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最初の公開2016-5-16 最新の更新2020-6-3

A memo for the special lecture entitled "The stuff for studies is in your daily lives" by KATO Toru: Joint Information Sessions of Entrance for the Graduate Schools of Meiji University on 21 May 2016, at 3rd floor of Academy Common in Surugadai Campus
明治大学大学院 合同進学相談会
2016年5月21日 (土)13時〜16時

特別講演
「学問のネタは日常のなかにある」


明治大学 駿河台キャンパス アカデミーコモン
3階アカデミーホール
全体の予定は13:00-16:00ですが、
特別講演は13:10-13:40(30分間)+質疑応答(5分間)の予定。
講師 加藤徹(明治大学 大学院 教養デザイン研究科)

入場無料、事前予約不要
お問合せ先 明治大学 大学院事務室 電話 03-3296-4368
学問のネタは日常のなかにある,講演,チラシ,加藤徹

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以下は、講演の中で使う語句についてのメモです(レジュメではありません)。
[下学上達] [学問寛仁] [学問、専門]  [人文] [六経注我]
[ 形式知と暗黙知]  [人生に無駄な物事や出会いは一つもない] [QRコード]
 
下学上達
卑近な日常のことがらから出発して、高遠な真理に到達する。
→現代日本語では、初歩から初めて「上達する」、という意味でも使うが……
出典は『論語』憲問篇。
【原文】子曰:「莫我知也夫!」子貢曰:「何為其莫知子也?」子曰:「不怨天,不尤人。下學而上達。知我者,其天乎!」
【訓読】子曰く「我を知る莫きなるかな」と。子貢曰く「何為ぞ其れ子を知る莫きや」と。子曰く「天を怨みず、人を尤めず、下学して上達す。我を知る者は、其れ天なるか」と。
 シ、ノタマワく「ワれをシるナきなるかな」と。シコウ、イワく「ナンスレぞソれシをシるナきや」と。シ、ノタマワく「テンをウラみず、ヒトをトガめず、カガクしてジョウタツす。ワレをシるモノは、ソれテンなるか」と。
★「天・人」と「下・上」「学・達」の対比に注意。
  cf.芭蕉の「高悟帰俗」、蕪村・漱石の「用俗離俗」
三つの座標軸 地域軸、時代軸、社会軸。
三つの座標軸,3つの座標軸
例えば、x軸は地域軸(南北・都鄙・内陸か沿海部か…)。y軸は時代軸(世代・年代…)。z軸は社会軸(身分・階層・雅俗…)。
 

学問寛仁
「学問」の語源。出典は『易経』乾・文言伝。『易経』の最初のほうに出てくる言葉。
【原文】君子學以聚之、問以辯之、ェ以居之、仁以行之。
【訓読】君子は学以て之を聚め、問以て之を辯ち、ェ以て之に居り、仁以て之を行ふ。
 クンシはガク、モッてコレをアツめ、モン、モッてコレをワカち、カン、モッてコレにオり、ジン、モッてコレをオコナう。
★「問以辯之」を「問以之」に作る本もある。「辯」(原義は、筋道だった言葉で説明する)も「辨」(原義は、分ける、わきまえる)も、日本の常用漢字では「弁」。『易経』のこの部分では、「辯」を「辨」とほぼ同義で使っている。
★君子(および君子を目指す者)は、
(1)学習→聚斂(収斂) まなぶ、おそわる→知識をあつめる
(2)疑問→思辯(思辨、思弁)、辨別(弁別) 「なぜ?」と考える→分ける、わかる、わきまえる、考える
(3)寛然→平居 ゆったり→日常
(4)仁愛→実行 思いやり→実行、実践
 時系列的に見ると、(1)はインプット、(2)は咀嚼、(3)は消化、(4)はアウトプット。
 世間的に見ると、(1)と(2)のプロセスは内省的で峻厳な「潜龍」で外の人からは見えにくいが、(3)と(4)は外向性に富むおおらかな「見龍」で外の人からも見える。
cf.『周易』原文(下記)の前後の文脈を見ないと「摘句の弊」に陥る懸念がある。
 ……大哉乾乎! 剛健中正,純粹精也。六爻発揮,旁通情也。「時乗六龍」、以「御天」也,「雲行雨施」、天下平也。君子以成徳為行,日可見之行也。「潜」之為言也,隠而未見,行而未成,是以君子「弗用」也。君子学以聚之,問以辯之,ェ以居之,仁以行之。《易》曰「見龍在田、利見大人」,君徳也。……
 

学問、専門、聞・悶・閔(憫)・闇……
 専門の「門」のイメージ。大学院の「院」のイメージ。
 大学院の「院」は、「阝」(こざとへん。阜部)に「完」と書く。まわりを垣(かき。エン)で囲まれた自己完結的な静かな建物、というイメージ。同じ建物でも、重々しい「殿」や、広々とした「堂」、高く立派な「館」「楼」「閣」などとは、違うイメージ。
 cf.「書院」「病院」「奥の院」etc.
「門」に「耳」で「聞く」。「門」に「口」で「問う」。「門」に「心」で「悶える」。「門」に「文」で「閔れむ(憫れむ)」。……
東洋的な「門」。東京都中野区・哲学堂公園の哲理門。
門,哲理門,妖怪門,哲学堂公園
 

人文
「人文科学」は、英語で humanities
「私は人間だ。およそ人間に関することで、自分と無関係のものは何もない」
I am human, and nothing of that which is human is alien to me.
【ラテン語原文】“Homo sum, humani nil a me alienum puto"
【出典】Publius Terentius Afer, Heauton Timorumenos,77
★古代ローマの劇作家プビリウス・テレンティウス・アフェル(前195/前185-前159)の作品『自虐者』77より
メネデーモス「クレメースさん、あんたもずいぶん閑人だね。自分と無関係の他人事で気をもむとは」
クレメース「わしも人なんでね。人のすることは何でも、ひとごとたぁ思えねえのさ
 ホモー・スム。フーマーニー・ニール・アー・メー・アリエーヌム・プトー。
 Homo(人間) sum(私は…である), humani(人間的な) nil(無い) a(から) me(私) alienum(無縁の) puto(私は…と考える)
 

六経 我を注し、我 六経を注す
リクケイ、ワレをチュウし、ワレ、リクケイをチュウす。
【出典】宋・陸九淵『語録』:或問先生「何不著書」。対曰「六経注我、我注六経」。
★六経は、儒教の基本的な6つの経典『易』『書』『詩』『礼』『春秋』『楽』を指す。最後の『楽経』(がくけい/がくきょう)を除いた5つを「五経」(ごきょう)と呼ぶ。
cf.汝自身を知れ ΓΝΩΘΙ ΣΑΥΤΟΝ
 高悟帰俗 「高くこころをさとりて俗に帰るべし」 by 松尾芭蕉
 神は細部に宿る God is in the detail

cf.和泉キャンパスの芸術作品。「START LINE / GOAL LINE」(
説明はこちら)
 

形式知と暗黙知
iceberg,氷山,形式知,暗黙知
大学院の「論文」の本質
形式知(explict knowledge)と暗黙知(tacit knowledge)
 形式知は、言葉や数字・記号などで表せる知識。学生は先生から習う。氷山の一角。
 暗黙知は、言葉や数字・記号などで表せない知識。弟子は師匠から盗む。氷山の水面下の部分。
論文は形式知である。
形式知を、別のスタイルの形式知に「翻訳」する。
暗黙知を、形式知に「翻訳」する。
自分の地域や時代や階層
氷山
他の国や時代や階層
氷山
 
人生に無駄な物事や出会いは一つもない
使えるものは何でも使え。
【例】昭和の特撮テレビドラマ「ウルトラマン」と、
  中国の伝統演劇・京劇「白蛇伝」の
  暗黙知的コードの比較分析
  →異類婚姻譚のコード、戦闘女子のコード、etc.
 cf.[
白蛇伝 授業用メモ]
 
【附録】この頁のURLのQRコード。

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