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メイン学科紹介「魅力ある大学院教育」イニシアティブ社会との関りを重視したMTS数理科学教育

「魅力ある大学院教育」イニシアティブ

記事作成日: 2006年2月24日
社会との関りを重視したMTS数理科学教育
MTS(マルチトラックシステム)数理科学教育
MTS数理科学教育?3つの柱
現象数理コース
理論数理コース
数理教育コース
プログラムが開くキャリアパス
終わりに - 私達の願い

社会との関りを重視したMTS数理科学教育

明治大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻数学系主任 数学科長 教授 砂田利一

平成17年度文部科学省助成事業「魅力ある大学院教育」イニシアチブに、明治大学大学院理工学研究科数学系が申請した大学院教育プログラム「社会との関りを重視したMTS数理科学教育」が採択されました。

今年度から、文部科学省は「魅力ある大学院教育」イニシアチブという事業を始めました。これは、若手研究者を養成するために特色ある教育システムを実行している大学院教育機関を選び、拠点として支援するという事業です。

厳正な審査の結果、いくつかの大学が重要拠点として認可を受けることとなりましたが、私達が明治大学大学院研究科で行っている教育システムも、この事業の適用を受けることになりました。

理工農系の大学では計168件の申請があり、43件の申請が採択されました。採択された研究科の多くは、旧帝大など旧国立大学であり、私立大学では、明治大学を含めてわずかに2大学という、採択状況でした。このような厳しい審査を勝ち抜いて採択されたことを、私達は非常に大きな誇りに思います。

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MTS(マルチトラックシステム)数理科学教育

大学院に「MTS(マルチトラックシステム)数理科学教育」の下記3コースを開設し、社会との関わりを重視した教育を展開します。

現象数理コース
自然や社会現象を数理的に理解し、それらの記述と解析を目的とする、新たな数学分野「現象数理学」の研究開発を行います。
理論数理コース
代数学・幾何学・解析学という伝統的な「理論数学」の研究開発を目的とします。
数理教育コース
広い数理科学の知識を持ち、数学の魅力と面白さを社会との関りの中で子供たちに伝えることができる、優れた教員の養成を目指します。

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MTS数理科学教育?3つの柱

これまでの日本の数学教育は、「孤立した形」で数学を教える傾向が強かったように思われます。私達のプログラムは、この点に関する反省の下に、企画されました。他の学問分野・技術や実社会との関りの中で、数学が果たしている役割とその重要性を理解すること、これを通して数学学習の動機付けを持つといったことに重点を置いた教育を考えています。具体的には、現象数理コース・理論数理コース・数理教育コースという3コースを開設します。

繰り返しますが、一番大切なことは、3つのコースが有機的に組み合わさっていて、分離独立したものではないということです。大学院では複数指導担当制を実施し、受講学生達は3つのコースの中から、主たる一つのコースの他に、もう一つのコースを副コースとして、履修あるいは聴講するよう求められます。

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現象数理コース

現象数理コースで行う教育用セミナー「現象と数理」は、実社会の最先端専門家によるオムニバス形式のセミナーです。数学系の全学生を対象としており、グローバル・ビジネス研究科からも参加して頂きます。秋葉原サテライトキャンパスを通して、広く社会に公開される予定です。現象数理学は新しい学問分野であって、数学の基礎分野と理工学・生物学・社会学・経済学などとの境界(インターフェース)を目指し、現象の数理モデル構築・シミュレーション・解析を行い、諸分野との共通言語という可視化という手段を用います。現象数理コースは、このような数理科学的手法に熟練することを目標とするコースです。

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理論数理コース

理論数理コースは、代数学・幾何学・解析学という伝統的な学問分野で、研究者を養成することを目的とします。私達教員が運営する研究機関「数理解析研究所」では4つの分野(代数学・幾何学・数理解析学・現象数理学)で、定期セミナーを開催しています。いろいろな大学から、研究者や大学院学生が参加しています。このコースの受講生は、定期セミナーを通して数学研究の第一線を体験し、自らも講演をして、研究成果の発表を行います。

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数理教育コース

数理教育コースでは、ジョブインターンシップや現職の教員を助言者とするセミナーを開催します。子供たちに、数学の面白さを伝えるだけではなく、社会との関りの中で数学がいかに重要な役割を果たしているかを伝え、理解させることができる、そのような教員の養成を目指します。既に明治大学では、リバティーアカデミーの講座の一つとして「教員採用試験準備講座」を開講してきました。数学科からは、この講座で訓練を受けた10名前後の受講生は、全員が公立の中・高等学校に採用されています。実務的な訓練とは別に、MTS数理科学教育では、教員になる学生達には、副コースとして現象数理コースや理論数理コースの履修や聴講を求めます。現象数理コースで数理科学的方法を学び、実社会で数学がどのように使われ、いかに重要な役割を果たしているかを理解すること、理論数理コースで数学を深く学ぶことは、21世紀の日本の数学教育において、非常に大切なことであると私達は考えるからです。このプログラムに取り組む私達の目標は、長い時間のスパンの中で、MTS数理科学教育で育った学生達が教員として高等学校や中学校で子供達を教え、数学が実社会で果たす役割に深い興味を持った子供達が、やがて明治大学に進学してくるという、そのような流れを作り上げていくことにあります。

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プログラムが開くキャリアパス

ファイナンスに興味のあるA君

3年次まで代数学・幾何学・解析学など数学の基礎的な勉強をした後、4年生になったA君は、現象数理コースの講義である「理工学研究科総合講義C」を受講します。「理工学研究科総合講義C」は、グローバル・ビジネス研究科の先生による講義で、金融工学、応用金融工学、証券投資論などを題材にしています。この科目は大学院生向けの授業科目ですが、6年一貫教育体制の下、明治大学理工学部では大学院の科目を学部4年生で履修し単位を取得することができます。大学院へ進学したA君は、主コースとして現象数理コースを履修し、副コースとして理論数理コースを選択しました。現象数理コースで数理科学的手法を学ぶために現象数理特論Aを受講し、理論数理コースではファイナンス業務で必須となる確率論を学ぶために数理解析特論Aを受講します。前期課程修了後、後期課程に進学したA君は博士の学位を取って卒業します。就職先の会社でファイナンスの業務を取り仕切るかたわら、明治大学グローバル・ビジネス研究科での非常勤講師も勤め、次世代の若者への教育にも意欲的に取り組んでいます。

教員志望のBさん

3年次まで代数学・幾何学・解析学の勉強をしてきたBさんは、大学院の先輩達の話を聞き、4年生のとき、数理教育コースの教育用セミナーへ参加を試みます。現場の先生のお話を聴講している間に、優れた教員になるには、もっともっと深く数学を学ぶことが大切ではないかと考えるようになりました。幾何学に興味を持ったBさんは、卒業研究で幾何学を選択しますが、幾何学をより深く学ぶ決心をして大学院へと進学します。大学院では、主コースとして理論数理コースを選び、幾何学特論Aを受講しました。副コースは数理教育コースを選び、数学課題研究でユークリッドの「原論」や双曲幾何学を勉強しました。前期課程修了後、高等学校で教鞭を持つようになったBさんは、正規の授業以外に自由研究として、意欲のある生徒たちに空間の曲線や曲面について解説しています。

後期課程への進学・経済支援体制

前期課程を修了して修士の学位を取得した後は、後期課程への進学の道が開かれています。明治大学には、「研究者養成型助手」という優れた制度があって、後期課程の大学院生を経済的に支援しています。後期課程の1年次は、数理科学研究所のリサーチアシスタント、2年次以降は在学のまま理工学部助手に採用されことが可能であり、後期課程3年間のあいだ、リサーチアシスタントあるいは助手として給与を貰いながら、研究に打ち込むことができます。この間、国の内外の研究集会やスクールに派遣され、研鑽を積みます。数理科学研究所の定期セミナーに参加し、自分でも研究成果を発表し、理学博士の学位を取得します。

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終わりに - 私達の願い

コンピュータの発達や実験データの蓄積により、「生命とは何か」というような未解明の問題にまで、深い知見が得られるようになってきています。このような状況を数理の視点から眺めるとき痛感されることは、物事の本質を明らかにし、いざその構造を解明しようとする最終段階において、数理科学的方法の果たす役割の大きさです。社会のさらなる発展と人々の福祉のために、今こそ要求されることは、一人でも多くの人がこのような数理的解析の力を身につけることではないかと私達は考えています。自然と社会と人間に対する繊細で豊かな理解力を培うため、基礎から積み上げた広範で堅実な数理的知識を身につけようとすることも、社会人として非常に大切な努力の一つなのです。経済現象・生命現象・医学的問題等に数学的記述を与え、数学との間に橋を架けること、21世紀の数理科学はこのような「社会との関り」を通して発展するに違いありません。

我が数学系は、代数学・幾何学・解析学という伝統的な基礎部門のうえに、工学・生物学・経済学・社会学など諸分野のインターフェースで「現象の数理」とでも呼ぶべき、新たな学問分野を創造することを第一の目的としていますが、同時に将来の数理科学を担う人材の育成も目指しているのです。大学院学生達は数学系の営為に参加することにより、数学の知識をより確実に習得するだけではなく、モデリングやシミュレーションなど、数学的知識が生きる数理科学の「現場」を豊富に体験することができます。数学系の願いは、彼らの前に研究の対象として限りなく大きな「数学・数理科学的世界」が開かれることだけではなく、学生達が社会にとってかけがえのない有為の人材となり、巣立って行くことにあるからです。本プログラムの基本コンセプト「社会との関りを重視した数理科学教育の構築」は、まさにここに原点を置くのです。

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関連リンク

社会との関りを重視したMTS数理科学教育
11月12、13日 大学教育改革プログラム合同フォーラム
現象と数理セミナー
理工学研究科総合講義C
明治大学数学教育セミナー
12月1日 明治大学技研懇話会
2月17日 ラウンドアップフォーラム−取組報告会開催−
4月7日 新入生・父兄合同ガイダンス報告

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