11年研究室紹介資料より(2020年4月一部加筆修正)

研究室紹介:明治大学半導体ナノテクノロジー研究室




研究室の目標
 太陽電池やLSIなど高性能化を通じて21世紀の共生社会を実現するための最重要技術である
半導体ナノテクノロジーの研究を行います。シリコンテクノロジーの根幹をなす、1)ナノ材料技術、
2)ナノプロセス技術、3)ナノ評価技術にバランスよく取り組み、トータルパフォーマンスの向上
を目指します。


研究室が求める人材
 ・とにかく実験が好きな人
 ・今まではともかく、これからがんばるぞと決意している人
 ・大学院進学に前向きな人
民間企業や他大学(国内外)、国立研究所との共同研究がとても多いです。積極的に外との
交流に取り組む人を歓迎します。



卒論テーマ(2020年4月現在)

電子デバイスの高性能化
  >>次世代半導体の歪評価
  >>次世代ゲートスタックの研究
  >>最先端LSIプロセスの評価
  >>2次元層状半導体

再生可能エネルギーの創出と有効利用
  >>高効率結晶シリコン太陽電池
  >>半導体ナノワイヤーを用いた熱電発電素子
  >>水素を利用したエネルギー貯蔵
  >>省エネパワー半導体デバイス



家が近くてテーマに興味がある人募集(ただし、大学院進学者のみ)
農工大・・・・中央線 東小金井、
理化学研究所・・・・東部東上線 和光市駅、
物質材料研究機構・・・・TX つくば駅、
産業技術総合研究所・・・・TX つくば駅





Cristal Letters No.35 (2007)より(2013年4月一部加筆修正)


明治大学 理工学部/理工学研究科


小椋 厚志、今井 啓太


【はじめに】
 当研究室では世の中の”役に立つ研究”活動を通して、社会に有意な人材を育成して実社会に
旅立たせることを目的に活動しています。研究の対象は主にSi-LSIの周辺材料・プロセスにかか
わる研究、Si材料に用いる太陽電池・液晶装置用TFT等の結晶工学的な評価などに取り組んで
います。以下、当研究室の概要を紹介させていただきます。


【研究室の構成】(2013年4月現在)
 当研究室の構成は現在、教授1名、助教1名、D3が1名、D2が1名、D1が1名、M2が9名、M1が6名、
B4が12名となっています。明治大学では、専任講師以上のすべての教員は独立した研究室を運営
し、予算やフロアなどの資源もすべて平等に割り当てられます。したがって、本研究室において
もすべての活動が小椋教授のもと、以上のメンバーの協力で取り組まれています。当学科では
学部3年生の4月ごろに研究室の配属が決定し、3年生の後期からゼミ(まずは机上での教育のみ)
で卒業研究の基礎となる勉強をすることになっています。したがって、B3を加えた研究室の人員
は最大30名を超えることになり、ゼミ旅行などでの宴会では大きな宴会部屋が一杯となりなかな
か壮観です。
 学生は研究テーマごとのチームに分かれ、主に修士課程の学生が主体となって研究に取り組み、
学部学生は先輩の研究を手伝いながら基礎知識の習得と研究の実際の熟練に努めます。チームを
組んでの研究・開発が普通となっている現代社会において、学生時代の短い期間に。下積みから
チームリーダまでを経験するこのシステムは、チームワークの重要性を学び、自主性と責任感を
習得するための優れた教育方式ではないかと思っています。
 また当研究室では大学院修士課程への進学率が、学内の他の研究室に比べて高いことも特徴のひ
とつです。明治大学理工学部では、1年から大学院まで同じ場所で教育を行っていることを利用し
て、「6年一貫教育」を大きな特徴として位置づけていますが、そのうちの後半3年間を一つの研
究室で過ごすことは大きな教育成果につながるものと考えています。


【研究設備】
 当研究室の最大の悩みは狭小なフロアです。学生諸君には十分な居住スペースを与えてあげる
ことができずに申し訳なく思っています。とはいえ研究設備は研究を進めていく上での最大の武器
ですので、狭い部屋にぎゅうぎゅうと詰め込まれて配置されています。
 当研究室でもっとも特徴的な装置は、UV/可視ラマン分光装置です。2 mの分光器を備えて0.1 cm-1
の分解能を達成しています。またNEDOの援助を頂き、疑似線状光源を開発することで、200 nmの
空間分解能を得ることに成功しました。また、文部科学省の私学助成のご助力により、FIB/TEMを
導入しました。FIBには電子、イオンの2種が備わり、SEMで観察しつつ、イオンで試料加工
が可能です。デポ銃も2種類備えています。TEMは日本一狭所に設置されているTEMではないか
と思いますが、EDSによる局所分析が可能です。6階に設置されていることもあり、そもそも高
分解能を狙っているわけではありませんが、すぐ下を通る小田急線が運航している時間帯は像質に
問題があるようです。さらに、最高到達温度1400℃弱のSiC高温炉や、簡易型AFM、SEM、レーザ
マーカーなどが当研究室の保有する実験装置です。そもそも能力も設備も限られた自分たちだけで
何かを成し遂げることは不可能です。したがって、最初にも述べたように、外部の研究機関との共
同研究はとても重要です。また、SPring-8等の学内外の共同利用設備も積極的に利用するようにして
います。本稿の読者の中でも、私どもの研究室に興味を持っていただき、”一緒にやりたい”と思っ
てくださる方がいらっしゃれば、是非お声をかけていただければ幸いです。
(加筆:現在、TEMは地下室に移転しているため、振動の影響は少なくなっています。)


【研究の遂行】
 本研究室の特徴はほとんど全てのテーマにおいて、外部研究機関との共同研究を行っていること
です。外部との共同研究は、ともすれば狭い視野に陥りがちな学生たちに、とてもよい刺激を与え
てくれます。中でも産業界との共同研究は当研究室を性格つける大きな特徴となっています。実際
に社会の中で研究・開発に取り組んでいらっしゃる方々との交流は、学生たちの大きな励みとなっ
ています。その中で、議事録や報告書の作成、研究納期の考え方などの、職業訓練の場としても
貴重な機会をいただいています。
 本研究室もうひとつの大きな特徴は、積極的に国内外の学会での発表を行っていることです、大
学が比較的旅費や参加費を援助してくれることもあり、足りない部分は研究費で補ってでも、積極
的に学生による学会発表を奨励しています。学生の発表を聴衆の中で聞くことは、自分自身が発表
することよりもはるかに冷や汗もので、心身ともに大変ですが、学会での”怖い”経験は学生にと
ってかけがえのない経験であり、学ぶことに動機を与えてくれます。時に稚拙な発表が皆様にご迷
惑をおかけすることもあるかと存じますが、大きな心で見守っていただけると助かります。また、
遠慮のない厳しい質問やコメントは、学生にとって貴重な経験ですので、次世代を担う人材の育成
に是非ご協力いただければ幸いです。
 各研究チームは単に独立して自分たちの研究を進めるだけではなく、できるだけ他のテーマに
興味を持ってかかわることを奨励しています。ゼミは週2回のペースで開催し、輪講や研究進捗
の打ち合わせなどを行っています。


【年間スケジュール】
 以下、研究室の年間スケジュールについて紹介します。卒業生を無事送り出し、新入生を迎えて
キャンパスが活気つく4月ごろには研究室のメンバーは秋の国際学会の申し込み締め切りを目前
に、研究の佳境を迎えています。5月の締め切りを無事乗り切ると6月には新しい3年生の配属が
決定し、歓迎のバーベキューパーティを開催します。初回は教員の自宅に学生を招いていたので
すが、さすがにこの人数になると全員を収容する部屋がなく、最近は立川にある昭和記念公園で開
催しています。ちょうど梅雨の時期に当たるため、通年お天気がとても心配です。また、8月の下旬
には、ゼミ旅行に出かけます、夏のゼミ旅行は、3年生の歓迎の意味をこめていますので、勉強抜
きの純粋な息抜きです。秋の応用物理学会を無事に乗り越えると、採択された学生は国際学会の準
備でおおわらわです。当研究室が重視している学会は、IEEE SOI Conference、ECS、MRS、SSDM等
です。年末には春の応用物理学会への投稿準備と卒業する学生たちは卒業論文、修士論文の仕上
げに忙しくなります。年末に目次を仕上げて提出することをめどとしていますので、教員のお正月
はその添削でつぶれてしまいます。学位論文の提出を控えた学生がいる年にはさらに大変です。
卒業論文および修士論文のめどがついた2月の上旬には、就職活動が本格化する前に、2泊3日の
ゼミ旅行に出かけます。春のゼミ旅行の合言葉は「よく遊べ!よく学べ!!よく飲め!?」です。
ゼミではその年ごとにテーマを決めて1冊のテキストを、90分x7コマの時間を使って勉強します。
また、フットサルやテニスなどの運動、前述の大宴会など盛りだくさんの内容です。さらに最終日
には近隣の観光地を巡って帰ることが多く、昨年の富士サファリーパークや今年の河津の桜祭りは
好評でした。
 1月の末に定期試験を終えた3年生はこの頃から本格的に卒業研究に着手します。3年後期から
ゼミに参加していたことと、先に紹介した6年一貫教育のシステムを利用して、「先んずれば人を
制す」の言葉のままに、外部の共同研究者の現場で研究を行う学生にも、なるべく早い時期から研
究を開始することを奨励しています。3月26日の卒業式と追い出しコンパを終え、春の応用物理
学会を乗り越えれば、爛漫たる桜とともにまた新しい年度が始まります。
(加筆:現在、新3年生の配属が4月に変更されており、バーベキューも4月に開催されます。)