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「第19回 奥行き反転錯視」への補足

補足1.問題の回答



 目が正面を向いている画像は、どこから見ても見ている人の方を向く。見る方向を変えると、絵の中の目があらぬ方向を向くということはない。だから、天井に描かれた龍の目がどこから見上げても見る人の方を向いているのは、当たり前である。そのことは、別に特別ではない。
 たとえばカメラの方を向いて取った自分の写真をいろいろな方向から眺めてみれば、このことが確認できるであろう。

補足2.奥行き反転錯視に関する参考文献

【逆遠近絵画】
N. J. Wade and P. Hughes, Fooling the eyes; tromppe L'oeil and reverse perspective. Perception, vol. 28 (1999), pp. 1115-1119.

【ホロウマスク錯視】 たとえば、
グレゴリー(金子隆芳訳)、「インテリジェント・アイ 見ることの科学」、みすず書房、東京、1972.

【クレーター錯視】
V. S. Ramachandran, Perception of shape from shading. Nature, vol. 331 (1988), pp. 163-166.

【全般的な解説】
杉原厚吉、「立体イリュージョンの数理」、共立出版、東京、2006.

補足3.講義で用いた立体につて

(1)奥行きが反転する立方体の壁

 下から照明を当てることによって奥行きが反転する立方体の壁は、横から見ると二つ目の画像のような形をしています。

 この立体と同じように奥行きが反転する立体の例は、次の本にもあります。

立体トリックアート工作キットブック (杉原厚吉著、金の星社)
 この本には、4個の錯視立体の展開図が厚紙に印刷され、ミシン目が入れてあります。その中の「斜面に並ぶ家々」という立体は、立方体の形をした家が並んだものですが、奥行きが反転する錯視が起きます。


まさかのへんな立体 (杉原厚吉著、誠文堂新光社)
 立体20個の展開図が載っています。その中の「斜面に並ぶ家々」が奥行きが反転する立方体が並んだものです。ただし、こちらは、紙工作するためには、展開図を厚紙にコピーしなければなりません。

(2)逆遠近絵画

 

 一つ目の画像は、ビデオの中で紹介した逆遠近絵画のスナップ写真ですが、これはスペインの宮殿の中庭の画像から作りました。二つ目の画像が元の画像です。この画像の一番奥に正面を向いて立っている建物の部分を残し、右の建物、地面、空の3つの部分を,それぞれ切り離して、周辺へ行くほど遠くなる面へ貼りました。その結果、一番遠くの建物がカメラに最も近く、地面や右の建物はそれより後ろへ遠ざかるように伸びた構造になっています。三つ目の画像は、この立体を別の方向から見たところです。

(3)うねる海面



 一つ目の画像は、ビデオの中で示した海から見た陸の風景の逆遠近絵画のスナップ写真です。これは、二つ目に示した画像から作りました。この画像の陸の部分と海の部分を切り離して、三つ目の画像に示すように加工し、それを二つに折れた面に,四つ目の画像のように貼り付けました。その結果、陸と海の境界部分がカメラに最も近く、海の領域は下へ行くほどカメラから遠ざかる斜面となっています。

(4)ホロウマスク

 向けた方向と逆を向くように見えるホロウマスクは、お面の裏側を見たとき起る奥行き錯視です。ここでは、お面の代わりに球面の一部を裏側から見たものを使いました。具体的には、ピンポン球を、直径の3分の1位のところで切断し、裏側に顔の絵を描いたもの(二つ目の画像の右側の立体)です。