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明治大学大学院教養デザイン研究科 映像資料プログラム
Visual Material Programme (Programme for Fostering Interdisciplinary Approaches through Using Visual Materials),
Graduate School of Humanities, Meiji University
創作京劇

 邯鄲 

New Peking Opera Play
KANTAN no YUME, or The HANDAN Dream
舞台映像の鑑賞と制作者との対話
Viewing of the Stage Video and Talking with the Producer

最新の更新2023年3月16日    最初の公開2023年2月25日

【主催】 明治大学大学院教養デザイン研究科 https://www.meiji.ac.jp/humanity/
【イベント名】 映像資料プログラム
【実施方法】 オンライン(ZOOMを使用)
【コーディネーター】 加藤徹(明治大学教授)
【内容】 新潮劇院(https://www.shincyo.com/)による創作京劇『邯鄲の夢』(日本語、中国語)の舞台映像作品の鑑賞と、制作者との対話

【記】
ZOOMによるオンライン開催
 (リアルタイム+期間限定のオンデマンド配信)
日時 2023年3月6日(月)夜7時30分より
 期間限定の見逃し配信あり。
 参加費無料。事前申し込み不要。


外部の一般のかたのご参加も歓迎いたします。匿名でのご参加もOK。マイクはオフにしてください。
盛況のうちに終了しました。ありがとうございました。
申し込みは不要ですが、何か質問などがあるかたは直接、コーディネーターの加藤徹(明治大学教員)までメールでご連絡ください。
アドレスはです。
参考YouTubeビデオ https://www.youtube.com/playlist?list=PL6QLFvIY3e-mw0KtT9vN0OEaN-0JMYRkS




 「映像資料教育プログラム」は、明治大学 大学院 教養デザイン研究科(和泉キャンパス)の研究テーマに関する映像資料・映像作品の制作者を招待し、映像資料を鑑賞して制作者と「対話」し、院生の研究テーマを広げることを目的とした学術イベントです。
 今年度は、東京都世田谷区を拠点として活動する在日京劇団「新潮劇院(しんちょうげきいん)」(https://www.shincyo.com/)主宰の張春祥(ちょう・しゅんしょう)氏と制作の張烏梅(チャンウーメイ)氏(https://twitter.com/zhang_umei)をお招きし、新潮劇院の創作京劇映画「邯鄲の夢」(かんたんのゆめ、1時間33分)を鑑賞します。鑑賞の前後に、制作者であり出演者でもあるお二人と対話を行います。

 「邯鄲の夢」は2002年の創作舞台作品で、今回はそのビデオを鑑賞します。
 作品の内容紹介については、新潮劇院のサイトの https://www.shincyo.com/kantannoyume/ もご覧ください。
 内容は――前半はリアルな現実社会。後半は夢と現実が交錯するファンタジーな創作京劇。そして結末は・・・という実験的な作品です。
 主人公は、京劇の役者です。
 京劇は、日本でいえば歌舞伎にあたる中国の伝統演劇で、英語では Peking Opera と言います。
 かつて民衆に人気があった京劇も、現代では映画やテレビやネットなどにおされ、上演が激減。
 主人公の京劇役者が所属する京劇団も、解散を余儀なくされます。
 京劇ができなくなった男は、日本にわたります。しかし生き甲斐でもある京劇を演じられなくなった絶望感から、精神を病みます。
 男は、医師や看護師の治療を受けながら、自分が得意とした京劇の演目『通天犀』の赤ひげの豪傑、青面虎の扮装をして、妄想の世界で京劇にひたります。
 そこへ、麻薬捜査の刑事がきます。男の挙動をあやしみ、いろいろ質問します。
 男はますます、現実と夢、正気と狂気、現在と過去の記憶が交錯する世界に落ち込んでゆきます。京劇『通天犀』の主人公である青面虎になりきった男は、役人の理不尽さに憤り、大活躍しますが・・・
「人は夢を喰らい、夢は人を喰らう」(主人公のセリフより)
 現代日本語のセリフと、京劇の中国語のセリフ。現代的な演技と、伝統劇の歌や大立ち回りのミックス。まるで、安部公房の小説や今敏監督のアニメ映画のような、ファンタジーとミステリーがいりまじった不思議なテイストの作品です。
 この不思議な世界を鑑賞し、制作者との対話を通じて学際的アプローチを楽しみましょう。

【舞台の流れ】以下はネタバレを含みます。他の人にはバラさないでください。
創作京劇「邯鄲の夢」は、劇中劇である伝統京劇『通天犀』の前後に、現代日本を舞台とする新作の現代劇のサイコホラーを額縁(がくぶち)的ににつけた構造となっている。
現代劇パートの主人公は、精神を病んだ京劇役者。彼は、妄想の世界で京劇『通天犀』の主人公・青面虎になりきるが・・・・・・
舞台空間の、客席から見て向かって右側(上手=かみて)の舞台の袖には、楽隊。
京劇では、登場人物は原則として舞台の下手(しもて。客席から見て、向かって左側)から登場し、上手にむかって退場する。
  1. 京劇の稽古場。練習に精を出す役者たち。劇団から突如「観客減少のため、京劇団としての活動を停止する」という非情な宣告(セリフは日本語)がなされる。
    主人公の役者(演・張春祥)は、絶望にかられる。京劇「覇王別姫」の虞姫の歌いながら舞ったり、思いを独白したり(中国語)、鏡を見ながら化粧したりする。
  2. (15分目くらい)男女の看護師(日本語)が登場。女性看護師は、白衣をきた京劇の女性役
    ここまでは、実は、精神を病んで治療中の役者の回想だったのだ。
    錯乱する役者(日本語+中国語)。看護師から「なんの化粧ですか?」ときかれた役者は「青面虎(チンミェンフー)」と答える。
    役者はひとりになると、京劇「秋江」の陳妙常の歌舞をしたり、化粧をしたり、妄想の世界のなかで京劇にひたり続ける。
  3. (26分目)精神を病んだ役者は、劇中劇の京劇『通天犀』の世界へ引きずり込まれる。
    『通天犀』の主人公は、役者がくまどりを描いていた豪傑「青面虎」である。
    『通天犀』の登場人物である女性武者(青面虎の妹)と、2人の兵士に拉致されそうになるが、かろうじて「現実世界」にとどまる。
  4. (27分目)役者は現実にもどり、青面虎の化粧を続ける。突然、警察の刑事(日本語)がやってくる。
    刑事は麻薬の捜査中で「あなたは、いつから日本に来ましたか?」「日本の警察をなめんなよ」などと言う。
  5. (33分目)妄想か現実か。青面虎の扮装を整える男の近くで、京劇『通天犀』の劇中劇が始まる。 女武者と兵士は「役人は殺した」「この老人を、兄のところに連れてゆこう」と京劇『通天犀』の一場面を演ずる。精神を病んだ役者はそれと無関係に、ご機嫌で、青面虎のメイクを続け、昔の自分の得意演目をなぞる。
  6. (38分目)劇中劇である京劇『通天犀』。女性武者(許佩珠/徐佩珠)が登場。
    彼女が手に赤い鞭を持っているのは、赤い馬に乗っていることを示す。
    女性武者が退場すると、彼女の兄である赤ひげの豪傑「青面虎」が登場する。
    精神を病んだ役者は、妄想の世界で、完全に青面虎になりきっている。
    青面虎と、その妹の女性武者の頭のかんむりは、長いキジのしっぽが2本ついている。
    青面虎は、根拠地の山城(やまじろ)のナンバーワンで、妹の女性武者はナンバーツーだ。
    精神を病んだ役者にとって、もはや京劇『通天犀』の芝居のほうが現実になった。
    役者こと青面虎は、妹が連れてきた老人・程老学の口から、十一郎の悲運を知り、憤慨する。
  7. (61分目)劇中劇の続き。青面虎と妹は、十一郎を助けにゆくことにする。妹の独白の歌舞。本格的な古典京劇の舞台が続く。
  8. (68分目)青面虎は庶民に変装して、役人にとらわれている十一郎を助けだすため、ひとりで山をおりてゆく。
    妹は心配してあとを追う。
  9. (75分目)町におりてきた青面虎は、酒場を見つける。
    青面虎は酒に目がない。酒場のおやじ(道化役。日本語)を相手に、酒を飲ませろ、とくだをまき、大酒をあおる。
  10. (88分目)処刑場。十一郎は、首を切られる間際の土壇場でも、なお自分は無実だと訴える。
    そこへ・・・以下、ネタバレ自粛。舞台のビデオを見てお楽しみください。
劇中劇として出てくる伝統京劇『通天犀』のあらすじ
 京劇は、日本でいえば歌舞伎にあたる中国の伝統劇です。英語でペキン・オペラと言うとおり、音楽劇です。
 今から2百年前の清の時代。北京では『通天犀』(つうてんさい)という、歌あり立ち回りありの人気演目がありました。
 昔々。役人が腐敗し、民が苦しんだ王朝末期の時代。中国西南部の辺境の山城(やまじろ)で、許という姓の豪傑の一族が、小さな独立国のように暮らしていました。
 山城の当主は、許起英という赤ひげの豪傑で、通称「青面虎」と呼ばれていました。
 現地の官軍は、警察と軍隊をあわせたような治安組織でした。彼らは、自主独立の生活を営む青面虎を、反逆者として逮捕しようと狙っていました。しかし青面虎は強い。さすがの官軍も手出しができません。
 あるとき、酒好きの青面虎は、山をおりて店で酒を飲み、泥酔しました。そのすきに官軍は彼を逮捕しました。
 青面虎は首都に護送され、公開処刑されることになりました。
 青面虎の妹・許佩珠は、美少女でしたが、武芸は男まさりです。映画「男はつらいよ」の兄妹と同様、京劇『通天犀』でも兄の青面虎はちょっとおっちょこちょいな人情家で、妹のほうがしっかりしています。妹は官軍を襲い、兄を奪還します。官軍の指揮官は逃げました。今度は兄妹が官軍を追います。
 たまたまそこに、十一郎という美青年が通りかかります。彼は身分は低いものの、正義の心をもつ武術の達人でした。十一郎はてっきり官軍のほうが正義だと思い、青面虎と妹の二人を撃退し、官軍の指揮官を助けてしまいます。
 しかし官軍は腐っていました。役人根性にこりかたまった彼らは、自分たちが青面虎の妹に負けたことを朝廷に知られたらまずい、と考えました。官軍は、恩人であるはずの十一郎に無実の罪を着せ、処刑して、口封じすることにしました。
 十一郎の雇い主である程老学も、口封じのため、役人に捕まりました。しかし幸い、妹に保護されます。
 程老学の口から役人の理不尽なしうちを知った青面虎は、十一郎に同情し、義憤にかられ、驚くべき行動に出ます。――以下、ネタバレ自粛。続きは、舞台の見てのお楽しみです。

【拡散希望】オンラインイベント 創作 #京劇 「邯鄲の夢」(かんたんのゆめ)
映像鑑賞+制作者・出演者との対話
2023年3月6日月曜夜7時30分より、ZOOMで。
どなたも、どこからでもオンラインでご参加いただけます。参加費無料、事前申し込み不要です。
詳細は https://t.co/TTNjVuJBMi pic.twitter.com/8dDPoFytOj

— 加藤徹(KATO Toru) (@katotoru1963) February 25, 2023


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