「立体錯視の世界」へ戻る

「第14回 三方向変身立体」への補足

補足1.大きく作るとどのような違和感がなぜ生じるのか?

 三方向変身立体は直角立体の垂直投影図を使って作りますが、この投影図は小さめに作るのがコツです。大きく作ると,違和感が出てきます。
 左の写真は、少し大きめの投影図を使った変身立体ですが、直接みた姿も、鏡の中の姿も、上の方が小さくなっているように見えると思います。つまり、垂直なはずの稜線が内側に傾いているように見えます。これが、大きく作ったときに生じる違和感です。
 大きく作ると違和感が生じるのは、対象(すなわち水平に置いた絵)を見た時に生じる遠近法的効果が、知覚される立体から生じるはずの遠近法的効果と食い違うためです。実際には水平に置いた絵ですから、上の方が遠くにあるために小さめに見えます。一方、知覚される立体では上の方はそんなに遠くはないので、小さくなるのは変だと脳が感じてしまいます。これが違和感の理由です。

補足2.三方向変身立体の作り方

 三方向変身立体は、立体の絵に旗などを立てただけのものですから、誰でも簡単に作れます。でも、違和感のない視覚効果を生むためにはいくつかの工夫が必要です。それを次に列挙します。
 (1) 面と面が直角に接続されてできる直角立体を選んで、その投影図を作る。
 (2) 投影図を作るときは、垂直に投影する。(中心投影図を使うと、直接みた姿はよりリアルになりますが、鏡に映した姿に違和感が生じます。)
 (3) 投影図に現れる3組の平行線が互いに120度をなす方向に投影する。(そうすると、鏡の角度などが明確になって扱いやすくなります。)
 (4) 鏡は、一組の平行線が網膜上で垂直を向くように調整する。
 (5) 3つの方向から見たとき、いずれも重力に対して安定な姿勢に感じされるように、立体と投影方向を選ぶ。(例えば,立体の中央付近に高い塔が立っていると、投影図を回転して見たとき、壁から横に突起が突き出して安定感の乏しい立体に見えてしまう。)
 (6) 追加する3Dの小物は、旗のように細い支柱で立てられるものを選び、絵の中の出っ張った頂点に立てる。(面の上に置くなどすると、鏡の中では垂直な面に置かれていることになって矛盾します。)
 (7) 投影図は小さめに作り、撮影するときはカメラをなるべく遠くに置く。(その方が、遠近法的歪みが目立たなくなります。)