数式の基本
数式モード
LaTeX文中内で数式を表すためには、記号 $ と $ で挟まれた文字列である数式モード(文集数式)内に書かれる必要があり、またギリシャ語も数式モード内で記述される。
数式モードは、記法 \$...\$ の代わりに、\(
...\) と表記してもよい。
添字の上げ下げ
たとえば、 $10^2=100$ や $x^a x^b =x^{a+b}$ のような数式には上付添字(superscript)として 2, a, b そして a+b が現れている。 また、$a_1+a_2+a_3+\dots +a_9 +a_{10}$ には下付添字(subscript)が使われている。
上付き添字を表すには、数式モード内で記号 ^(サーカムフレックス circumflex あるいはハット記号、ときにはキャレット caret)で表します。 下付添字を表すには、数式モード内で記号 _(アンダースコア、和製英語でアンダーバー)を使う。 添字が1文字や1記号でない場合には ^{...} や _{...} のように中括弧 { と } で囲む。
上の数式は、それぞれ \$10^2=100\$ , \$x^a x^b =x^{a+b}\$, \$a_1+a_2+a_3+\dots +a_9 +a_{10}\$ と表記している。添字を取り得る記号
総和記号 $\sum$(\sum) や 積分記号 $\int$(\int\)は添字を使って、たとえば $\sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1)$ や $\int_0^\infty e^{-ax^2}dx=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{a}}$ のように使うことが多い。
これらはそれぞれ、\$\sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1)\$ および \$\int_0^\infty e^{-ax^2}dx=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{a}}\$ と表記している。
ディスプレイモード
数式は数式モードを使って文章中に沿いながら利用する場合以外に、段落を改めて分かりやすく表示することも多い。 これをディスプレイモードという。
ディスプレイモードには、記号 \$\$ と \$\$ とで挟んで(あるいは 記号 \[
と \]
とで)挟んで原則数式番号を付けない表記法と、
\begin{equation}
.....s\end{equation}
として自動的に数式番号を付ける表記法がある。
原則数式番号を付けないディスプレイ方式で数式を表すには次のように表記する:
%原則式番号なし
$$
....数式の記述....
$$
または
\[
....数式の記述....
\]
数式番号を自動的に連番で付けるディスプレイ方式で数式を表すには次のように表記する:
%連番数式番号付き
\begin{equation}
....数式の記述....
\end{equation}
たとえば、先の表記をディスプレイ形式で次のように表記してみる:
\begin{equation} \sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1) \end{equation} \begin{equation} \int_0^\infty e^{-ax^2}dx=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{a}} \end{equation}
このとき、次のように段落表示されて数式として見やすくなることがわかる。
\begin{equation} \sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1) \end{equation} \begin{equation} \int_0^\infty e^{-ax^2}dx=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{\pi}{a}} \end{equation}分数表現
上記の例で既に登場しているのだが、分数 $\frac{a}{b}$を表すには
\frac{分子の表式}[分母の表式}と表す。 分子分母の表式はどんなに複雑になっても構わない。 たとえば、
P_n(x)=\frac{1}{2^nn!}\frac{d^n(x^2-1)^n}{dx^n}は \[ P_n(x)=\frac{1}{2^nn!}\frac{d^n(x^2-1)^n}{dx^n} \] と表される(Legendre多項式$P_n(x)$のRodrigues公式)。
二項係数 ${}_nC_r$
二項係数を ${}_n\mathrm{C}_r$ で表し、$n$ 個から$r$ 個を取り出す場合の数 $\frac{n!}{(n-r)!}$ で定義する。 ${}_nC_r$ のように左端が下付添字になっている場合、または ${}^tA$ のように左端が上付添字に鳴っている表記を考えよう。 このためには、空文字を想定して空文字の下付添字(上付添字)とすればよい。
LaTeXでは空文字を {} (空白文字を入れずに中括弧 { と } で挟む)で表す。 しかたがって、\${}_nC_r\$ および \${}^tA\$ と表記すればよい。
厳格に言うと、$C$はイタリックであるべきでなく立体Roman体を使って C と表記されるべきものである。 数式の中で立体Roman体を使うには \mathrm{..} を使う。 しがって、\${}_n\mathrm{C}_r\$ と表して ${}_n\mathrm{C}_r$ と表記する。 同様に、三角関数 sin, cos, tan なども数式では立体Roman体で表記される。 そのために、LaTeX では \sin, \cos, \tan が用意されている。 これをつかって \$\sin x, \cos x, \tan x\$ と書いて $\sin x, \cos x, \tan$ と表される。
この例は、美しく読みやすい数式表記には、文字配置だけでなくフォントについても細心の配慮がなされる必要があることを示している。
二項係数は ${}_n\mathrm{C}_r=\frac{n!}{(n-r)!}$ で定義されるが
\[ \left(\begin{array}{c}n\\r\end{array}\right) =\frac{n!}{(n-r)!} \]と標準表記される。 これは次のように表記して得られている:
\left(\begin{array}{c}n\\r\end{array}\right) =\frac{n!}{(n-r)!}
この表記のためには、次のようなに文字の配列配置と左右の記号(括弧など)の大きさの調整することが必要になる。
配列配置 array環境
配列配置のためにはarray環境を使う。 たとえば次のように表記してみよう。 記号 & で区切った配列要素(下の例では3つ)を並べて、各行の要素の最後で改行(記号 \\)して配置するのである。
\begin{array}{ccc} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 % 351 & 513 \end{array}\[ \begin{array}{ccc} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} \]
ここで、{ccc} は各行の各要素(この例では3つ)全てをセンター(Center)に配置する指示である。c 以外に r(右寄せ配置)と l(左寄せ配置)がある。 ccc と rrr と lll とした次の表記
\begin{array}{ccc} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} = \begin{array}{rrr} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} =\begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array}
の結果は次のようになる。 配置の差異をよく観察してほしい(美しい数式は微に渡る配慮が欠かせない)。
\[ \begin{array}{ccc} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} = \begin{array}{rrr} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} =\begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7. \end{array} \]左右の記号の調節
二項係数 ${}_n\mathrm{C}_r$ を配列表示するためには、1行に1要素を2行に配置するのであるから
(\begin{array}{c}n\\r\end{array})
と表記してみると、$(\begin{array}{c}n\\r\end{array})$ となる。 左右の括弧 ( と ) が2行に配置したものに対して小さくなって美しくない。
このために、 \left記号 および \right記号 を使って
\left( \begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} \right)
のように自動調整を試みると
\[ \left( \begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} \right) \]などと表記される。
ただし、中括弧 { と } の自動調整のためには \left\{ および \right\} とバックスラッシュを付けて表記する。
左右記号の自動調整は常に左右を実際の記号で挟む必要は無い。 たとえば、次のように右記号を \right. とピリオド (.) として表記する。
\left[ \begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} \right.すると、 \[ \left[ \begin{array}{lll} 1 & 3 & 5\\ 13 & 35 & 51\\ 135 & 351 & 513\\ 3 & 5 & 7 \end{array} \right. \]
となって、右側には記号は現れない。 右側(または左側)の記号がないからといって、\right(または\left)表記を省略することはできないのである。 上の例のように \right.(または \left.)と表記する必要がある。
この記法の応用して、次のような表式が可能になる。
\[ f(x)= \left\{ \begin{array}{ll} -x^2 & \mbox{$x<0$ のとき}\\ x & \mbox{$0\leq x <1$ のとき}\\ x^3 & \mbox{$x\geq 1$ のとき} \end{array} \right. \]これは、数式内でテキストを利用するための \mbox{...} を使って、次のように表記されている。
f(x)= \left\{ \begin{array}{ll} -x^2 & \mbox{$x<0$ のとき}\\ x & \mbox{$0\leq x <1$ のとき}\\ x^3 & \mbox{$x\geq 1$ のとき} \end{array} \right.