朝日カルチャーセンター　千葉　　平成二十四年四月二十七日(金)　加藤徹担当

　　――春の漢詩文――

　

春夜宴桃李園序　　春夜　桃李園に宴するの序　　(唐)李白

夫天地者、万物之逆旅、

　光陰者、百代之過客。

而浮生若夢、

　為歓幾何？

古人秉燭夜遊、

　　良有以也。

況陽春召我以煙景、

　大塊假我以文章。

会桃李之芳園、

序天倫之楽事。

　群季俊秀、皆為恵連。

　吾人詠歌、独慚康楽。

幽賞未已、

高談転清。

　開瓊筵以坐華、

　飛羽觴而酔月。

不有佳作、

何伸雅懐？

　如詩不成、

　罰依金谷酒数。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　夫（そ）れ天地は万物の逆旅にして、

光陰は百代の過客なり。

而（しか）して浮生は夢の若し、

歓を為（な）すこと幾何（いくばく）ぞ？

古人　燭を秉（と）りて夜に遊ぶは、

良（まこと）に以（ゆゑ）有るなり。

況んや陽春　我を召くに煙景を以てし、

大塊　我に假すに文章を以てするをや。

桃李の芳園に会し、

天倫の楽事を序す。

群季の俊秀は、皆　恵連　為（た）り。

吾人の詠歌は、独り康楽に慚（は）づ。

幽賞　未だ已（や）まず、

高談　転（うた）た清し。

瓊筵を開きて以て華に坐し、

羽觴を飛ばして月に酔ふ。

佳作　有らずんば、

何ぞ　雅懐を伸べんや？

如（も）し詩　成らずんば、

罰は金谷の酒数に依（よ）らん。

【参考】　松尾芭蕉「奥の細道」より

　月日は百代の過客（くわかく）にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯をうかべ馬の口とらへて老（おい）を迎ふる者は、日々旅（たび）にして旅を栖（すみか）とす。古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲（へんうん）の風（かぜ）にさそはれて漂泊（へうはく）の思（おもひ）やまず、(以下略)

　

　

　　春夜洛城聞笛　　　　春夜　洛城に笛を聞く　　李白

誰家玉笛暗飛声　　　誰が家の玉笛ぞ　暗に声を飛ばす

散入春風満洛城　　　散じて春風に入りて　洛城に満つ

此夜曲中聞折柳　　　此の夜　曲中　折柳を聞く

何人不起故園情　　　何人か故園の情を起こさざる

　　　shéi ji? yù dí àn f?i sh?ng　　sàn rù ch?n f?ng m?n luò chéng

　　　c? yè q? zh?ng wén zhé li?　 hé rén bù q? gù yuán qíng

　

　山中與幽人對酌　　山中にて幽人と対酌す　　李白

両人對酌山花開　　　両人対酌すれば　山花開く

一杯一杯復一杯　　　一杯　一杯　復た一杯

我酔欲眠卿且去　　　我酔いて眠らんと欲す　卿且（しばら）く去れ

明朝有意抱琴来　　　明朝　意有らば　琴を抱きて来たれ

　　　　　　　　　　　li?ng rén duì zhuó sh?n hu? k?i / y? b?i y? b?i fù y? b?i

　　　　　　　　　　　w? zuì yù mián q?ng qi? qù / míng zh?o y?u yì bào qín lái

　

　尋胡隠君　　胡隠君を尋ぬ　　（明）高啓

渡水復渡水　　　水を渡り復た水を渡り

看花還看花　　　花を看還た花を看る

春風江上路　　　春風江上の路

不覚到君家　　　覚えず君が家に到る

　　　dù shu? fù dù shu? / k?n hu? huán k?n hu? / ch?n f?ng ji?ng shàng lù / bù jué dào j?n ji?

　

　　登科後　　　　　　　　(唐)孟郊

昔日齷齪不足誇　　昔日の齷齪　誇るに足らず

今朝放蕩思無涯　　今朝　放蕩　思い涯（はて）無し

春風得意馬蹄疾　　春風　意を得て　馬蹄疾し

一日看尽長安花　　一日に看尽くす　長安の花

　　　　　　　　　　　x? rì wò chuò bù zú ku? / j?n zh?o fàng dàng sì wú yá /

　　　　　　　　　　　ch?n f?ng dé yì m? tí jí / y? rì k?n jìn cháng ?n hu?

　

　　清明　　　　　　　(唐)杜牧

清明時節雨粉粉　　清明の時節　雨粉粉たり

路上行人欲断魂　　路上の行人　魂を断たんと欲す

借問酒家何處有　　借問（しゃもん）す　酒家　何れの処にか有る

牧童遥指杏花村　　牧童　遥かに指す　杏花村

　　　　　　　q?ng míng shí jié y? f?n f?n / lù shàng xíng rén yù duàn hún

　　　　　　　jiè wèn ji? ji? hé chù y?u / mù tóng yáo zh? xìng hu? c?n

　

　

　　江南逢李亀年　　　江南にて李亀年に逢う　　(唐)杜甫

岐王宅裏尋常見　　岐王の宅裏尋常に見

崔九堂前幾度聞　　崔九の堂前幾度か聞く

正是江南好風景　　正に是れ江南の好風景

落花時節又逢君　　落花の時節又君に逢う

　 　　　　　qí wáng zhái l? xún cháng jiàn / cu? ji? táng qián j? dù wén

　 　　　　　zhèng shì ji?ng nán h?o f?ng j?ng / luò hu? shí jié yòu féng j?n