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後藤先生が、VASTから名誉博士学位を授けられました。
記事作成日: 2011年12月13日
後藤四郎教授が、VAST (Vietnamese Academy of Science and
Technology)から名誉博士学位を贈られました。12月9日(金)に、VASTで授与式が
ありました。
VAST サイト
このことに関して,後藤先生よりメッセージをいただきました.
VAST(正確には,Vietnamese Academy of Science and Technologyと云います)は,ベトナム国立の大学院大学(研究・教育機関)で,Institute of Mathematics, Hanoiはその一部です。明治大学と比較しながら説明しますと,VASTが大学全体で,Institute of Mathematicsは,各学部に相当しますが,VASTは研究を主要な使命としていて,教育機関としては大学院しか持っていません。学生たちはすべて,修士課程か博士課程の学生です。
ベトナムでも,最近は多くの私立大学が設立されていますが,教育水準には課題が多いようです。国立・私立を問わず,大学は基本的には修士課程までしか備えず,博士課程の訓練は,外国に送り出すか,またはVASTが一手に引き受けているのが実状です。大学学部を卒業した人々は,VASTの大学院に進学するか,すぐに大学に職を得て,傍ら修士課程に在籍して研究者としての訓練を受けるようです。従って,大学教員の殆どすべてが未だ博士の学位を持っておらず,各大学の教員は,在職のままVASTに学生として在籍して,博士の学位を取得し,所属大学に帰任すると言うやり方をしているようです。
従って,VASTは,ベトナムでは(日本で言えば,旧帝国大学をすべて合わせたような)強大な組織であって,ベトナムの学問研究の将来に対し,重い責任がある組織です。
さてMIMSはIMVAST (Institute of Mathematics, Hanoiのことです)との間に,研究・教育に関する協定を結んでいます。この協定は,本学の科学技術研究所重点研究費を資金に,2008年に横浜で開催された国際会議
Commutative Algebra in Yokohama, March 17-21, 2008
で調印されたものです。先方はIMVASTの所長であるNgo Viet
Trung教授,当方はMIMSの副所長である後藤が調印しました。正式の文書はMIMSが保管しています。
協定の目的は下記の2点です。
? 両研究所の研究者の相互交流と派遣,共同研究実施
? 両研究所に所属する大学院学生の相互交流と共同研究指導体制の樹立
上に述べたように,IMVASTは数学研究所であり,かつ大学院大学です。学部組織は在りませんが,大学院は修士課程・博士課程を備えていて,博士学位取得後もポスドクとして研究活動に専念できる体制があります。繰り返しになりますが,IMVASTはベトナム最高の数学研究機関で,ベトナムでは比肩するもののない,非常に強力な存在です。
この協定は,既に2001年から始まっていた日本とベトナムの間の「Commutative Algebra(可換代数)」の共同研究集会
Japan-Vietnam Joint Seminar on Commutative Algebra
開催(ベトナムと日本で隔年開催。跳んでいる年もありますが,今年は第7回目が,12月12日―16日にベトナムのQui Nhonで開催されました)を基盤に,日本学術振興会の論博事業による大学院学生(とはいっても,修士課程は修了し,ベトナムの大学の専任教員をしている人々です)の本学受け入れ(3名,1名が学位取得,1名は今年度に学位取得の予定,あと1名は継続中)などの活動を行っています。ベトナムのHanoiで開催されるJapan-Vietnam Joint Seminar on Commutative Algebraには,本学の大学院学生もこれまでに多数出席し,単なる参加ではなく講演を行うなどの実績があり,大学院GP活動の一つの目玉です。他に,ベトナムからは,GP経費で,延べ20名を超える研究者を本学に招聘しています。私たちとIMVASTの研究者の間には,すでにかなりの共同研究実績がありますし,日本側からは,30名を超える研究者(他大学の研究者を含めます)が毎年参加しています。この活動はベトナムの若手研究者だけではなく,ベトナムの可換環論を背負っているNgo Viet Truong, Nguyen Thai Hoa, Nguyen Tu Cuong教授たちにとっても,非常に有意義なものです。
今回の名誉博士学位の授与は,後藤個人の学術活動とJapan-Vietnam Joint Seminarを経由したベトナムの若手研究者に対する支援活動に対して授与されたものですから,個人の名誉と云うよりも,資金を提供してくれた日本政府と明治大学,一緒にベトナムに渡り10年間に渡って共同研究と議論に参加してくれた日本人研究者たちの貢献に対する感謝の気持ちの現れであると,私は考えています。
後藤四郎
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