第2回 工学文書の作り方(2)

工学文書を作る上で,数式はなくてはならないものである.数式は物理的,力学的な関係等を厳密に示すものであるので,表記上も統一性のあるしっかりした書き方をしなければならない.細かな指定については,各学会等の規定を遵守するべきであるが,ここではごく一般的と思われることがらについて講義を行う.

本講義で身につけた知識が役立つ科目等:
 機械工学実験,ゼミナール,その他レポートの提出が要求される科目.
 卒業研究,大学院での研究,企業での報告書作成など.

2.1 ファイルの保存形式について

旧バージョンとの互換性

大学のPCにはWord2010がセットアップされている.Wordを含むOffice製品は,Office2007の時点で大幅な改訂が行われており(行われてしまっており),標準の設定では旧バージョンと互換性がない.

表: Office製品の拡張子
  Office2007 以降の拡張子 Office2003 までの拡張子
Word*.docx*.doc
Excel*.xlsx*.xls
PowerPoint*.pptx*.ppt

自宅では旧バージョンのOfficeを利用している人も多いと思われるので,今年度の授業では旧バージョンと互換性がある形式でファイルを作成することにする.
以後は特に明記しないが,提出物は必ず旧バージョンと互換性がある形式 (=Office2003までの形式) で作成すること.

具体的な手順

  1. メニューの「ファイル」をクリックし,表示されるメニューから「名前を付けて保存」を選択する
  2. 「ファイルの種類」のプルダウンメニューから「Word97-2003 文書 (*.doc)」を選び,保存する
  3. エクスプローラ画面において,作成されたファイルの拡張子が doc となっていること (docxとなっていないこと) を確認する
ファイルメニュー
図:ファイルメニュー
ファイルの種類設定画面
図:ファイルの種類設定画面

2.2 数式の作成

位置合わせ

数式は読みやすくするために位置合わをすることが重要であり,見た目にも美しくなければならない.一般的には以下の3種類の位置合わせ方法があり,必要に応じて適したものを選べば良い.

数式番号の付け方

式には本文からの引用をするために式番号を付けるのが常識である.数式番号は通常,その行の右端に右寄せで付ける.

本文での数式の引用の仕方

本文中で,式を引用する場合は,式番号を用いて「式1では...」等と用いる.英文中では,"Eq.1 shows ..."等とする.

2.3 実際に数式を入力してみる

ここでは「Microsoft数式 3.0」というソフトを用いて数式を作成してみる

基本的な数式の入力

数式を入力するには,まず,Wordで数式を入力したい場所にカーソルを置いた上で,メニューの「挿入」から「オブジェクト」を選んで「オブジェクト挿入」のウィンドウを出す.

リストの中から「Microsoft 数式 3.0」を選ぶ.すると,以下のような入力用のツールボックスが現れる.

このツールボックスを駆使して数式を入力していく.以下の例を入力して練習してみよ.

等式,不等式

=<+などはキーボードから直接打てば良い.上付,下付の指定はパレットより選ぶ.

  

  

分数,微分

分数や上付,下付などは数式パレットの中から適したものを選ぶ.

  

積分

積分記号などは数式パレットの中から適したものを選ぶ.

  

ベクトル,行列

行列を表す文字は太字(ボールド)にする.これは数式エディタの中のプルダウンメニュー「スタイル」の中から「行列-ベクトル(X)」を選ぶことで設定できる.

  

  

数式ツールとMicrosoft数式 3.0

Word2007より,新しく「数式ツール」が利用できるようになっている.この授業では旧バージョンとの互換性を保つため「Microsoft数式 3.0」を利用した数式の作成方法を紹介しているが,興味のあるものは「数式ツール」も試してみること. 数式ツールを利用する方法は以下の通り:

  1. メニューの「挿入」から「記号と特殊文字」ツールバーの中にある「数式」を選ぶ
  2. 表示されるリストの中から「新しい数式の挿入」を選ぶと,以下のようなツールバーが表示される.
  3. あとはいろいろ試してみてください.

2.4 文献の引用方法

文献の引用をするには通常,文書の最後に「文献」または「参考文献」などの章を設けて,そこに参照した文献のリストを付ける.それぞれの文献には普通通し番号を付けるが,まれに著者と年号を用いて参照することもある.

文献リストの例

引用文献が書籍である場合は,通常以下のようにする.

 [リスト番号] 著者,書籍名,出版元,出版年

引用する文献が,学会や雑誌の論文である場合は以下のようにする.

 [リスト番号] 著者1,著者2,「論文名」,雑誌名,巻,号,ページ,出版年月

著者数が多数の場合は最初の1,2名を書いて以下は省略する.

 [リスト番号] 著者1,著者2,他,「論文名」,雑誌名,号,ページ,出版年月

綺麗に見せるためのヒント:著者の先頭はタブを使って左寄せにして合わせ,その位置を2行目以降の左インデントとする.リスト番号が2桁に及ぶときは,番号([]共)をタブを使って右合わせにするとよい.

英文の論文を引用するときは以下の通り.

論文名は""(ダブルクォート)で囲み,プロシーディングスは「Proc. of ...」,ジャーナルは「J. of ...」などと省略形を用いることが多い.ページは,「pp.最初のページ-最後のページ」とする.

本文中での引用の仕方

文書の最後にリストアップした文献を本文中で引用するには,以下のようにする.

...はPotter等によって示されている[2].

課題

与えられた数式を含んだワード文書を作成せよ.(ピストンクランクの式と説明文も含む).すべての式には式番号を連番で付け,かつ簡単な式の説明文(本文)を付けること.順番は問わない.

同じワード文書中に,参考文献の章を設け,インデントをつけて綺麗にフォーマットしてみよ.さらに,この参考文献を参照して論じた本文をつけてみよ.参考にする文献は各人が持っている教科書等で良い(例:材料力学や流れ学等の教科書).

作成したワード文書をOh-o!Meijiにて提出せよ.なお,文書のフォーマットは前回指定した学会フォーマットに則ること.今回は英語のタイトル,英語の著者名(自分の名前)を付けてみよ.ただしアブストラクトは記入しなくても良い.

提出期限は来週火曜正午までとする.(来週月曜はお休みです)