『プランB』への期待 名付け親の責任

西川伸一『プランB』第19号(2009年2月)40頁。

 『もうひとつの世界へ』第18号(2008年)の69頁に、わたしがその後継誌名の名付け親であることが「暴露」されている。号数は『もうひとつ』を引き継ぐわけであるから、誌名の変更は3年を区切りとした新規まき直しのシンボルといえよう。
 昨年11月の編集会議の折、その旨の提案が編集長からあり、編集委員の宿題として新誌名案をメールで出し合うことになった。わたしとしては、いかにも旧・新左翼を連想させるおどろおどろしい名称は避けたかった。遠足の計画を立てるときの雨天対策を、英語で「plan B」というと聞いたことがある。それを思い出し、社会の代案という意味に応用して誌名案とした。
 さて、『プランB』の大きな特徴は、3年後に読者が1・5倍にならなかったら廃刊すると、退路が絶たれていることであろう。廃刊の条件をあらかじめ公言する雑誌などまずない。引き続き編集委員をつとめさせていただくとともに、『プランB』がフェードアウトしないよう、名付け親として「営業活動」も果たさなければなるまい。
 硬派の雑誌ばかりか、『月刊PLAYBOY』も廃刊となるご時世である。1・5倍が相当険しいハードルであることは覚悟している。しかし、手触りできる紙媒体はバーチャルなウェブ情報とは違って、どっしりとした存在感がある。たとえば、各社の編集者が列をなすほど売れっ子作家となった佐藤優は、紙媒体の手応えをこう語っている。
「情報をインプットするという意味でも、私は紙媒体のほうがいいと思っています。頭に入りやすい。……私の場合、インターネットだったら紙から吸収する情報量の二十分の一くらいしか入ってきませんね。やはり紙をペラッ、ペラッとめくらないと入ってこない。」(『文藝春秋』2008年12月号、179頁)
 発行部数からすれば、本誌などごまめの歯ぎしりにすぎないかもしれない。それでも、「ペラッ、ペラッと」本誌をめくれば、たちまちに「いま」が抱える諸課題の断面が鮮明に浮かび上がり、それにまつわる喜怒哀楽が共有される。そんな雑誌でありたい。その輪が広がるにつれて、「プランB」で示されたアイデアは次第に「プランA」へと「格上げ」されていくことであろう。
 『プランB』がインターネット万能時代に対する「もうひとつ」にもなって、読者の心に届く内容満載となるよう、誌面の充実を今後もはかっていきたい。

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