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九尾の狐カフェ 2019
Nine-Tailed Fox Café 2019

こちらは明治大学アカデミックフェス2019参加プログラムです。
最新の更新2019-10-30  最初の公開 2019-10-18

明治大学「アカデミックフェス 2019」 at 駿河台キャンパス
企画名 九尾の狐カフェ Nine-Tailed Fox Café 2019
日時:2019年11月23日(土)12:00〜18:00
入場無料、予約不要、出入り自由。
会場:アカデミーコモン2F Dルーム(地図)
コーディネーター:加藤 徹
 ようこそ! 「九尾の狐カフェ」は無料休憩所兼学術喫茶です。ア〇プル・ス〇ア(諸般の事情で一部伏せ字)のような感じで、教員(加藤徹。法学部教授。大学院教養デザイン研究科担当)や学生(主に教養デザイン研究科の院生)と会話を楽しんでいただければ、と思います。
 一応のネタは、東アジアの越境する幻獣・九尾の狐(中国語“九尾狐”、韓国語“구미호”、英語“nine-tailed fox”)です。日本と世界各地の九尾狐について、古典から現代のサブカル作品まで、約200点の九尾の狐の資料をペーパーとパワポで提示します。気になる作品があったら、それをもとに、スタッフ(教員と学生)とお喋りをお楽しみにください。
 お茶とお菓子も無料で用意しております(先着順)。
Enjoy chattering with us!
Please come to Meiji University Academic Fest.2019, and you would find our unique exhibition entitled "Nine-Tailed Fox Café 2019", presented by KATO Toru and the students.On November 23, 2019, from 12:00 to 6:00. At Room-D, 2nd floor, Academy Common(MAP), Meiji University, Ochanomizu, Tokyo. Admission free. No reservation required.
参考 YouTubeビデオリスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PL6QLFvIY3e-lOYOy46IgAbCXr6srAynez

@katotoru1963 のツイート

#拡散歓迎 学者の学園祭 「明治大学 アカデミックフェス2019」11月23日(土) 入場無料。どなたも大歓迎。加藤徹は学生といっしょに、学術喫茶??兼無料休憩所「九尾の狐カフェ」をやります。アカデミーコモン2Fです。遊びにいらしてくださいますよう。https://t.co/0CpSUimKBP pic.twitter.com/pYYNSNzDWq

— 加藤徹(KATO Toru) (@katotoru1963) October 29, 2019

概要
 きたる11月23日に御茶ノ水の明治大学で加藤徹が担当するイベント(入場無料、予約不要、出入自由)の説明文より。
 cf.公式ホームページ 
明治大学アカデミックフェス2019
2019年11月23日(土)明治大学「アカデミックフェス 2019」 at 駿河台キャンパス
企画名 九尾の狐カフェ Nine-Tailed Fox Café 2019(加藤 徹)12:00〜18:00 アカデミーコモン2F ROOM-D(A5会議室)
コーディネーター:加藤 徹
 以下、https://www.meiji.ac.jp/gakucho/muaf2019/program/sub_win/ac2f_3.htmlより引用。
 コンセプトは「学術喫茶」。お客様にお休みいただきながら、学問の面白さに触れていただく休憩所的スポットです。お気軽にお立ち寄りください。
 雰囲気は、学園祭の教室展示。テーマは、古今東西の「九尾の狐」。教員や学生が常駐し、お客様とパネル展示の図像や動画を見つつ、九尾の狐について気軽に雑談をします。
 「九尾の狐」はアジア共通の伝統的キャラクターです。
 日本語ではキュウビノキツネ。
 中国語では“九尾狐”(ジウウェイフー)。
 韓国語では“구미호” (クミホ)。
 英語では“nine-tailed fox”。
 日本では、那須の殺生石の説話が有名ですね。
 九尾の狐は、三千年のあいだ、アジアを駆け巡ってきました。昔の書物や芝居だけではありません。現代の日本や中国、韓国では、漫画やアニメ、テレビドラマなどで九尾の狐の新しいキャラクターが続々と誕生しています。いにしえの玉藻前(たまものまえ)は十二単(じゅうにひとえ)姿の貴婦人でしたが、現代の漫画『非人哉』(ひとにあらざるかな)ではTシャツに短パンのカジュアル女子です。まさに、古今東西、逍遙自在、雅俗混交、不羈奔放!
「大学って、どんなところ?」「大学の人と、気軽に雑談をしてみたい」というかたも、単に腰をおろして休みたいかたも、どなたも大歓迎です。

九尾の狐とは
〇九尾の狐の特徴
 古代中国で実在すると信じられた霊獣のイメージが、「世代累積型集団創作」のなかでふくらみ、日本の東アジア各地に広まったもの。
 別名「九尾狐(きゅうびこ)」「金毛九尾の狐」「白面金毛九尾の狐」等。
 ビュフォン伯ジョルジュ=ルイ・ルクレール(1707-1788)による妖怪の三分類によれば「過剰による妖怪」である(第一は過剰による妖怪。第二は欠如による妖怪。第三は諸部分の転倒もしくは誤配置による妖怪)。
 セレブ版「狐女房」(異類婚姻譚の一種)と結びつきやすい。

〇歴史
 九尾の狐、の起源は不明だが、戦国時代の中国である可能性が高い。
 中国最古の地理書『山海経』(せんがいきょう。前4世紀ごろから歳月をかけて成立)の「南山経」青丘之山の項に、
【原漢文】有獣焉。其状如狐而九尾、其音如嬰児、能食人。食者不蠱。
【漢文訓読】獣、焉に有り。其の状、狐の如くして九尾あり。其の音、嬰児の如し。能く人を食ふ。食へば蠱せられず。
【意味】獣がいる。その形状は狐に似て尾が九つあり、啼き声は新生児の泣き声に似ている。ヒトを食べることができる。(この狐を)食べると蠱毒(こどく)の呪いの害を受けなくなる。
とある。
 その後、中国では、
とキャラクターが二分化した。
 語り物や芝居、小説では、美しい悪の妖女、というイメージが多い。

 九尾狐の説話は、古くから日本へも伝わった。漢文古典に親しむ知識人は、『白虎通義』の瑞獣のイメージを理解していたが、庶民層は妲己説話のような悪の妖怪のイメージをふくらませた。
 室町時代には、鳥羽上皇(12世紀)に仕えた美女・玉藻前(たまものまえ)の正体が狐であり退治された、という説話が存在したが、その狐は必ずしも九尾ではなかった。能の「殺生石」は作者不明で、室町中期の能作者である佐阿弥(さあみ)こと日吉四郎次郎安清の作とも言われるが、この狐も九尾ではない。
 江戸時代から、九尾の狐は天竺で花陽夫人、殷で妲己(だっき)、日本で玉藻前となったが、最後は那須で退治されて殺生石となる、という物語が広まった。19世紀初頭の、高井蘭山の読本『絵本三国妖婦伝』や岡田玉山の『絵本玉藻譚』などが有名である。
 日本の玉藻前説話は、漫画やアニメ、ゲームなどのサブカルチャーを通じて中国にも輸出されている。九尾狐は、漫画『ドラゴンボール』の主人公「孫悟空」と同様、中国から日本への一方通行ではなく、逆輸出もされた一例である。


越境する幻獣たち Q&A
Q なんで九尾の狐を取り上げるのですか?
A 私(加藤徹)が学生たちと進めている研究の一部を、外部にわかりやすく披露する題材として、九尾の狐がいいかな、と思ったからです。
Q 妖怪を研究しているのですか?
A 妖怪というより「越境する幻獣たち」の学際的・総合的な研究です。
 世界各地の「伝説の生物」(legendary creature)のうち、人魚とか、九尾狐、龍その他の幻獣系キャラクターは、時代や国境、社会文化の階層差を越えて流伝し、変化を遂げて現代に至っています。
Q 幻獣って、ゲームによく出てくるアレですか? 龍は神獣とか霊獣じゃないんですか?
A まあ「幻獣」は学術用語ではなく、人によって意味用法が違うので、ここでは「幻獣系」ないし「幻獣的」と、広義の意味で使っています。
Q 人魚とか九尾の狐って、実在するんですか?
A 水族館や動物園にはいませんが、昔の書物や伝承だけでなく、現代の創作作品には、今も「幻獣系キャラクター」はよく出てきますよ。その意味では、幻獣系キャラは、私たちの心の中に実在し、今も増殖を続けています。
 神話の時代、未だ終わらざるなり。現代人は、自分たちが思ってるほど現代的でも、科学的でもありません。
Q 大学の先生が、そんなお化けみたいなものを研究するなんて、ちょっと変じゃないですか?
A 変な大学の先生もいることは認めますが(笑)、別に、研究テーマとしては変じゃないですよ。
 人間の潜在意識の投影でもある幻獣は、文学・歴史学・哲学・宗教学・記号学・芸術学・生物学・文化人類学・民俗学など多方面からの研究が可能です。
 私は法学部の教員ですが、大学院では、「人間性とその適正な環境の探求」を目的とする教養デザイン研究科に所属しています。学際性、国際性が豊かな大学院です。古今東西の幻獣系キャラクターの研究は、うちの大学院では突飛ではないですよ(笑)。
 うちらが進めている幻獣研究のキーワードを挙げるなら、
「文化摩擦 異類婚姻譚 東西文化比較 自然との共生 ジェンダー 」
 となるでしょうか。
Q うちら、って、誰ですか?
A 「九尾の狐カフェ」の会場の中でうろついている、私と学生たちです(笑)。
Q 幻獣って、しょせんは架空の存在でしょ。そんなのを研究して、何か、実用的な意味があるんですか?
A 実用的かどうかはわかりませんが、空想上の存在って、意外と、私たちのリアルな現実世界にも、問題を投げかけるんですよ。
 文化摩擦とか、人種偏見、性差別、などの言葉を、お聞きになったことはあるでしょう。
 ここではいくつか、あたりさわりの少ない事例だけをサンプルとしてご紹介します。
 2003年に「トヨタ自動車中国広告問題」というのがありました。ご存知ですか?
Q 2003年って、私はまだ子供で覚えてませんよ。あ、ケータイのネットで調べてみます。
A あとで調べてください。これは、日本の狛犬と兄弟関係にある中国の石獅子が、中国のナショナリズムと結びついて炎上した事件です。
 2016年の「ヴィクトリアズ・シークレット龍ファッション事件」は、知ってますか?
Q いえ、知りません。
A 知らなくてもいいですよ。ネットで“Victoria's Secret, cultural appropriation, Chinese dragon”(ヴィクトリアズ・シークレット、文化の盗用、中国の龍)と検索すれば、すぐ出てきます。
 西洋人にとって「ドラゴン」は単なる怪物ですが、中国人にとって「龍」は民族的矜持と結びつく神獣です。だから、外国人が軽々しく龍を意匠に使うと、中国人、特に若い人たちのナショナリズムを刺激して、炎上することがあるのです。
 今年(2019年)、米国で制作される実写映画『リトル・マーメイド』(The Little Mermaid)で、人魚姫のアリエル役に黒人歌手のハリー・ベイリー(Halle Bailey)氏が抜擢され、物議をかもしました。このニュースは、聞いたことがありますか?
Q あ、それはちょっと、ネットで見たような。
A そもそも、人魚は白い肌の女性、というイメージは、いつ、どこで、誰が、どのように作ったか、考えたことはありますか?
Q 白人女性じゃない人魚って、いるんですか?
A これこれ。人魚は欧米の専売特許じゃないですよ。
 アジアでも昔から人魚の伝説は多い。西洋でも、男の人魚はマーマン(merman)、女の人魚はマーメイド(mermaid)と言うように、昔は男の人魚も多かったのです。
 東洋や西洋の古典に登場する人魚の男女の性比とか、人種的特徴を調べたうえで、今の『リトル・マーメイド』人種論争を考え直して見ると、今の私たちが無意識のうちにかかえているさまざまな問題が、いろいろと見えてくるのです。
Q でも、古今東西の古典から現代のサブカルまで、そんなにたくさん全部一人で研究するなんて、無理でしょう。
A 一人で、じゃないですよ。みんなで「共同研究」をすれば、いいんです。
 明治大学には、いろいろな研究者や学生がいる。日本人だけじゃない。外国人も多い。文系も理系もいる。
 人魚ひとつとっても、中国の「鮫人」伝説や、日本の「八百比丘尼」説話、ドイツのローレライ伝説、アンデルセンの童話、ハリウッド映画、アニメ映画『崖の上のポニョ』など古今東西の膨大な作品群があり、研究対象は無数といってよいほどです。
 人魚のモデルと目されるジュゴンやシロイルカなど、リアルな動物の理系的研究を、人魚伝承など文系的研究と結びつけることもできます。
 人魚だけではありません。世界中に、似たような幻獣系キャラクターが分布していて、しかも時代や地域ごとに微妙に違っていて、それらの差異はそれぞれの人々の潜在意識を投影している・・・・・・という、「越境する幻獣」の事例は、多いのです。
 個々の幻獣系キャラだけではありません。例えば、国章や紋章に使われる幻獣の東西比較、といった、テーマ別の研究も可能です。
 現代のサブカルチャー作品については、学生のほうが、先生よりもよく知っていることが多い。
 「ACG」って、聞いたことがありますか?
Q いえ。英語は弱いもので。
A 英語ではなくて中国語ですよ。和製英語ならぬ、漢製英語(笑)。
 中国語圏では、日本の「アニメ(anime)、漫画(comics)、コンピューターゲーム(game)」などサブカル系の「2次元」的作品を総称して、ACGと言います。日本に来る中国人留学生は、ACGがきっかけで日本に興味をもった、という人が多い。
 九尾の狐についても、例えばアニメ『火影忍者』(日本の『NARUTO -ナルト』の中国名)とか、スマホ向けゲームアプリ『陰陽師』(日本の声優を起用した中国製日系ゲーム)とか、現代日本のサブカルチャー作品については、中国人留学生のほうが、中高年の日本人教員よりもずっと詳しい(苦笑)。
 教員が、学生に教わりながら、授業を行う。まさに共創的教育ですよ。
Q 九尾の狐も、国ごとに違いがあるんですか?
A もちろん。
 九尾の狐は、紀元前に成立した中国最古の地誌『山海経』に登場して以来、美術作品や文芸作品で好んで取り上げられてきました。
 21世紀の今日も、現代化した九尾の狐のキャラクターは、日中韓など東アジアのアニメやゲーム、映画などで再生産され続け、ネットを通じて越境をほしいままにしています。
 他の越境する幻獣と同様、九尾の狐もそれぞれの時代の社会思潮を反映し、変化してきました。例えば、食べ物。九尾の狐は、何を食べると思いますか?
Q 狐だから、きつねうどん、とか。
A 日本的ですねえ(笑)。
 那須町のゆるキャラ「きゅうーびー」も、公式サイト http://www.nasukogen.org/kyubi/ によると「好きなもの 九尾稲荷(九つの具材が入った稲荷ずし)」「那須和牛や地元で採れた野菜など九つの具材が入った「九尾稲荷」が大好物!」とあります(2019/10/20閲覧)。
 でも、昔の日本の書物に出てくる「玉藻前」は、九尾の狐が美女に変身した姿ですが、きつねうどんでも稲荷寿司でもなく、人の精気を吸っていたんですよ。
 ちなみに、韓国の九尾狐(クミホ)はヒトの肝臓を食べるなど、肉食系です。
 九尾の狐というキャラクターは、世代累積型集団創作の産物です。紙の本だけではありません。語り物、謡い物、芝居、絵、いろいろな媒体で、二千年以上の歳月をかけて変化してきました。
 21世紀の今では、例えば、日本のアニメやゲームに出てくる「玉藻前」が中国に輸出され、中国の若者も日系と中国系の九尾の狐キャラで遊ぶ、という現象が普通に見られます。
Q なるほど。でも、話があちこちに広がりすぎて、いまいちわかりません。
A 今はわからなくてもいいです。ま、そんなことより、まずはお茶をどうぞ。九尾の狐関係のビデオ映像も流してますので、それを見ながら、一服していってください。


工事中

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