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コンサーティーナ入門 FAQ

最初の公開2011-10-23 最新の更新2017/8/14

【問】40ボタン鍵盤の機種があれば、20ボタンや30ボタンはいらないのでは?
【答】単にボタン鍵盤の数が多ければよい、というわけではありません。ボタン鍵盤の数に応じて、それぞれの味わいとか、弾くのに適した音楽ジャンルなどがあります。
 もともとコンサーティーナは、小さな筐体(きょうたい。箱のこと)の中に多くの部品を詰め込んでいるため、ちょっと無理をしているところがあります。

 例えばイングリッシュ・コンサーティーナの場合、48ボタンと56ボタンの機種では、当然、後者のほうが弾ける音域が増えますが、ボタン数が多いぶん楽器も一回り大きくなり、レスポンスがちょっと大味になるなど、デメリットも出てきてしまいます。そのため、48ボタンの機種を「必要にして充分」として好む人も多いのです。

 お茶の水の谷口楽器の店頭にて。アングロ・コンサーティーナの大きさの比較。

 真ん中の30ボタンは、両脇の40ボタンや20ボタンより小柄です。

 アングロ・コンサーティーナの場合、20ボタンは、鳴らせる半音は「F♯」(ファ♯)だけなので、弾ける調が限られてしまいます。が、ボタン数が少ないぶん、筐体の内部構造にも余裕が生まれますし、また「二枚重ねリード」にすることも可能になるなど、さまざまなメリットも生まれます。
 意外かもしれませんが、アングロ・コンサーティーナの中で筐体や蛇腹がいちばん小さいのは、30ボタンの機種(であることが多い)です。もし腕力が同じなら、蛇腹の中の空気が少ないほうが圧力をかけやすく、強弱のメリハリがきいた演奏をしやすい。結果として、アイリッシュ音楽のすばやいリールを弾くときなどは、30ボタンのアングロ・コンサーティーナが有利になります。
 私が弾いている40ボタンのアングロ・コンサーティーナは、ボタン数が多いぶん「つぶし」がきいて便利ですが、小さな筐体の中に多くの部品をつめこんでいるため余裕があまりなく、また、蛇腹の中の空気の量が30ボタンのコンサーティーナよりも多いぶん、音のレスポンスは30ボタンにはちょっと負ける感じです。
 というわけで、30ボタンや40ボタンのコンサーティーナが開発されたあとも、よりシンプルな20ボタンのコンサーティーナが残っているわけです。

 この世に全能の楽器はありません。設計思想で、何かのメリットを追求するためには、別のデメリットが出ることを覚悟しなければなりません。特に、コンサーティーナのようなコンパクトな器械式の楽器ではそうです。

 アングロ・コンサーティーナのなかで一番シンプルなのは、1列10ボタンのタイプですが、これはさすがにシンプルすぎるため、めったに見かけません。
 次にシンプルなのは、2列の20ボタンのタイプです。ボタン鍵盤の数が少ないため、和音を鳴らしたり、半音階を弾いたりするのは苦手で、弾ける曲は限られます。そのかわり、筐体のサイズと比べて部品点数が少ないため構造上余裕があり、また、ボタン鍵盤どうしのあいだの隙間もじゅうぶんな余裕があるため弾きやすい、というメリットもあります。
 ネットでは、20ボタンのコンサーティーナの味わいを生かした演奏の動画を、いろいろ見ることができます。
 最近、ツイッター上では「絵本作家 エホンオオカミ」さん(@ehon_wolf https://twitter.com/ehon_wolf)が、ときどき20ボタンのアングロ・コンサーティーナの演奏の動画をアップされています。(例えばこちらのツイート)
 その他、YouTubeなどでも20ボタンの演奏動画をいろいろ見ることができます。以下にその一部を載せておきます。

【20ボタンの独奏例】Lili Marleen on Anglo-German Concertina コンサーティーナでリリー・マルレーン
https://youtu.be/4yoMbkGlJrY

 限定的ながら、和音伴奏をつけた独奏の立ち弾きの例。このビデオは谷口楽器の店頭ですが、本当は、酒場でみんなで歌いながら弾きたい曲です。
 すみません、演奏者は私です(^^;; 楽器の機種は「【BASTARI】 R-8-2 (ディアトニック式)」です。二枚重ねリードなので「昔の小学校のオルガン」のような重厚な音が鳴ります。

【20ボタンの合奏例】コンサーティナ 〜梅雨の晴れ間に沈む夕日〜
https://youtu.be/JNETxBSgUpM

 コンサーティーナ(このビデオのタイトルでは「コンサーティナ」)の音色の特性を生かしたアンサンブルです。大阪でコンサーティーナを教えていらっしゃる長坂憲道先生が、ご自分が作った曲を20ボタンのアングロ・コンサーティーナで、ピアノと合奏している動画です。
 コンサーティーナやバイオリンなど音が長く伸びる「持続楽器」は、ピアノやギターなど音がポロロン…と自然に減衰する歯切れのよい「減衰楽器」と、合奏の相性が良いです。

【20ボタンの独奏例】Concertina One Year Later
https://youtu.be/nxitAw3Cvas

 機敏な演奏です。演奏者は外国の少年(?)です。アイリッシュ音楽は、普通、30個のボタン鍵盤をもつアングロ・コンサーティーナで弾きます。しかし、この動画では、20個のボタン鍵盤をもつアングロ・コンサーティーナで、日本では「BASTARI(バスターリ) B-1」として発売されている機種で、見事に弾いています。ただし、もしアイリッシュを本格的に弾きたい人には、やはり半音を網羅している30ボタン以上の機種をお勧めします。

【20ボタンの独奏例】金大偉 バンドネオン演奏 kintaii bandoneon live 「花 hana」(京都芸術劇場2006)
https://youtu.be/GecNVZwtMkg

 ゆったりとした幻想的な演奏です。このビデオのタイトルには「バンドネオン演奏」とありますが(2017/8/14閲覧)、楽器は20ボタンのアングロ・コンサーティーナのようです。

 上記の他にも、ネットではさまざまな動画を見ることができるので、いろいろ探してみてください。

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