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disabled 障がい者

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〇「障がい者」の表記
cf.「障害者」→「障がい者」「障碍者」「障礙者」
 身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者
 英語では「disability」あるいは「disabled person」。一昔前の英語でよく使われた「handicapped」は、語源的に「帽子を手にしてお金を乞う人」という意味であるため、近年は避ける。

参考 国日放題「多様性の中の可能性- MAYUNO KUBO」久保槙祐野 https://www.isc.meiji.ac.jp/~kokunichi/gjsforme/personal/09.html
「2016年度の春から始めたOriHimeを使った共同実践についての語り。肢体不自由者向けのコミュニケーションロボットであるOriHimeを使い、関西の特別支援学校など、肢体不自由者の方と活動してきた。「Orihime」を「大学生」が使うことによって、何が生まれ、何が変わっていくのか。授業外の活動ならではの悩みや、学び、自己の成長を詰め込んだ。」

〇障がい者と芸術
 健常者とくらべて、障がい者が不利な度合いは、芸術の種類ごとに異なる。
★日本の例(ごく一部)
 蝉丸(せみまる)、宮城道雄(みやぎ・みちお)、高橋竹山(たかはし・ちくざん)、山下清(やました・きよし)、大石順教(おおいし・じゅんきょう)、金澤翔子(かなざわ・しょうこ)、……
  〇音楽・詩歌・絵画・書道……
  △陶芸・彫塑・彫刻・建築・映画……
 cf.能「蝉丸」:視覚障害者である弟と、精神障害者である姉。
YouTube「明治大学能楽研究部観世会 蝉丸道行」https://youtu.be/OevPxXYX9to 2015/07/29 に公開 第7回全国学生能楽コンクール 日時:平成27年7月26日(日)午前10時から 場所:名古屋能楽堂
 東アジアの漢字文化圏の中で、日本は9世紀から表音文字である「かな文字」が普及したこともあり、盲人も「知識人」になることができた。膨大な漢字文献を含む『群書類従』を編纂した塙保己一(はなわ・ほきいち 1746年-1821年)や、木活字で日記をつけた葛原勾当(くずはら・こうとう 1812年-1882年)などは、世界の盲人史上でも有名な知識人である。
cf.「盲官」(もうかん)の位階:(1)検校(けんぎょう)、(2)別当(べっとう)、(3)勾当(こうとう)、(4)座頭(ざとう)
 塙保己一は検校になった。箏曲(そうきょく)の八橋検校(やつはしけんぎょう)や、生田(いくた)検校、山田(やまだ)検校も有名。映画で有名な「座頭市」(ざとういち)は架空の人物。

★中国の例
・二胡の名曲「二泉映月」(にせんえいげつ Erquan Yingyue 現代の演奏家による演奏の例 https://youtu.be/etNWHC9WC9Y)と、盲目の音楽家・阿炳(あへい。華彦鈞1839-1950)
中国障害者芸術団の舞踊「千手観音
・障がい者は適材適所により障がい者ではなくなる、という考えかた
「伊尹(いいん)の土功」──『淮南子』(えなんじ)斉俗訓
【原漢文】故伊尹之興土功也、修脛者使之蹠钁、強脊者使之負土、眇者使之准、傴者使之塗、各有所宜、而人性齊矣。胡人便於馬、越人便於舟、異形殊類、易事而悖、失處而賤、得勢而貴。聖人總而用之、其數一也。
【書き下し】故に伊尹の土功を興すや、修脛(しゅうけい)なる者には之をして钁(くわ)を蹠(ふ)ましめ、強脊(きょうせき)なる者には之をして土を負はしめ、眇者(びょうしゃ)には之をして准せしめ、傴者(うしゃ)には之をして塗らしむ。各(おのおの)宜しき所有りて、人の性は斉(ひと)し。胡人は馬に便に、越人は舟に便なり。形を異にし類を殊にするもの、事を易(か)ふれば而ち悖(もと)り、処を失へば而ち賤しく、勢を得れば而ち貴し。聖人は総(す)べて之を用ふ、其の数は一なり。
【大意】いにしえのすぐれた政治家・伊尹の土木工事は、適材適所で見事だった。足が強い人には土を踏み固めさせた。背筋力が強い人には土を背負わせた。片方の目が不自由な人には測量の仕事をさせた。背中が曲がっている人には低いところを塗る仕事をさせた。適材適所の環境さえ整えてもらえれば、人間の個性の優劣はなくなる。北の遊牧民族は馬に乗るのが上手だし、南の異民族は舟を操るのがうまい。障がい者も外国人も、慣れない仕事をやらされれば失敗するし、慣れない所に置かれれば低い評価しかもらえないが、うまく勢いに乗れればS級になれる。聖人はあらゆる人材を登用するが、人材登用のコンセプトは一つなのである。

★韓国の例
・韓国障害芸術協会(한국장애예술인협회)
・韓国視覚障害者芸術協会は、アーティストのオム・ジョンスン氏が、東京・渋谷区の「ギャラリーTOM」(盲人が彫刻に触って鑑賞できる美術館)のワークショップに感銘を受け、設立。参考 http://www.ableart.org/org/handbook/8-1.html
・車椅子(휠체어 フィルチェオ=wheelchair)の書家、イ・ウニ(이은희)氏。
・KOREA.net「文化の壁をなくす「韓中日障害者芸術祭り」製作発表」2017.09.14
・産経ニュース「世界でも広がりを見せる障害者の文化芸術活動を通して考えるシンポジウム「美術でつながる 〜日・韓における障害者美術活動の地域実践から〜」を開催 2019年9月28日(土)

★朝鮮民主主義人民共和国の例
・YouTube https://youtu.be/iWSOgcrM-FI 北朝鮮 「2016朝鮮障害者芸術公演(장애자애술공연)」から『運命の手(운명의 손길)』 KCTV 2016/02/21 日本語字幕付き
・YouTube https://youtu.be/02Og3lc78iQ 北朝鮮 「2016障害者芸術公演(조선장애자예술공연)」より『白雪姫』のクライマックス KCTV 2016/02/21 日本語字幕付き

〇障がい者と「書」
★書道家 大石順教、金澤翔子、イ・ウニ(이은희)、李智華(1984生)、劉京生(1954年生)、柴啓青(1960年生)、和志剛(1968年生)、楊合正(1971年)、等。
cf.大石順教尼については加藤徹『漢文で知る中国』の[18頁-21頁]も参照
cf.中国語の記事 <我国5大残疾人书法家作品展示,网友:看到的字,满纸都写的坚强> 2017-04-20 13:25

#明治大学 での授業用】 拙著(加藤徹)『漢文で知る中国』(NHK出版、2021年) 18頁-21頁
「携帯弟子得入紅塵」(中国の古典小説『紅楼夢』のことば)
授業では、障がい者と芸術、大石順教尼についても語ります。 https://t.co/5nlZLPd9bX pic.twitter.com/B1hrp7NxcC

— 加藤徹(KATO Toru) (@katotoru1963) January 11, 2024
★福井県の「白川静漢字教育賞」と特別支援学校における障がい者教育
 福井県の公式サイト「白川文字学トップ」https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/syoubun/shirakawa/taitoru.html > 「白川静漢字教育賞 これまでの受賞作」https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/syoubun/shirakawa/kyouikusyoujusyouhaihusiryou.html
※加藤徹は第2回以降、選考委員の1人。
・第2回 平成26年度(2014) 特別奨励賞・佐賀県立盲学校・福田由美子氏
「漢字が、見えない、見えにくい、認識できにくい児童生徒への漢字指導」
(・第5回 平成29年度(2017) 優秀賞・愛知県小牧市立小牧南小学校・教諭・丹羽典子氏
「音の出る漢字カードで楽しく漢字学習」
※漢字に親しみのない外国人の漢字力を音の出る漢字カードで高める。)
・第7回 令和元年度(2019) 特別奨励賞・福島県立嶺北特別支援学校・教諭・渡辺陽子氏
「書芸術における古代文字を用いた表現活動 〜個からコラボレーションへの展開〜 (県内5高等学校写真部、越前和紙作家、県立若狭高校、青森県立青森第一高等養護学校との交流)」
※渡辺氏は過去に[第6回立命館白川静記念東洋文字文化賞・教育普及賞特別賞・福井県立嶺北養護学校(団体)]や[第46回(平成26年)・中日教育賞]等も受賞。
加藤徹のtweetより

特別支援学校の生徒さんたちによる古代文字の作品。古代文字の本質は「生」の証しを刻みつけること。字の端正さで上手い下手が分かれる「習字」とは、そこが違う。??第7回 白川静漢字教育賞 特別奨励賞 福島県立 嶺北特別支援学校 教諭・渡辺陽子先生https://t.co/T8R3dk0Ayt pic.twitter.com/Y6gnnU9Ka7

— 加藤徹(KATO Toru) (@katotoru1963) November 22, 2019


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