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中山流水と「金比羅船々」

最初の公開2008-06-12

「こんぴらふねふね、おいてに帆かけてシュラシュシュシュ・・・」
 小学校の音楽の教科書にも載っている有名な民謡「金比羅船々」。いつ誰が作詞作曲したのかは、全くの謎とされてきた。
 実はこの「金比羅船々」のメロディーは、中国から伝来した清楽の曲である、という説がある。
 果たして真相は? まずはともあれ、この二つの楽曲を聞き比べてみよう。
正調金比羅船々(swf) < 琴平(ことひら)町のホームページ

金毘羅船々(こんぴらふねふね) 追風(おいて)に帆かけてシュラシュシュシュ (まわ)れば四国は讃州(さんしゅう) 那珂(なか)(ごおり)  象頭山(ぞうずさん)金毘羅大権現(だいごんげん) 一度まわれば
金毘羅石段 桜の真盛(まさか)りキララララ 振袖(ふりそで)島田がエッサとのぼりゃ (すそ)には降りくる花の雪 一度まわれば
金毘羅御山(みやま)の青葉のかげからキララララ 金の御幣(ごへい)の光がチョイとさしゃ 街道は雲霧(くもきり)晴れわたる 一度まわれば

どーれー、どれどれ、ファーソー、ファソファソ、ラソララ、ラー。
どーラソ、どーれー、みーれみ、どーれど、ラどラソ、ファソララ、ソラソbミ、レ(そbみみ、れどラソ)


「中山流水」のメロディーを[MIDIで聴く]。
ドーレー、ドレドレ、ミーソー、ミソミソ、ラーラソ、どーラソ、どーれー、みーみれ、どーれど、ラどラソ、ミーソー、ラーラソ、ラソラソ、ミレミレ、ドーラー、ソー。
↓清楽「中山流水」の工尺譜。『弄月余音』(明治18年=1885年刊)より。


↓三田村楓陰著『手風琴速成独習自在』(明治26年=1893年)より。
 アコーディオンの独習用教材。中山流水など清楽の曲も収録されている。

 旧来の工尺譜と西洋伝来の数字譜の両方で旋律を併記している。

「去工添凡」について  清楽「中山流水」と、日本の音楽の教科書などに載っている「金比羅船々」の旋律は、ともに「ドーレー、ドレドレ、ミーソー、ソ・・・」だが、現地で唱われている「正調」では「ドーレー、ドレドレ、ファーソー、ファファソ・・・」である。
 中国伝統音楽の用語では「去工添凡」と言って、ある旋律の「工」(西洋音楽のミ)の音を「凡」(西洋音楽のファ)に置き換えて曲調を換えるというアレンジの手法が、よく見られる。
 「金比羅船々」のバリエーションでも「去工添凡」が見られることは、興味深い。

以下、佐々木隆爾「近代日本における民衆意識の形成と明清楽・民謡の役割」
(シンポジウム:「国民国家論」・「国民の物語」を考える 1998年10月17日)人文学報 (通号 296),25〜44,1999/03(ISSN 03868729) (東京都立大学人文学部 編/東京都立大学人文学部) より摘録。
江蘇省の民謡「挑担号子」のメロディー(佐々木隆爾氏による上記報告の「資料9」の五線譜による。出典は『中国音楽詞典』人民音楽出版社,1985,p.392)を[MIDIで聴く]。


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