子GTP結合タンパク質であるRasが活性化されます。このRasが、低分子Gタンパク質であるRac1を活性化すると、アクチンフィラメトの伸長反応がおき、マクロピノサイトーシスが駆動されます。ところが、Rasが常時活性型に変異しているガン細胞では、マクロピノサイトーシスが活性化されています。活性化しているマクロピノサイトーシスを利用して、薬物やドラッグキャリアをガン細胞内に効率的に送達することが期待されています。


マクロピノサイトーシス.


蛍光ナノ粒子の合成と細胞内移行の観察.

表面修飾したえ蛍光ナノ粒子.

ドラッグキャリアは生体にとって異物なので、免疫反応により体外へ排出されます。免疫の作用を回避するため、ポリエチレングルコール(PEG)でドラッグキャリア表面を修飾するのが一般的です。PEG化した蛍光ナノ粒子を合成して、ガン細胞に与えると、マクロピノサイトーシスだけでなく、細胞膜を直接透過して、細胞内に移行することが観察されます。ナノ粒子の細胞内移行の効率向上のため、ガン細胞に過剰発現している受容体のリガンドや膜透過性ペプチド(CPP)を、PEG化ナノ粒子表面上に修飾して観察しています。CPPの一種であるオリゴアルギニンは、マクロピノサイトーシスを活性化する作用にあります。そこで、オリゴアルギニンで修飾したPEG化蛍光ナノ粒子を合成して、ガン細胞に与えたら、細胞内移行効率の向上が観察された。

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