大学で学ぶということ〜さあ、時間主権極大の季節だ!

   西川伸一  *『政治経済学部1998年度学部ガイド』掲載

 ぼくが好きな映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」に出てくるようなタイムマシンがいま現れて、「おまえの望む時代に行かせてやる」といわれれば、ぼくは即座に「1980年へ」と答えるだろう。1980年、ぼくは大学に入った。苦い思い出の多い4年間だった。もっと本を読めばよかった、もっと映画を見ればよかった、もっと恋愛を・・・。でもぼくがもう一度やってみたいと思うのは、1979年以前でも1984年以降でもない。やはり大学の4年間なのである。

 「男はつらいよ」シリーズでの寅さんの名セリフの中で、ぼくがいちばん気に入っているのは「おれのとりえはいつも暇だってぇことよ」だ。確かに、寅さん同様、大学生もお金はないかもしれない。しかし、時間はたくさんある。なぜ、寅さん映画があんなに受けたかといえば、彼が自分の時間を腐るほどもっていて、見る人のあこがれを誘ったからだろう。「オレもカイシャなんかやめて、寅さんみたいになりたい」と。

 もちろん、だれでも1日は24時間である。が、自分の自由になる時間、いわば可処分時間を最ももてるのは大学時代ではないか。高校までは、定期試験や受験の準備、部活動などで忙しい。社会に出れば、セブンイレブン労働(朝7時から夜11時まで働く)や出世競争が待っている。つまり、主権という言葉を使えば、大学時代は人生のうちで時間主権が極大に保証された季節だと思う。

 こんな好機をむだにする手はない。しかも、大学での勉強は受験が目的ではない。学ぶこと自体が目的となる。やりたい勉強をとことんすればいいのだ。この点に無自覚で、バイトや遊びに熱心な学生たちをみると、カリカリしてくる。代われるものなら代わりたい。

 少しは、1980年に戻りたいというぼくの気持ちがおわかりいただけただろうか。なに?おまえがやってるコッカロンとは全く関係ない話じゃないかって?「それをいっちゃあー、おしめぇーよ」


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