「心の科学の基礎論」研究会

2010年の活動履歴


第61回研究会

日時:2010/7/17(土) 1:30〜5:45

場所:明治大学 駿河台キャンパス 研究棟4階第2会議室
 http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
 の「キャンパス案内」をご参照ください。

(話題提供1) 田中 彰吾(東海大学,心理学)

【タイトル】身体知における心と身体
【要旨】身体知を題材に、心と身体の関係について考えます。
 身体知とは、いわゆる「身体が知っている」タイプの知識を指します。キーボードの打ち方、自転車の乗り方、などに見られるように、非−意識的、非−言語的、非−表象的でありながら、身体が確かに知っているような知識です。
 デカルトの古典的な心身二元論では、知識が帰属するのは心(意識)であり、身体ではありません。身体知の問題を「手続記憶」や「運動スキル」として取り上げてきた心理学や認知科学の研究も、そうした心身二元論の伝統を色濃く受け継いでいるように見えます。
 この発表では、哲学者メルロ=ポンティの身体図式に関する議論を参照しながら、身体知の概念を整理します。また、ボールジャグリングの学習を事例として、身体知が形成される過程を検討します。以上の作業を通じて、心と身体の関係が、古典的な二元論とはどのように異なって見えてくるのか、考察する予定です。

(話題提供2) Gereon Kopf (Luther College, 宗教学, Editer of "Merleau-Ponty and Buddhism")

【タイトル】「身体、心、道徳 ー 修行と心身論」"Body, Mind, and Morality: Self-Cultivation and Body-Mind Theory"(講演は日本語の予定です)
【要旨】よく知られているように、多くの仏教哲学者と仏教経典では、身体と精神の二元論を 否定している。こうした不二元論は、デカルトの心身二元論を克服するだけでなく、 モーリス・メルロ=ポンティが考えたような身体図式を意味し、さらに、形而上学、 心理学、倫理を含んだ新たな心身論を提供する。特に、湯浅秦雄は仏教と道教の瞑想 論における修行という概念に基づく心身哲学のパラダイムを提唱した。この論文では、 メルロ=ポンティの身体図式と湯浅の修行説を使い、いくつかの仏教哲学者の論文の 中から新たな身体精神論を発展させる。
It is well known that a lot of Buddhist thinkers and texts propose a mind-body non-dualism. Such a non-dualism not only overcomes Descartes' mind-body dualism and implies a body-scheme not unlike Maurice Merleau-Ponty's, but further introduces a paradigm that allows philosophers to re-conceptualize the mind-body relationship as well as the intersection of metaphysics, psychology, and ethics. Especially Yuasa Yasuo has argued for a new paradigm for mind-body philosophy based on Buddhist and Daoist theories of self-cultivation. This paper will utilize the Merleau-Ponty's body-scheme and the philosophical insights of Yuasa to develop such a mind-body philosophy from the writings of selected Buddhist philosophers.


第60回研究会

第57回に引き続き、第60回研究会も人文死生学研究会(第8回)との合同研究会になります。
また明治大学意識情報学研究所とも共催です。

日時:2010/3/29(月) 1:30〜5:45
場所:明治大学 駿河台キャンパス 研究棟3階 第10会議室

(趣旨) かって死はタブーでしたが、近年は死生学の研究も盛んになっており、その多くは臨床死生学です。しかし、自分自身の死についての洞察が臨床死生学の基礎には必要と思われます。人文死生学研究会は、そうした一人称の死に焦点を当て、哲学、倫理学、宗教学、心理学、人類学、精神医学から宇宙論にまで及ぶ、学際的な思索と研究の場として発足しました。 今回で八回目になりますが、これまでに「刹那滅」「輪廻転生」「死の非在論証」「人間原理」などがテーマとして取り上げられました。前回は、哲学者・三浦俊彦氏の「戦争論理学」の合評会 を著者をまじえて行い、はじめて歴史問題に論及しましたが今年は、それに続き、「歴史の哲学」という観点から、新たな問題提起が行われる予定です。また、「臨死体験と死生観の変容」についての話題提供も予定されています。         

 
(内容)1 「人文死生学研究会」の従来の議論の経緯
       重久俊夫 (人文死生学研究会世話人・西洋史、哲学)
         1時30分から
 
     2 原爆投下は正しかったか
       〜戦争・論理学から歴史・認識論へ〜
       水本正晴 (哲学・北見工業大学) 2時15分ごろから
 
       本発表は、私が今年度行ってきた認識論の授業の試み
       を紹介しながら、原爆投下の是非について私なりの見解
       を論じる。その際、授業でも行ったように、アメリカ人に
       よる原爆否定派の意見として、ジョン・ロールズ、日本人
       による原爆肯定派の意見として三浦俊彦の議論を取り
       上げ、その食い違いの分析から歴史についての認識
       論、一般に歴史の哲学のあり方を問う。
       時間に余裕があれば、最近の議論として野家啓一の
       「物語としての歴史」の哲学を批判した中山康雄の議論
       を考察したい。
    
     3 旅としての臨死体験と死生観の変容
       〜日本人の事例を中心に〜
       岩崎美香 (明治大学大学院修士課程) 4時ごろから
 

 人文死生学研究会のテーマに関連する討論については、以下のHPで読むことができます。
 http://homepage1.nifty.com/t-watanabe/academic_meeting_4.htm


管理者:明治大学情報コミュニケーション学部 石川幹人