雪氷物理学研究室

雪氷物理学研究室を希望する学生へ

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研究テーマについて

雪氷物理学研究室にふさわしい研究テーマは、雪や氷、クラスレートハイドレートのような水分子を含む結晶の研究です。このような結晶は、空の上、海の表面、海底下、生体内などさまざまなところに存在するので、目指す方向性も地球科学、環境科学、資源工学、低温生物学など多岐に渡ります。我々は環境や資源や生体の専門家ではありませんが、結晶成長の専門家としてこれらの分野への貢献を目指しています。
さらには、ストームグラスの研究のように水の結晶でなくとも「形態形成」というキーワードにより実施しているテーマもあります。基本的に面白そうなことであれば、強い縛りはかけずになんでもやってみようというのが本心です。

具体的な研究テーマは以下の通りですが、新たに研究テーマを立案することも大歓迎です。
1.THFハイドレートの成長過程の基礎的研究
2.堆積物中でのハイドレート霜柱の成長実験
3.ストームグラスの研究
4.一方向凝固法による氷の成長における形態形成・濃度対流との相互作用

基礎知識

結晶成長学という学問を勉強する必要があります。このためには、熱力学や統計力学の基礎的な素養を必要とします。大学院科目「結晶成長学特論(長島)」の聴講を大いに勧めます(先取り履修するしないにかかわらず)。

雪氷研向きの性格

氷の結晶は誰でも簡単に作れます。冷凍庫に水を入れればいいだけです。言い換えると、研究で独自性を出すための第一歩は、どれだけこだわって結晶を作ったか、つまり、結晶作りの職人の技を身に付けることです。これにより、冷凍庫の中の氷とは全く異なる真の結晶の姿を浮き彫りにすることができます。
このために、装置の設計や改良が必要な場合もあります。
また、前任者(先輩)や教員が指示するとおりに実験を行なっても、そう簡単には思い通りの結晶は作れません。言葉では説明しつくせない部分に熟練の技があります。不慣れな扱いや、ほんの少しの気の緩みなど、様々な要因により理想とする美しい結晶の生成は阻害されてしまいます。このような熟練というファクターは自分で感じ取ってもらうしかありません。このためには、何日も何週間も何ヶ月も失敗を繰り返しながら技を極める向上心・忍耐力が要求されます。最後には、あなたの思い通りに結晶の成長を操ることができるようになると実験はどんどん楽しくなっていきます。

結晶の気持ちを理解する

それは結晶成長の素過程を思い浮かべることです。結晶の成長実験を行なうときに我々が目にするものは、基本的に結晶の形や大きさの時間変化です。ところが、その根底では熱や物質の拡散現象が起きています。また、分子は結晶の格子位置へと次々に配列していきます。結晶の周りの液体は流動しているかもしれません。
結晶成長の研究者は、このような目には見えない素過程を頭に思い描きながら結晶の成長を理解しようとしています。
思い通りに結晶を作れないときや、実験には成功したがその結果の解釈に悩むときには必ずその素過程から考えるとおのずと方向性が見えてきます。
見えない結晶の世界を早くイメージできるようになりましょう。
結晶成長の素過程:
1.結晶化の潜熱の拡散
2.結晶化物質の拡散
3.不純物の拡散
4.界面付着カイネティクス
5.液相や気相中の対流
などなど様々です。また、実験手法により、どの素過程が支配的か異なります。

まとめ:熟練の技+素過程をイメージする想像力

研究の詳細については、研究内容へ移動し、ご覧ください。

卒研を始める前に

卒研を始める前に

答えのないことに挑むということ

卒業研究、つまり、「研究」は「物理実験」や「授業」とは異なり、答えは分かっていません。また、解に到達するまでの道筋も示されてはいません。
みんなはこれまで答えのある問題に立ち向かってきました。研究においては、大きく取り組み方を方向転換する必要があります。答えにたどり着くことを急ぎすぎてはいけません。
答え(新発見)にどうやったらたどり着けるか試行錯誤(仮説を立て)し、実験により検証する、だめならまた考え直す。研究とはひたすらこの繰り返しです。暗闇の中をさまよい続ける感覚です。大きな壁の前で前進できずに立ち止まり続ける感じです。ところが、少しずつ視界が開け、先が見えてくると、とても大きな喜びを得られます。悩んだ期間が長ければ長いほど喜びも大きいものです。

このためには、自分が抱えている問題を考え続けることが必要です。ところが、24時間365日解けない問題を考え続けるなんてできません。気力が持ちません。
大切なことは、頭の中に考えなければいけないことの引き出しを作ることです。机に向かって考える必要はありません。通学中の電車の中、ご飯を食べているとき、お風呂に入っているとき、布団に入って寝るまでの時間、思いついたらいつでも引き出しを開け考えることです。自分にとって一番「ひらめき」を得やすい時間や方法を見つけ出してください。私はなぜか夜中の3時頃に良くひらめきます。朝起きて忘れてしまうといけないので、思いついたことはすぐにメモを取るようにしています。

研究を始めて間もない頃のひらめきは、勘違いであることも多々あります。夜中の3時にひらめいたことは翌日考えるといまいちだったことも多々あります。よくよく調べてみると世界の誰かが既に明らかにしてしまっていることかもしれません。
「ひらめき」から「新発見」にたどり着くには、根気が必要ですので、とにかくあきらめずに頑張るしかありません。
卒業後にどのような進路に進もうとも、問題を克服するための鍛錬はとても役に立つと思います。

研究とは

研究の一連の流れは:
研究テーマ探し(文献調査)、研究の立案、装置の開発、実験、結果の解析、考察、結論、学会発表、論文発表

この一連のプロセスをスタートから始めても良いし、前任者の研究を引き継いで実験からスタートしても良いです。

研究テーマ探しから自力で始めたい人へ:

完全に白紙の状態からスタートする場合には、指導教官に研究計画案を示し、納得させる(言い方を変えれば、面白がらせる)、必要があります。

結晶成長学の基礎を学びつつ、学術論文を探してヒントをつかみ、また必死に試行錯誤して、研究計画をどんどん提案してください。

ここで、どんな研究を面白いと思うか。
それは、誰もやっていないこと。
みんながやっているけど、違う方針でやってみる
みんなが常識と思うことを疑って、新たな仮説を提案する。
など、オリジナリティの高い、世界で初めてを目指す研究は大歓迎です。

メモを取る

極めて基本的なことですが、教員や院生や友達のアドバイスや議論から分かったこと感じたこと注意すべきことなどなど、大事なことは必ずメモを取りましょう。さらに、頭の引き出しに入れておいて、思い出すたびにその意味を考えて、次回のミーティングや報告書では、どんなことでも良いので、自分の考えをアピールしてください。
大切なことを聞き流し、同じことを催促されるようではだめですよ。

研究室内での共同生活

これもとても基本的なことですが、研究室はみんなで共有するスペースです。このため、他の人が勉強や実験に専念しているときに、音楽・テレビ・ゲームを禁止します。また、一人でいるときも、音楽を聞きながら実験をしてはいけません。五感を総動員して、頭をフル回転する上で好ましくない上に、装置の不具合など音により気づける情報を遮断してしまいます。

共同で使用する機器類(電子天秤、超純水など)もありますので、整理整頓とともに、高価な装置を壊さないように大切に扱ってください。

また、ゼミや発表会、学外実習などに遅刻、無断欠席することは皆がとても迷惑しますので、このようなことがないように注意してください。

さらに、教員のみならず、院生から、もしくは4年生同士で連絡を取り合う必要もあります。メールには必ずすみやかに返信してください。研究活動や研究室運営のみならず、事務的な書類の締め切り等の重要な連絡もありますのでこの点は注意してください。